角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#208 医療 or サービス? 受精卵ゲノム編集

2017-08-06 06:31:56 | 命―畏れと戦き
産経新聞8/4大阪6版より
*Web産経ニュース:人の受精卵をゲノム編集 心臓病の遺伝子修復に成功 米チーム
http://www.sankei.com/life/news/170803/lif1708030004-n1.html



ついに、と言うか、
早くも、と言うべきか、

技術はここまで来たのだし、
どこまでも行くのだろうな、
と思う。


上の記事は、
事実関係をさらりと伝えているだけなのだけれど、
別の媒体では、研究グループ代表のこんな発言を取り上げてました。

〈「遺伝性の病気がある人の家族や社会の負担を減らすことができる」〉


「遺伝性の病気がある人」は、
「家族や社会の負担」になっている、
だから、それを減らすための研究だ、

という意味にとれるのだけれど、そういうこと?


なんか、ちょっと引っかかるんですけど、と思っていたら、
石井哲也さんという大学教授のコメントもありました。

〈「アメリカでは受精卵の遺伝子を調べ異常がないものだけを選んで子宮に戻す着床前診断が広く行われているうえ、第三者から健康な精子や卵子を提供してもらう体制も整っているので、今回の研究が実際の現場で必要とされる可能性は低く、研究の目的に疑問がある」〉

〈「ゲノム編集は難病の治療に有効な技術になり得るからこそ使い方は慎重になる必要がある。ヒトの受精卵をゲノム編集する研究について、日本には法の規制がないので、国は早急に対応すべきだ〉


*NHK NEWS WEB:ヒトの受精卵をゲノム編集 米などの研究グループ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170803/k10011085601000.html

まあ、そうですよね。


今、現に患っている病気を治すためにソレを用いるのは、
まだギリギリ「医療行為」だとは思うのだけれど、

将来、罹患する可能性のある病気を事前に排除するために、
受精の段階で遺伝子編集技術を使うとなると(そして失敗した受精卵は廃棄処分するとなると)、
それは医療の範疇なんでしょうか?

というか、
素朴な疑問として、

ゲノム編集で人為的に手を加えられたモノは、
果たして父(精子)と母(卵子)の、
「血を分けた子供(ヒト受精卵)」と言えるんでしょうか?



石井哲也さんといえば、ワタクシ、たまたまなんですが、
『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』
という本を、ちょっと前に買ってました。



イースト・プレス:ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影
http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=2694

その「あとがき」に、こんな一節があります。

〈社会における生命倫理は学者が決めるものではない。人々のさまざまな考えが時間をかけてブレンドされながら形成されていくものである。読後はぜひ、友人と、夫婦で、家族で、学校の道徳の時間などで話し合っていただきたい。話し合いでは、様々な考えがでてくると思う。それら考えの良しあしをきめつけるのではなく、なぜそのように思うのか、そう考える理由はなにか、よく意見交換してほしい。それが、日本における倫理形成の着実な一歩となる〉


確かに、
ひとつの生物種である「ヒト」として、
他人事では済まされない話だと思います。

自分自身に遺伝性の病気や障碍があったり、
そろそろ結婚とか子供をとか思ったりしない限り、
このテのことを考える機会は少ないのでしょうけど。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

こちらは、同じニュースですが、さらに踏み込んでます。

ナショナルジオグラフィックニュース:ゲノム編集でヒト受精卵を修復、米初、将来性は?心臓病の遺伝子を改変、公的資金の使用は米国では不可
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/080400298/?P=1


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