2022年  にっぽん復興へのシナリオ

日本が復興を遂げていく道筋を描いた近未来小説と、今日の様々な政治や社会問題についての私なりの考えや提案を順次掲載します。

【雑感-3】開かれた政府 - デンマーク編

2012-02-08 13:27:16 | 日記
 デンマーク滞在3日目の朝です。朝といっても5時半の早朝で、外は真っ暗で気温は-10度くらいでしょうか。
 年のせいか時差ボケがなかなか治らず、夜中に何度も目が覚めるばかりか5時前には目がさえてしまい、寝ていられなくなります。 それでいて夕方には猛烈に眠くなる・・・困ったことです。

 昨日の午後はMisistry of science(デンマーク科学省)を訪問し、夕方4時過ぎまで3時間余り「開かれた政府」についてたっぷりと意見交換をしてきました。
 まず感じたのは、デンマーク高級官僚たちが非常に若いことです。トップの局長もアラフォー世代と思える女性(さすがに年は聞けませんでしたが・・・)。ほかに同席した3人のメンバーは20代から30代前半といったところです。
 また、日本ではトップが会話の中心になり、同席する官僚たちは随行者のようにフォローに徹するのが通常ですが、こちらでは皆さん活発に意見を述べ合い、とても自由な雰囲気でディスカッションが盛り上がります。テーブルに用意されたお菓子や飲み物をつまみながら、非常にフランクでオープンな環境で過ごすことができました。

 さて、本題の「開かれた政府」ですが、これは前の雑感でも書いたように米国のオープンガバメントが有名ですが、デンマークのオープンガバメントはより徹底しているようです。
 「国民は政府が保有するあらゆる情報を知る権利がある」という原則が以前から浸透しており、政府情報の一覧サイト(http://data.digitaliser.dk/)で検索すると、国防に関係する情報まで見つかりました。もちろん、安全保障に関係する情報や、個人が特定されてプライバシーに抵触するようなセンシティブな情報は公開されませんが、この一覧サイトには746件もの政府情報が公開されているとのことでした。
 さらに興味深いのは、各省や庁が積極的に情報を公開している点でした。日本では、情報公開に向けた法や制度などの見直し論議が盛んに行われていますが、デンマークでは公開すべき情報や公開方法などはすべて主管するセクターに任されており、公開方法(たとえばデータ・フォーマットや書式など)も自由に選択することが許されています。 簡単に、スピーディに、お金をかけずに公開することが基本原則のようです。
 そのため、「情報公開法などの改正はあったのか?」という質問にも、「情報公開法は昔からあるが、特に見直してはいない」との回答でした。

 デンマークが、トップダウンの大号令がないにもかかわらず各セクターがこぞって情報を公開している背景には、次の3点があるようです。
(1)デジタル化が進んでおり、あらゆる情報はデジタル化されていたこと
(2)市民や企業からの情報請求が多く、それにいちいち答えるよりは一斉に出したほうが効率的であると考えたこと
(3)情報公開を主管するデンマーク科学省が様々な取り組みを行ったこと

 このうち、(3)の取り組みについてはかなり面白い話がありました。

 まず、2010年2月に「ODISコンテスト」を行ったそうです(ODISとは、Open Data Innovation Strategyの略です)。このコンテストでは、法律成立時に検討された様々な意見を集約する「Political Data API (PDAPI)」や、省エネ目標に対する個別家庭のエネルギー使用分布を解析する「Energy calculation」、あらゆる統計情報を地図上にリアルタイムに表示する「Mapicture (MapとPictureの合成語)」など、興味深いアプリケーションが表彰され、現在も活用されているとのことです。

 また、2010年11月には「DATA CAMP」という行政と民間が参加するワークショップが開かれています。定員50名のところ、官民それぞれが40名ほど(計80名程度)参加して行われたようです。
 ここでは、政府と民間が情報をどのように再利用するかなどについて、パソコンを前に侃侃諤諤の議論を行い、その結果多くの有効な仕組みが構築されたとのことです。DATA CAMPの様子は、You Tubeで見ることができます(http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=38NRb5TpTVY
 このような行政と民間のオープンな交流自体、日本の行政に慣れた目から見れば大きな驚きでした。

 政府情報の公開に伴い、情報を受け取る側もあらゆる創造性を発揮することができ、それによって作られた情報再利用のためのツールは、デンマークのIT産業を支える大きな武器にもなっています。

 さて、こうした取り組みはデンマークだけではありません。英国でも懸賞金をかけて政府情報の再利用に対する民間の知恵を集めましたし、同様の取り組みをしている国は数多く存在しています。
 日本では、「情報公開」というと、やれ「法的根拠は?」とか、「公開可能な情報と不可能な情報の定義を明確にせよ」、さらには「情報公開のための共通のガイドラインを設けるべき」などといった議論が生まれ、一向に進まないのですが、世界のスピードは我々が感じている以上に早いということを我々はもっと肝に銘じるべきだと思います。

 来週はスウェーデンでも同様のテーマで情報交換をする予定にしております。


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