かめ設計室*3丁目通信

2005年4月より、西新宿にて一級建築士事務所かめ設計室がはじまりました。3丁目からのかめバー通信。

剣持勇と親父の椅子

2005年07月22日 | 籐 の椅子
親父が作った籐の椅子です。彼は僕の小さい頃から籐の乳母車を作り続けていました。関東ではあまりなじみが無いらしいが、関西や東北では農家に一台かならず籐の乳母車はありました。畑仕事の間、赤子は乳母車から空だけを見上げて過ごします。こんな郷愁をさそう乳母車は、やはり時代の流れにのれませんでした。円高により東南アジアの籐製品が安価に輸入されました。それでも作り続けていましたが、さすがに需要は途絶え、滋賀県で最後の籐製品製造業者としての看板を下ろしました。誇りに思います。
引退した彼に、剣持勇の『籐の丸椅子』の試作を依頼しました。MOMAの永久コレクションに選ばれた日本人初の作品です。実はこの椅子を作れる職人は日本でただ一人なんだそうです。それを聞いて、もしや?と試してみたのです。雑誌にその制作過程が紹介されていたので、それを参考に、図面はありませんでした。もともとこの椅子には図面は無いそうです。2日でこんな試作品を仕上げました。そのスピードと感覚には改めて脱帽です。
籐は水に浸しておくと,水を吸い上げよく曲がる。火をかけても同様です。その強さとしなやかさは竹をしのぐと思います。籐という素材の建築への応用は僕の宿題かもしれません。いずれにせよこの剣持の籐のスツールは、職人がいなくなれば値段が高騰するはずですね。今でも定価は16万くらいするようです。LIVING DESIGN CENTER OZONE - ラウンジチェア

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8 コメント

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いいお話ですね (mckee)
2005-07-24 22:30:17
先日トラックバックしていただきまして、ありがとうございます。おかげでいいお話が聞けたなぁと思います。お父様すごいですね。



職人さんがいなくなる問題は、消費者側の問題でもあると感じます。安価なものに流れて行ったままでは、、、悪循環ですね。
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Unknown (いちかわ)
2005-07-24 23:14:13
私の地元、愛知の津島市というところにも、藤で乳母車を作る職人さんがいると聞いたことがあります。(まだ最近ですがテレビで紹介されていました)でも、やはり後継者も需要も無く、値段は非常に高く、実用品ではなく芸術品と化しているようです。

私が小さい頃、祖母の家に遊びに行くと、買物に行く祖母はよくこの藤でできた乳母車を買い物篭代わりにして出かけていきました。懐かしいなあ。

先輩のお父様が藤職人さんだったとは、驚き!

でも、納得。
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技術 (はぶち)
2005-07-25 09:23:37
mckeeさんコメントありがとうございます。同感ですね。いちかわ元気してるか? もっと国は技術や人材に金をかけるべきなんですね。○○博物館建設に何億もかけるなら、○○育成と教育にこそ金を使って欲しい。生きた技術や人材が担保されるから。日本が世界に誇る大工は、もはや危機的状況。プレカットという文明が大工文化を破壊しています。あと10年もすれば、大工博物館ができちゃうよ、まったく!
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心温まるお話 (caraway)
2005-07-29 21:14:47
トラックバックを打っていただいてありがとうございました。carawayはデザインのこともまったく分からず剣持勇さんのこともネットで調べました。何にも分からなくっても、この椅子を見て、包まれるような優しさとぬくもりを感じました。素晴らしいお父様ですね。
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もう一度 (caraway)
2005-07-29 22:18:45
先程は早速コメントを下さってありがとうございます。もう一度、この夏に伊勢まで行ってみようと思いました。また違った思いであの乳母車と再会できる事でしょう。あの乳母車にはなぜか惹かれるものがありました。
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感動! (yukashi_dog)
2005-07-30 10:20:52
トラックバックありがとうございます。2日で仕上げられた籐の椅子を見つめていたら、幼いころを思い出しました。

籐のリクライング出来る椅子に父が座っていたこと。

そういえば、あの椅子はどうなったんだろう。

幾度も引越ししたので、いつのまにか見なくなってしまったような・・・

以前、東北の籠展にいったのですが、そこでも職人さんが

少なくなってる話を聴きました。

使い込むほど味わいが増すものを作れる技大事にしたいですね。
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勝手にすみません (yukashi_dog)
2005-07-30 14:44:58
かめ設計室さんにトラックバック頂いたのを機会に

籐のこと書かせてもらいました。

勝手にリンクさせてもらいましたけど、よろしかったでしょうか?

また、訪問させてもらいます。
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籐の椅子 続編 ()
2005-07-30 21:24:34
いろんな方からありがたいコメントをいただいたので、調子に乗ってそのうち籐の椅子・続編を書いてみる事にします。やはり反応からみても籐文化は関西方面が多いような気がしますね。
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