■ 一人綴り

イロイロやってますが、停滞中。(モノが出来たらアップする感じですから...。)更新はしますが数が減るかも。

■ 向日葵

2010年08月10日 | へたっぴな小説もどき


 昨日は死んでたので、1日空きましたが(って、デイリーやるつもりだったン

かい!!)今回もオリジナルのフィクションです。

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 【 向日葵 】
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 強い日差しが作るハイコントラストの世界。夏。目に見える世界の彩度が上がり、

多くのモノが美しく見える季節。

 短い命を次の世代に繋ぐ為に何かを語りそしてその一生を終える蝉が伝える蝉時雨。

空を仰ぎ、懸命に生きている向日葵。そして、この星の蒼さと美しさを教えてくれる

青い海。

 夏。そんな美しい季節に、その世界の色を知らないボクがいた。

 見上げた空はコダックブルーに染まり、ラピスラズリを砕いた顔料で染めたような

空間が広がっていていた。

 ただ、その色彩も今のボクにはモノトーンで諧調の異なるグレーにしか見えなかっ

た。

 夏の空。気まぐれな秋の天気以上に激しくそして急に大きく変わる。まるで、二進

数の0と1で構成されているかのように。

 その夏の空のようにこの夏のボクを取り巻く環境も大きく変わってしまっていた。

 向日葵の花。ボクが大好きな花。

 空を見上げ上を目指すその姿が何よりも好きだった。そして、バラや百合のような

気品はないけど、そこに居るだけで優しい気持ちにしてくれる可愛らしさが好きだっ

た。

 向日葵の花。その花のようなキミに出会った事がボクの人生の中の最高の瞬間だっ

た気がする。

 積み重ね、育み、そして、同じ時間を過ごすようになった現実。ボクにとっての魔

法の瞬間や奇跡と感じる事はずっと続いているこの時間のことなのかも知れない。

 優しい春の風、窓を開けると入ってくる夏の夜風。そして、少し冷たさを感じる秋

の風。そして傍に居る事で感じなかった冷たい冬の風。

 幾つモノ季節をずっと重ねてきた。ずっとその時間が続くと信じて。

 二年前の夏。キミは倒れた...。病室に向かうと、ただ、深い眠りに付いた君の姿が

あった。一人部屋で僕を待つ君に突如ボクの届かない場所へとキミをいざなう現実から

、キミを守る事も出来ず失ってしまった。

 まるで、晴れた夏の空に夕立が訪れるように、ボクを照らしていた太陽は姿を潜め

厚い雷雲が立ちこめた。

 大切なものは失うまで解らないと言うが、時間が経てば経つほどに、ボク一人で生

きてたんじゃないんだなと言う現実に気づかされる。

 二人で生きていた時間にフツーにできていた事。その幾つかはキミが居たから大丈夫だ

ったんだって現実。そんな事を今知るなんて、ボクはダメな人間だ...

 秋が来て俯いた向日葵のようなキミを見たあの日。ボクの目から彩度と明度が失われて

いった。

 想い出の写真を見てもキミの姿が良く見えない。どうもボクの現実から消えた大切なキ

ミの存在はボクには見えなくなってしまいそうだった。

 ボクの中に見えているキミと言う向日葵の花は僕の心の中だけに咲いている。

 想い出と言う向日葵畑の中で、キミと言う可憐な花がそこに佇んで微笑んでいる。

 一日、一日と時が過ぎるほどに重くのしかかる現実。まるでキミを描いたステンドグラ

スが砕け、ガラスの雨になって降っているようだ...。

 
 ボク : 【 綺麗な想い出は、なくなってしまうとこんなに痛いんだね...。 】


大切なキミとの想い出が苦しかった。


 ボク : 【 なんて弱いんだろう...。 】
 ボク : 【 無力さで失った自分にこんなに甘いなんて...。 】


負担になっていたんだろうな...。失った直後に感じたこと。自分の存在が本当に必要だ

ったのか解らなくなってしまう。


 ボク : 【 一番大好きで微笑んでいる花を枯らしたのはボクなのか? 】


そう考えると言葉がなかった。僕が得た幸せは、彼女にとっての幸せだったんだろうか?

