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(読書)自治体改革 第6巻

2005年03月05日 | 読書感想
 今日の朝日新聞夕刊のトップに「有識者会議を解散」と題した記事が掲載されています。職員厚遇問題見直しなどの改革案を提案してきた大阪市の諮問機関が市役所改革には内部だけでは不可能であるとの判断から、外部登用の特別職「改革担当補佐官」を設置するよう求めたことに対して、市側から強い反発があったため解散に至ったとか。
 あれだけ世間を賑わしている問題があるのに、自治体改革というのは本当に難しいものなのですね。
 
 という訳で、本日はこうした件と関連する書籍を紹介します。本のタイトルは「職員・組織改革」。 (編著:天野巡一、編集代表:西尾勝、神野直彦出版社:ぎょうせい)

 本書は、「自治体改革」シリーズ(全10巻)の中の1冊です。
 この「自治体改革」シリーズは、自治体が当面している諸課題について、その現状認識と将来展望を構築することを目的としています。ちなみに、地方分権における改革の今後の課題について地方分権推進委員会「最終報告」(平成13年6月14日)で次の6点の課題が挙げられていますが、こうした問題にもスポットが当てられています。


(地方分権における改革の課題)
1.分権型社会にふさわしい地方財政秩序の再構築
2.地方公共団体の事務や執行体制に対する義務付けや枠付け等の大幅緩和
3.道州制論、連邦制論などの新たな地方自治制度の仕組みの検討
4.「補完性の原理」に照らした事務事業の移譲
5.制度規制の緩和と住民自治の拡充方策
6.「地方自治の本旨」の具体化


▲地方公務員制度調査研究会報告▲



 同シリーズは手元に数冊ありますが、その中で一番興味を持った第6巻から読み始めました。

 さて、公務員制度改革については、公務員制度改革大綱(平成13年12月25日 閣議決定)▲大綱HP▲が出されていますが、本書ではそれに先だって出された地方公務員制度調査研究会報告「地方自治・新時代の地方公務員制度-地方公務員制度改革の方向-」が重要であるとの観点からその内容を詳しく解説しています。また、地方公務員制度調査研究会報告では、下図にあるようなことを基本視点として、次のように述べていますが、この基本認識の上で、専門性、創造性、柔軟性や豊かな人間性さらには住民の信頼を得る職務能力、公務員としての倫理観や責任感が求められる分権型社会における地方公務員を目指して、地方公務員制度を21世紀における地方自治を支える人事制度にふさわしいあり方に改革する必要があると本書では述べられています。

 こうした論点に加えて、公務員改革において「全体の奉仕者としての公務員」という意味を問い直す必要があると問題提起しています。何故ならば、公(おおやけ)の領域や基本概念を見直す必要があり、また公と民との垣根がますます低くなるなかで、公務員だけが地域の担い手ではなく地域住民の誰もが地方自治の主体であるべきだと考えられるからです。

 ところで、本書に興味を持ったのは理屈だけでなく改革に向けた実際の取り組みを、その当事者が直接紹介している点です。
 例えば、第6章「職員と住民の役割分担」については、住民が自らの自治体を自ら運営するという基本コンセプトで先進的な取り組みをしている志木市の穂坂市長が記述しています。志木市では、現在の公務員制度が終身雇用制であるため、改革のためには今後退職者の補充を一切行わない方針を貫くために「志木市市民との協働による行政運営推進条例」を制定されました。▲関連HP▲

 また、市民による行政運営参加が単に安い労働力の提供とならないように行政パートナー制度を導入し「志木市市民との協働による行政運営に関するパートナーシップ協定」の締結などをされています。▲関連HP▲

 また、こうした制度や行政が行うべき領域に関する検証作業についても、住民主体で行われており、市民プールの廃止に至る経過が紹介されています。さらに役割分担に関して、市町村サミット ~改革自治体からの世直し提言~ ▲関連HP▲を紹介されています。
 穂坂市長は、アウトソーシングやNPOとの協働および第三セクターの徹底した体質改善に関する取り組みを現場責任者ならではの視点で語られていると共に、「職員の役割」と題した節では、「首長も含めて公務員としての倫理は普遍であるが、役割については180度転換しなければならない。従来の概念を捨てることが重要である。」としています。

 その他、本書では福岡市役所の「DNA改革」と銘打った組織体質改革の実践▲関連HP▲ やプロポーザル運動などが紹介されています。

 最後に、自治体職員の処遇(待遇)問題もテーマとして掲げられており、冒頭で取り上げた大阪市の職員厚遇問題などの深層を知る手がかりが得られます。
 次は第5巻の「自治体デモクラシー改革」を紹介します。(たぶん)


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