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(読書)マニフェストで政治を育てる

2005年03月21日 | 読書感想
書籍名:マニフェストで政治を育てる
編 著: 藤森克彦(富士総合研究所)、大山礼子著

▲書籍紹介HP▲


 2月21日にマニフェストに関する記事の最後に(つづき)と書きましたが、しばらく途絶えてしまいました。
 今回はその続きも兼ねて本書の紹介をします。


(以下、要旨メモ)

【マニフェストとは】

 英国の選挙戦などで政党が発表する政策綱領のこと

 内容:ビジョン、任期中に達成すべき重要政策についての数値目標、達成手段、財源等

 有権者の評価は、マニフェストを掲げることについて81.2%が肯定的。

▲富士総合研究所 「マニフェスト選挙」に関する意識調査結果▲

  

【効果】
●政党の政策が分かる
●政権政党の青写真になり、内閣主導による改革推進ができることで、官主導から国民が主体的に選択した政治主導による改革可能。
●事後に達成度の検証が行える、実現のための原動力になるとともに、実現のための推進力となる。


【英国総選挙の特徴】

政党本位の選挙戦:有権者が重視するのは政党(政策)
有権者の関心事:誰が当選するのかではなく、どの政党の候補者が当選するのか
マニフェストで曖昧な点は、選挙戦での政策論争の軸となる
インフォームド・コンセント的な役割
なぜ英国では政党本位・政策本位なのか
 1)利益誘導しにくい仕組み(国会議員が官僚と直接接触することが原則禁止)
 2)補助金獲得への介入の余地が小さい
 3)政党本部主体の選挙戦を想定した選挙規則(候補者の選挙費用上限が130万円と少額)
 4)候補者が政党本部から強力に支援されている
 



【日本での課題】2003年11月の総選挙時点

 政権党が示したマニフェストについて達成度検証がされるなどの「サイクル」が無い
 従来の公約より具体性が高まったが、まだ質が低い。
 与党のマニフェストは、政権を担った期間の総括が欠けている。
 達成手段と財源への言及が乏しい。
 作成過程や体制の未確立
 政党が、政策理念や個別政策の下に結集した組織とはなっていない。
 官僚の関与が大きい。
 候補者が「個人公約」を掲げるなど、徹底した「政党本位」にはなっていない。
 幅広い層から有能な人物を政治家にしていくしシステムが不足(「地盤、看板、カバン」が多く、衆議院議員の4人に1人は世襲議員)

 有権者がマニフェストの内容を把握しやすい環境が未整備
 連立政権であるため、政党間で乖離が生じる。
 与党と内閣が対立し「抵抗勢力」になっている
 法制化の過程での民意の反映が不足
 達成度を検証していく体制が確立されていない。
 公職選挙法により、選挙期間中での配布が制限されている。
 地方レベルまでを視野に入れた選挙のあり方、政党組織、二院制の問題など、従来の制度の再検討も必要。

【首長選挙でのマニフェストの課題】
 現職優位にならないように配慮が必要
 首長候補者の政策プログラム策定にも政党が関わるべき(無党派がもてはやされる傾向はいかがなものか)
 議会の協力が不可欠


 本書は、マニフェスト元年といわれている2003年総選挙直後に書かれたものであることから、分析不足の面もあるように思いますが、大きな論点に間違いはなく現時点でも有益なものです。また、マニフェストに関する書籍が少ない中で、関係者は一読されることをお勧めします。
 最近の選挙では、マニフェストが随分と定着してきた感があり、これからの政界再編や政治文化を大きく変えていく可能性を持ったツールだと思いますので、さらに認識を深めていく必要がありそうです。


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