■ 一人綴り

イロイロやってますが、停滞中。(モノが出来たらアップする感じですから...。)更新はしますが数が減るかも。

■ 【 Lost My World 】(2)

2011年02月08日 | へたっぴな小説もどき



 久しぶりに一筆書いてみました。

ちなみに、フィクションです。

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 【 Lost My World 】(2)
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 夏...。日差しを遮るカーテンが優しい光でキミを包み、少しやつれぎみのキミを優しく

包んでいた。ボクが届けた向日葵の花を優しく見つめながらこう言った。


  彼女 【 ねぇ、結婚式ってどんなのかなぁ...。 】

  ボク 【 えっ。 】

  彼女 【 私達こうなってなかったら結婚式あげてたかなぁ...。 】

  ボク 【 ...。 】

  ボク 【 多分あげてたと思うよ。 】

  彼女 【 結婚指輪とか見に行って...。ドレス選んで....。 】

  彼女 【 結婚式あげたらみんな来てくれたかな...。 】

  ボク 【 みんな来てくれて、おめでとうって言ってくれてたよ。 】

  彼女 【 そうだよね。そして赤ちゃんが生まれて幸せになってたのかな? 】
 
  ボク 【 そうだね。キミに似た男の子かも...。 】

  彼女 【 違うよ。あなたに似た女の子だよ。 】

  ボク 【 じゃぁ、二人に似た双子にしておこうか...。 】

  彼女 【 そうだね...。w 】

  ボク 【 でも、治ったらあげれると思うよ。 】

  彼女 【 うん。だったら、一生懸命頑張らないといけないね。 】


彼女からこんな言葉が出てくるとは思わなかった...。そうだ...。もう彼女には時間が

無いんだ...。

 翌日、宝石店に行き、ペアリングを買った。自分の為ではなくてボクに降り注ぐ今は

彼女に捧げようと思った...。

 そして、病院に向かった。個室の病棟の彼女とは二人っきりで話せる状況だった。


  彼女 【 今日は遅かったね。 】

  ボク 【 うん。少し寄り道したから。 】

  ボク 【 ねぇ、目を瞑ってくれる? 】

  彼女 【 えっ、どうして? 】

  ボク 【 ないしょだよ。 】

  彼女 【 そうなの?? 】

  ボク 【 そう。 】


彼女が目を閉じるとボクはポケットからリングを取り出した。


  ボク 【 目を開けていいよ。 】

  彼女 【 うん 】


そう言うと彼女は目を開いた。


  ボク 【 今日は特別なプレゼントだよ。 】

  彼女 【 えっ?何コレ?? 】

  ボク 【 リングを買ってきたんだ。 】

  彼女 【 どうして?? 】

  ボク 【 付き合って5年経つから、ちゃんとプロポーズしておこうかと
       思ったから...。 】

  ボク 【 それに今日は、特別な日だし....。 】

  彼女 【 ....。覚えていてくれたんだ...。 】

  ボク 【 当然だよ。ボクにとって一番大事な日だから...。 】


二人が出会って付き合い始めたその日。ここ数年は特別な事をしてなかったけど、ボクに

とって特別な日だった事は変わらなかった。


  ボク 【 披露宴とか結婚式はここでは開けないけど、二人だけの
       結婚式をあげようかと思って...。 】

  ボク 【 ボクは、頼りないかもしれないけど、ずっと好きだし、
       側に居るから。こんなボクで良かったら一緒に居てくれ
       ますか? 】

  彼女 【 うん。私もこんな感じになっちゃったけど、ずっと愛し
       てくれますか? 】

  ボク 【 うん。キミでないとダメなんだ...。 】


そう言って、ペアリングを薬指にはめると、キミはしばらく左手を眺めていた。


  彼女 【 ねぇ、似合ってるかな? 】

  ボク 【 うん。似合ってるよ。と言うか何でも似合いそうだけど。 】

  彼女 【 一緒にお店みたかったなぁ...。 】

  ボク 【 ごめんね。 】

  彼女 【 治ったら一緒に行きたいな...。 】

  ボク 【 その時には一緒に行こうね。 】


すると彼女は驚くような事をいい始めた...。


  彼女 【 ねぇ、結婚式ってキスするんだよね...。 】

  ボク 【 うん。そうだけど...。 】

  彼女 【 ねぇ、この結婚式はないの?? 】

  ボク 【 えっ?!/// 】

  彼女 【 だって、誓いのキスでしょ...。 】

  ボク 【 いや、ここ病院だし...。/// 】

