絵本の読み聞かせはいつから集団相手になったか

ずっと昔に図書館ボランティア講座を受けた時は「図書館のいうとおりにやればいいのだな」という感覚がありました。ずっと続けてきて、現場と理論の食い違いが大きくなり、「このやり方は誰が決めたの?」と思うことが増えました。
 つたない探し方で『子どもの図書館の運営』につきあたり、「そうそう、こうしろって言われた。これが図書館員のネタ本だったのね」(もっとたくさんあるのでしょうね。すみません)と思いました。でも、実情に合わない。そして、大先生が講演で「これこれこうです」と昔のやり方を話されたら、また昔に戻ってしまう。

 個人的に『別冊太陽』の絵本シリーズが好きです。12月の『もっと読みたいおはなし絵本』も興味深く読みました。最後の東京子ども図書館の部分も読みましたが、公共でなく私立の図書館であるということをしっかり読み取ってくれる人はたくさんいるだろうかと、不安になったのです。印象に残った本と尋ねられて『ちいさいおうち』が一番よくあがるような生徒ばかりの環境でものを言われても、それはちょっと困る。最近ものをよく確かめないで、偉い先生のいうとおりにすればいいという風潮がはびこっているし、現にそれで私も困ることだらけだからです。
 写真を見ると、子どもと個別に読んでいます。おはなしの部屋にいるのは結構大きな子どもです。そこでは主にストーリーテリングがされるのでしょう。部屋に向かうために整列していく子どもの姿もあります。つまりそのために万障繰り合わせて来られる子どもの姿です。

 公共の図書館は「なにかを目指す」ものなのでしょうか。もちろんハイレベルなものを目指したいという本来の欲求はあるのでしょうが、息を切らして上を見上げて私たちは何をつかんだのだろうという気がしてなりません。

『子どもの図書館の運営』で気になったところを書いていきます

①「おはなしも読み聞かせも、ことばが唯一の伝達財であるだけに・・」という箇所があります。(P144、151)これは、違うと思う。絵本の読み聞かせは絵も伝達財ですし、読み手の個性(語り口、姿、雰囲気)も伝達されるはずです。

②「再話者の作品より、よりすばらしい語りができるのであれば、自分のスタイルで語るべきである」。(P147)その通り。民話に関して、です。印刷された本を眺めるよりも、人間が声にして立ち上げればその方が素晴らしいに決まってると思う。個々についてはまあ、いろいろ・・・。いろいろあることそのものがとても正しく、いいことです。

③「絵本を読む場合、子どもが集団であれば遠目のきくものをえらぶこと」(P151)とある。つまり、この本では絵本の読み聞かせとは集団でない場合を基本として書かれ、「集団であれば」と特別にしてあるのです。絵本の読み聞かせは集団相手でない方が普通だったのではないでしょうか。

④「子ども会の意義」(P167)としていろいろ書かれています。私たちボランティアがやっているのは子ども会ではなかったか、と思えてなりません。でもボランティアはそれなりにプライドのある方も多く、自分の価値を高めるため「本と子どもをつなぐ読み聞かせで、図書館員と同じ事をしている、私たちは特別」と信じて疑わない方も多い。

この本が出版されたのが1986年。この時点では絵本の読み聞かせを集団相手にするのは、特別な場合でした。
翌1987年、『えほんのせかいこどものせかい』が出版され、絵本の読み聞かせを集団相手にすることが当たり前になった、ような気がする。絵本の紙芝居化で、「皆で一緒に楽しむのもいいね」の世界がはじまった。もちろん私も否定するわけではありません。

訂正追記。(「1992年。新潟市では図書館主催の読み聞かせボランティア講座が初めて開かれ」と書いた以前のこの部分はまちがいです。私が受けた年でした。実際はそれよりもう少し前で1987年よりあとです。上記の本を元に研修がされたので。申し訳ありません。実際は内野地区の平和台文庫さんという団体がもっと前からされていました。)

・・・それを元に「ボランティアによる絵本を楽しむ会」が行われるようになり、「絵本を楽しむ会」という団体が立ち上がりました。代表は持ち回りで別に偉いわけでないのですが、私が代表に当たった年に、私は沿革や規約作りの必要性を感じ文書化しました。会の合意があったあとに、いろいろ反対意見を言われたこともありました。もう、やめてしまったのでその規約はどうなったか分かりません。ごく簡単なものだったと思いますが、「利用者や時代」に「本来の目的」をつき合わせて変えていけるに違いないと、応援しています。反対された理由は「あいまいな会でいいのだ」という理由だったからです。あいまいな会ならばあいまいに変えていけるはずだと思うから。よい絵本だって、人それぞれ違うあいまいなものなんじゃないでしょうか。
 
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