彼女の不幸に気付きもせずにボクはその可憐に咲く向日葵の花を枯らしてしまったんじゃ

ないのか...。自問自答するボクに答えは見つからなかった。

 彼女を失って7日。ボクに差さなくなった太陽の存在。その現実を理解した。季節は秋

になって、雨が多くなっていた。地面を叩く雨音。僕の心はその空のように晴れない日が

続く。


 ボク : 【 時間って重いよな...。 】


そう思った。想い出が重なるあの時までは、大切だった今日や明日。そして二人で思い描

いた未来。ただ、ボクの時計はあの日で止まってしまった。


 ボク : 【 あの日に戻れたなら 】


そんなムリな事を何度も言う弱い自分がいつの間にかボクの心の中に同居していた。

 二人で作っていた、多くの今にどれだけの意味があったのか、その時は全く気付かなか

ったけど、今はその時間の意味が凄く解る気がする...。


 春...。ボクには、佩かなく散っていくサクラの花びらが消えていった君に見える。

 夏...。ボクに刺し込む光が全てなくなった季節

 秋...。散り行く広葉樹が命の終わりを感じさせる

 冬...。まるでボクが今見て、生きている世界のようだ


4つの季節が好きだったのは、君が居たからだと始めて知った。今のボクにはどの季節も

冷たく感じる冬のようにしか思えない。

 4つの季節が過ぎた。キミを失ってから1年目の夏。キミの眠る場所に向かった。


 ボク : 【 やっと、外に出ても平気な位になれたよ。 】

 ボク : 【 ボクのせいだったのかな...。 】

 ボク : 【 ゴ..メ..ン...。 】


答えが返ってこない君の前で震えながら言葉を搾り出した...。生きているうちに言えな

かった言葉が二つある。一つは、そうなるまで気付けずに言わなかった謝罪の言葉。そし

てもう一つは、それが普通の事だと思って口にしなかった感謝の言葉。

 その言葉を墓前で言う事になる事をあの時のボクは考えても居なかった。


 ボク : 【 向日葵の花...。キミも可愛いっていってたよね。 】

 ボク : 【 アレってボクに合わせてくれてただけなのかな...。 】

 ボク : 【 キミの事、何一つ解ってないクセに解った気分でいたの
        かも知れないね。 】

 ボク : 【 ボクの自分勝手な思い込みだったら済まないけど、キミ
        も可愛いって言ってくれたヒマワリの花を飾っておくよ。】

 ボク : 【 今のボクは、この花の色が解らなくなってしまったけど、
        キミにはちゃんと見えてるのかな...。 】

 ボク : 【 大好きな花だと信じて置いていくよ。 】

 ボク : 【 本当に、ボクの事が好きだったのかな...。 】

 ボク : 【 今はそんな事さえも思ってしまうよ。 】

 ボク : 【 迷惑...。かも知れないけど、また来るよ...。 】


二人でいた時には感じなかった感情さえ感じてしまうようになっていた。ただの一方通

行の感情を、優しい彼女が支えていてくれてただけなんじゃないか...。と。

 外の空気が嫌いになった。色彩のないモノトーンの世界が苦しくなったから...。

 下がっていく視力。この現実は、変わらなかった。

 そして、二年後殆ど目は見えなくなっていた。


 ボク : 【 これは、キミの苦しみの代価なんだろうね。 】


そう思った。もっと大きな罰で君が帰ってくるなら何でも与えてくれ!!自分なんて

どうでもいい。キミが居る今があれば...。

 部屋と言う空間だからわかる距離感。外を歩くと全盲に近い現実。代償としてはま

だ安いのかも知れない。ボクと居た時間が僕に見えないように繋げていた悲しみの時

間だったなら...。

 もう、殆ど見えない向日葵だけが、キミとボクを繋ぐ記憶の絆。墓前にさえも行け

ないボクをキミはどう思ってるんだろう??