  彼女 【 誓うんじゃないの? 】

  ボク 【 そ、そうだけど...。/// 】

  彼女 【 ねぇ、お願い...。 】

  ボク 【 うん...。/// 】

  ボク 【 大好きだよ。/// 】

  彼女 【 私も...。/// 】


と言って、彼女に近づこうとしたとき、いきなりドアをノックする音が...。


  看護師【 ○○さん。検温に来ました...。 】

  ボク 【 @*ー#$%&’( 】

  彼女 【 !%’(&#$‘+ 】


ドアが開くと看護師の女性が入ってきた...。


  看護師【 どうかされました? 】

  二 人【 い、いえ...。べ、別に....。 】

  看護師【 あら?リングされてましたっけ? 】

  彼 女【 あっ、貰ったんです。彼に。 】

  看護師【 優しい彼氏でよかったですね。 】

  彼 女【 はい。w 】

  看護師【 じゃぁ、熱と血圧測りますね。 】


しばらくすると看護師さんが検温を済ませる。


  看護師【 元気にならないといけないですね。 】

  彼 女【 はい。元気になって一緒になります。 】

  看護師【 頑張ってね。 】

  彼 女【 はい。 】

  看護師【 キミも彼女を大事にしてあげないとね。 】

  ボ ク【 はい。 】


そう言うと、部屋の外に出て行った...。


  彼 女【 行っちゃったね。 】

  ボ ク【 そうだね。 】

  彼 女【 ねぇ...。一生愛してくれる? 】

  ボ ク【 誓うよ。ボクの事も一生愛してくれる? 】

  彼 女【 うん。誓います。 】


そして、彼女との唇が近づいたとき、いきなりドアが勢いよく開きさっきの看護師の女性

が戻ってきた。


  看護師【 ごめんなさい、聴心機忘れちゃってたんで取りにきました。 】


慌てふためく二人...。


  ボク 【 @*ー#$%&’( 】

  彼女 【 !%’(&#$‘+ 】

  ボク 【 あ、あぁ~。ね、熱はないみたいだねぇ...。 】

  彼女 【 う、うん...。熱っぽかったけど気のせいみたい...。 】

  看護師【 ??? 】

  看護師【 どうしたんですか? 】

  二人 【 い、いやぁ~。べ、別に....。 】

  看護師【 あっ、お邪魔だったかしら...。 】

  二人 【 いえいえ、そんな事はないです。 】

  看護師【 それじゃお大事に。 】


そう言うと、看護師の女性は病室を後にした...。


  彼女 【 び、ビックリしたぁ~。 】

  ボク 【 心臓に悪いし...。 】

  彼女 【 もう来ないよね。 】

  ボク 【 ちょっと見てくる...。 】


外にもう誰も居ないことを確認し彼女の元へ戻る。


  ボク 【 もう、来ないと思うよ。 】

  彼女 【 じゃぁ、約束だよ。 】

  ボク 【 うん、約束だね。 】


牧師さんもいないし、チャペルでもない白いカーテンのある病室で、ただベッド脇の

一輪挿しになった向日葵の花に祝福されながら、二人で永遠の愛を誓った。

 ボクの責務でもキミの短くなった時間への思いでもなく、本当に永遠に続く愛を誓

った。奇跡が起きて二人で約束した時間が来ると信じて....。

 そして秋になった。色づく季節の色彩は病室からは見えず、ただ、少し優しい風が

病室に流れるようになっていた。

 ただ、秋風とともに木の葉が落ちていくように、彼女の時間も徐々に短くなって行

っていた。

 起きている時間が短くなり、眠る時間を取ってあげるようになってから会話の時間

は少しづつ短くなっていたが、彼女の手紙だけは毎日あった。ただ、その文字数も徐々

に少なくなっていた。

 冬。治療もキツくなり、身体も弱っていても彼女はボクに笑顔を振りまいてくれた。

ボクの心の中に咲く、どの季節のどの花よりも美しく咲いているその華に出会うために

ボクはその場所に赴いた。

 この頃から病室で手を繋ぐ時間が増えた。冷たいキミの手をボクの体温で温めてあげ

たくて。


  【 一人じゃないよ。ボクが居るから。 】


そんな言葉をかけるように、傍に居る間ずっとその手を握っていた。

 ただ、手の振るえから感じる彼女の心の動きが悲しかった....。

 木枯らしが全ての樹木の葉を奪い、そしてモノトーンの世界が広がる頃、ボクの世界

も彩度を失っていった...。

 面会時間の制約が入り、容体も変化するようになっていた...。その場所に花を飾る

ことも許されず、彼女は一人の時間を費やすようになっていた。

 ボクの部屋で感じる一人の時間。その部屋でただ祈る奇跡...。ボクは無力で愚かな

人間だと強く感じながら、ただ部屋に漂う白い吐息とため息の数だけを数えていた。

