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(読書)協働社会をつくる条例

2005年03月29日 | 読書感想
マニフェスト検証の準備として、「協働社会をつくる条例~自治基本条例・市民参加条例・市民協働支援条例の考え方~」(松下 啓一著:ぎょうせい)を読みました。


(要旨)
 全国の自治体で、自治体と市民の関係を再定義・再構築することを大きな目的とした条例化が進んでいる。主なものとして、自治基本条例(まちづくり条例も含む)、市民参加条例、市民協働支援条例がある。
 自治基本条例は、自治の理念・基本的な制度や権利を内容とするもので、自治体の憲法ともいえる。
市民参加条例(市民協働支援条例も含む)は、政策決定、実施、評価に市民が参加していくしくみや、市民・NPOとの協働および支援を図ることを目的に制定される。(それぞれ、複合型や単独型など形式は多種多様。) ▲自治基本条例関連リンク集(大和市)▲
 

 こうした条例が生まれてきた背景は次の3点
①地方分権の進展によって条例制定権が拡大されると共に自治の枠組みや自治を実現するための仕組みを整える必要がでてきた。
②自治体の組織および運営については地方自治法等によって定められているが、現在の自治体運営にとって基本的な市民参加や協働、情報公開などに関する規定が無い 
③首長個人の指導性にのみ依拠するのではなく、継続的な自治運営のための仕組みが必要

また、公共を誰がそのように担うのかという概念の再構築が求められている中で、従来のように公共をすべて行政が
担うというのではなく、次のような理由で役割分担が必要になってきたとされている。

①地方分権によって自治体の重要性が増加
②公共の領域が拡大
③新たな公共の担い手としてのNPOへの期待
④セクター間での協働の必要性
⑤情報公開・説明責任が不可欠
⑥公共領域での活動のルール化が必要

自治基本条例については、ニセコ町のまちづくり条例が先駆的な役割を果たしプロトタイプとなっているが、名称やスタンスは様々。

①自治基本条例 (例)杉並区自治基本条例のみ
②市民参加条例 (例)宝塚市市民参加条例
③市民協働支援条例 (例)犬山市市民活動支援条例

自治基本条例の要件は、次のとおり。
①自治の基本理念やビジョンを示していること
②自治の実現にとって重要な市民の権利や責務を規定していること
③自治をつくるための制度や仕組みが規定されていること
④行政・議会の組織・活動に関する基本的事項を定めていること
⑤自治体の最高規範として、他の条例や計画などの立法指針・解釈指針となっていること
⑥以上のことが形式として規定されているだけでなく、実体的にも機能していること

しかし、これらの要件をすべて網羅して理想的なものに仕上げることよりも、むしろ実際の問題解決のために活用することが無ければ意味が無いため、市民との協働で策定していくプロセスや実際の自治実現に役立てることが重要。
ポイントは、自治を実現するための市民の権利や制度・仕組みといった枠組みを規定することにある。

「基本」とは「物事が成り立つためのよりどころとなるおおもと」の意味であるが、その条例の位置づけは次の2点。

①個別条例や各種施策の最高規範となる
②個別条例や各種施策の共通の基本理念となる


 自治基本条例の役割・メリットは次のとおり

①個別条例や様々な施策の全体構成が分かりやすくなる。
②個別条例や施策を基本条例の理念の下で再構築し体系化できる
③自治体と市民とのパートナーシップが促進される
④自治体運営のルールや市民の権利・責務が明確になり、継続的で安定的な運営が可能


条例作り方には3つの類型がある。

①行政主導型:行政が企画・立案し、関係者との調整を図った上で議会決議する方法
②市民主導型:市民が条例案をとりまとめて、議会を通じて実現する市民立法型。この場合は実効性に疑問が残る。
③協働型:市民が先行するか行政が先行するかは別として、対等な関係で策定していく方法。本来、協働型でつくることが望ましいが、条例の場合は行政計画と違い議会の条例制定権限との関係で今まではこの形態は少なかったが、一番有効。


 その他、本書では実際に条例づくりをおこなう時に参考となるよう、必要項目ごとの記述方法や要件等について豊富な具体例と最新データを駆使しながら詳しく書かれているので、関係者必読の書だと思います。

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