 ボク : 【 キミの事を何も考えていないダメな人間でしかなのかな。 】


そう思い目を閉じると、あの日の君の姿が見えた...。


 ボク : 【 ....。 】


視力のないボクに鮮明にあの日のキミの姿が...。あの夏の可憐なキミがそこに居た。


 ボク : 【 夢?? 】

 ?? : 【 夢じゃないよ。 】

 ボク : 【 ......ッ...。 】


 言葉にならなかった。もう何もない僕の前に差し込んだ一筋の光。あの日ボクの心

とボクの瞳から消えた光がそこに差していた。目頭が熱くなり、とめどなく涙が溢れ

てくる。嘘でもいい、夢でもいい。何でもいいから消えないでくれ!!伝えたい事が

山ほどあるんだ...。


 ボク : 【 ......ッ...。 】

 ?? : 【 あなたが泣く姿なんて始めてみたかな。 】

 ボク : 【 本当に居るの?? 】

 ?? : 【 嘘じゃないよ。 】


目を閉じているボクに見えている彼女の姿はまるであの時に瞳に宿した姿と変わらない。


 ボク : 【 今まで、我慢させて...。ゴメン。 】

 ?? : 【 えっ??何の事 】

 ボク : 【 キミの事を考えてなくて...。それで...。キミが我慢してて...。 】

 ?? : 【 そんな事ないよ。あなたは一生懸命やってただけなの。 】

 ?? : 【 ソレに...。こんなに苦しめちゃうなんて思ってなかったから...。 】

 ?? : 【 ごめんなさい...。 】

 ボク : 【 いや、キミが謝る事なんて...。それに、ボクが...。 】

 ?? : 【 そうじゃないの。ずっと見てたらか知ってるのよ。 】

 ボク : 【 ずっと?? 】

 ?? : 【 そう、あの日からずっと...。 】

 ボク : 【 えっ、どこで?? 】

 ?? : 【 あなたが大事にしているそのプランターで。 】


 大バカだ...。大切なヒトはずっと居てくれてたじゃないか..。ソレなのに気付いても

居なかったのか...。自分が嫌になりそうだ...。彼女が居なくなってから、ボクはプラン

ターを買った。そこに向日葵を植えた。失くした笑顔がそこにあるように感じるからその

花を見つめ語って居た。ボクが彼女を投影していたその花は、ボクと彼女を繋げていてく

れていた。


 ?? 【 あなたが、ずっと自分を責めているのは見て辛かった...。 】

 ?? 【 でも、私の気持ちを疑うのはやめて。我慢して一緒には居
      なかったから。 】

 ?? 【 あなたと同じで、この可愛い花が大好きなの。 】


互いに愛した花。その花が二人を繋いでくれたのかな。


 ボク : 【 ありがとう。キミがいなくなって、幾つも解らない事が
        増えて、何もかも解らなくなっちゃってたんだ。 】

 ボク : 【 キミの気持ちが聞けて嬉しいよ。それよりも。 】

 ボク : 【 あの時のキミをこうして見つめる事が出来ている事が
        今のボクにとって何よりも幸せなんだ...。 】

 ボク : 【 そして、ボクの傍に居てくれて、ボクに想い出をくれて
        ありがとう。】

 そう伝えると、彼女は優しく微笑んでくれた...。

思いを伝える事。普通に何時も出来ていた事なのに、遠く離れると特別な事をしているよ

うに感じてしまう。見えない瞳に映る君の姿。ボクはこの代価の意味を理解した気がする。

 大切なモノを理解するには、ボクにはこの代価が必要だったのだと。あの時に咲いてい

た向日葵の花のようなキミは、こんなに素敵で可憐なヒトだったんだと...。

そう思った瞬間、視界がブラックアウトしていった。言葉もなく視界がなくなりボクは

目を開いた....。


 ボク : 【 夢...。だったのか...。 】


 そして、向日葵を見つけた...。


 ボク : 【 ありがとう。幸せな時間をくれて...。 】


そこにあった向日葵にそう語った。


        :
        :
        :