 そして、年を跨ぎ寒さが増す1月。集中治療室へと移動した...。その日から、キミの

声とキミの笑顔がボクに届かなくなった。

 キミの手紙も見れず、ボクはただキミへの一方通行の想いだけを紡ぐ人になっていた。

遠い場所に居る誰かに想いを伝えるように、目の前に居るキミにいろんな事を語り、そし

てほとんど無いような面会時間の間、ただ語っていた。


  ボク 【 ねぇ、起きてる? 】

  ボク 【 今日さ、仕事でさ....。 】


キミに日常を語って終わるキミが闘病生活を始めた頃のような状況に戻っていた。

 ただ、変わってしまっていたのは、キミの笑顔と笑い声と、そしてずっと続いていた

キミの手紙がなくなっていた事。

 ボクはキミと一緒に居る前のボクに戻ってしまったような気分だった...。

 帰り際、ボクは必ず言っていた。


  ボク 【 ボクはずっと愛してるから...。 】

  ボク 【 ずっと待ってるから...。 】

  ボク 【 だから帰っておいで...。 】


 触れ合うこともできない、言葉も笑顔もなく、そして違う時間を刻む現実。この時ボク

はキミに生かされていたんだなと気づいた...。

 ボクの時間の中にはキミが居て、ボクの思い出の中にはキミが居た。そして今も消えそ

うな二人の時間を消さないように一緒に居るボクが居て、その時間を1秒でも長く繋ごうと

しているキミが居た。

 寂しさと孤独感があふれる日々が続いた。ボクを優しく包んでくれるのは、その場所で

眠っているキミしか居なかった...。

 白いナルシサスの花のようなキミが眠るその場所。ボクがキミを感じ、そして、キミと

の時間をもう一度刻む奇跡を信じる為にボクはその場所に向かった。

 ただ、そのナルサシスの華は日を増す毎に弱っていき、ボクの心の中の想いと逆らうよ

うな現実がそこにあった。そして、想いを募り、約束した未来が消える日が訪れた...。

 病室の機材だらけになった部屋で、嗚咽する両親の姿と一緒にキミが居た。

機材のついていないキミがそこに居て、ただ優しい顔で眠っていた...。

 触れたその手には体温があって眠っているかのようにさえ思えた...。そう、あの寒い

夜空の中でイルミネーションを見た時始めて繋いだその時の暖かな感触がボクの手の中に

あった...。

 
  ボク 【 あの時のままなのに、どうして? 】

  ボク 【 約束したじゃないか...。一緒にお店見にいこうって...。 】

  ボク 【 もう一度桜並木歩くって言ったじゃないか...。 】

  ボク 【 また、一緒に....。 】


言葉を重ねて行くほどに、涙が溢れてくる...。現実を認めたくないボクの最後の抵抗。

 ボクの心は、この暖かな掌を触ったとき命が戻ってくれるんじゃないか?と思い信じ

ていた。でも、心電図は止まり、脳波計も動いてなかった...。

 涙が堰を切ったように溢れ出す...。思い出が逆流していくかのように脳裏を駆け抜け

る。

 紡いだ想い出、交わした言葉、そして、触れ合ったキミのぬくもり...。その全てが、

渦巻いていた....。

 
  ボク 【 ....。 】



言葉を失ったボクに彼女の両親が優しい声をかけてくれた...。


  彼女の父 【 ありがとう。約束を守ってくれて...。 】
 
  彼女の父 【 私だけだったら、あの子は悲しい時間を過ごして
         いたかもしれない。 】

  ボ  ク 【 でも、彼女に何もしてあげられなかったです。 】
 
  ボ  ク 【 すみません。ボクは一緒に居たのに...。 】

  彼女の母 【 あの子は幸せだったと思うわ。あなたのせい
         じゃないから。 】

  ボ  ク 【 すみません...。 】


 ボクのせいだ...。あの時もっと早く気づいていたら、こんな事にならなかった。

悲しみは罪の意識へと変わっていた...。

 翌日、彼女は久しぶりに実家に帰っていた。笑顔で話している家族団らんの姿はなく、

そこには眠りについたキミの姿と悲しみに暮れる家族の姿しか無かった...。

 久しぶりに両親と過ごす彼女は何も言わず、ただ冷たくなったままでそこに居た...。

 狭い棺の中、美しい華の中に、ボクの中で咲いていたどの華よりも美しい華が佇んで

いた。そして、その棺の蓋が閉められ、本当にボクの前から消えようとしていた...。

 見えない扉が開き、その扉の向こうの知らない世界に旅立つキミをただ、見つめるし

かなかった。悲しくて泣き明かしたのに、心が揺れて、おかしくなりそうだったのに、

ボクの中で揺らぐ心さえもなかった...。キミと一緒にボクの心も何処かに行った気が

した。


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