「赤ずきんや」
「何?母さん」
「すまないけれどお婆ちゃんのところにこれを届けてくれないか」
その言葉と同時に差し出されたかごの中には、魔実【失楽園】が入っていた。
私のお婆ちゃんは世界で唯一、【永遠の夜明け】という秘薬を作ることができる人間で、そこに材料であるリンゴに似た果実、【失楽園】を届けることが私の役割。
なので、いつも通り母さんからかごを受け取る。
しかし、私が受け取った後に . . . 本文を読む
「実はね美樹ちゃん」
「なにさるーあん」
「聞いて驚くなよん」
「るーあんがそう言って実際に驚いたためしないんだけど」
「……まあそうなんだけど、これは本当に驚くよ」
「ほんと?」
「うん」
「なにさ」
「実はね私」
「うんうん」
「この前…東京に行ってきたんだ」
「やっぱり大したことじゃな…東京!?」
「うん」
「東京ってあの東京!?」
「そ、あの東京」
「欲望渦巻 . . . 本文を読む
北風と太陽は競争が大好き。
いつもちいさなことで比べあいっこをしています。
そんな北風と太陽が話していると、一人の旅人がやって来ました。
「ひとつ競争しようじゃないか太陽さん」
「なんだね北風さん」
「あそこに旅人がいるだろう どちらが早くあの旅人の着ている上着を脱がせるか勝負だ」
「いいだろう」
「先攻は貰った」
北風はそう言うと、旅人に向かって風を吹きかけました。
風で服を吹 . . . 本文を読む
「月が綺麗だな」
「そうね」
夜空を見上げながら、私は同意する。
今日は雲一つなく、さらにスーパームーンというやつで、実に綺麗なお月様が見える。
「確かにきれいな月だ、けどね」
そういって彼は私に視線を向ける。
なんだかじっと見つめられてどきどきする。
「けれどもあの月よりも、」
彼が私に微笑みかける。
「君の方がずっと丸いよ」
「って彼が言うのよ!?酷くない!?」
と不 . . . 本文を読む
「突然だけど後輩君」
「何ですか先輩」
「実は私、雪女なの」
「……は?」
僕は反射的に先輩の顔を見る。
息をのむほど美人、というわけではないが整った顔を見ていると、先輩が涼しげな無表情を一切崩さずに再び口を開く。
「今まで隠していたけど、私はいわゆる雪女なの」
「はぁ……そうですか……」
僕は特に何かを思うことなくその言葉を受け止める。
「変わったお名前ですね」
「名前じゃなくて分類みた . . . 本文を読む