 ボク : 【 ・・・・。 】



 その目に光が戻っていた。そこには色彩の存在する世界が広がっていた。


 ボク : 【 キミがくれたプレゼントなのかな...。 】


 あの時見たのが夢なのかどうかは解らないけど、ボクはその時キミと居た。見えなく

なっていた今と、キミの心と、僕自身をキミは見えるようにしてくれたのかも知れない。


 ボク : 【 ボクは代価を支払わせてばかりだね...。 】

 ボク : 【 キミの存在がなければボクの人生はなかったのかも知れない。 】


瞳の代価以上に僕が失ったモノは大きいことに気付いた。

 目で見える光の代価は、キミの存在は比較にならないモノだと感じた。

 あの日から3年の月日が経過していた。

 ボクは、キミの面影が消えず、誰かを愛する事が出来ないまま時間を費やしていた。

太陽が昇り雲ひとつない空がそこにあった。

 その空は、グレーではなく、コダックブルーに染まっていた。ボクは、その墓前に向か

う。


 ボク : 【 暫く来れなくてごめん...。 】

 ボク : 【 やっと一人でココまで来れるようになったよ。 】

 ボク : 【 夢...。だったのかな。キミに逢えて嬉しかったよ。 】

 ボク : 【 キミの言葉を信じたいけど、僕はやっぱり自分を許す
        事は出来なさそうだ。 】

 ボク : 【 ボクはそんな都合のいい人間にはなれないから...。 】

 ボク : 【 それと、目が見えるようになったんだ...。 】

 ボク : 【 ありがとう。コレはキミのおかげだと思ってるよ。 】

 ボク : 【 今日も持って来たよ。向日葵の花。 】

 ボク : 【 二人を繋いでくれた花だからね。 】

 ボク : 【 また、来るよ。この花を持って。 】


久しぶりの挨拶を済ませて駅まで歩いた。行く時には気付かなかった向日葵畑がそこに

広がっていた。


 ボク : 【 幸せを運ぶ花がこんなに咲いているなんて...。 】


二人の想い出を綴ったアルバムのような景色がそこに広がっていた...。

 感傷に浸り見つめていると強烈な風が吹いてきた...。目を凝らした瞬間。その向日葵

畑に君の姿が見えた気がした。

 春...。始めてあって好きだと伝えた時の恥らうキミのほほのように薄紅色のサクラの

花の咲き誇るその季節が好きだ。秋...。キミの優しさのように樹木が暖かな色に染まり

二人で見つめた美しい夜空があるこの季節が好きだ...。冬...。大地に星たちがきらめき

、空からそれを祝福するように天使の羽根が舞い降り、寄り添っていたその季節が好きだ

...。

 そして、夏。強い日差しが作るハイコントラストの世界。目に見える世界の彩度が上が

り、多くのモノが美しく見える季節。その中で、可憐にそして空を見つめ伸びる花、向日

葵が咲き誇る季節。そして、その花のようなキミがどこかに居るように思えるこの季節が

好きだ...。

 向日葵の花。二人を繋いでくれた想い出の花。そして、その優しく可憐な花のようなあ

なたの居たこの世界が好きだ...。

 ボクの瞳にはこの世界の美しさは広がっているけど、今もボクの心には雨が降っている。

あの時のような酷い雨ではなくなったけど、キミを失った悲しさが消えない...。

 弱い僕だから、君の事思っていていいかな...。その向日葵の花と君の眠るその場所に

思いを馳せて。

 黄昏時を過ぎて始まるのは、夜の帳と水平線を焼く暁。黄昏時は終わったけど、今の

ボクを照らす月を優しく感じれるかは解らない。

 ただ、その帳の中でも向日葵は強く照らしてくれる。あの日何時もボクの傍にあった君

の笑顔のように...。


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