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What’s 行政書士 -会社設立支援の詩

電子定款での会社設立手続きを専門にしています。東京・立川市の行政書士の業務日誌です。

コンプライアンスを備える1-4_「中小企業だからこそ取り組みやすいコンプライアンス」

2008-03-31 23:35:49 | 業務日誌
中小企業なのにコンプライアンス?
そんな大仰な組織もないし規程整備の金もない!

中小企業にもコンプライアンスが求められているなどという話を聞くと、経営者の多くからそんな反応が返ってきそうです。
「コンプライアンスがメシを食わしてくれるのか!」
そんな声さえ聞こえてきそうです。
(会社の新入社員時代に法令解説書を売りに歩いたとき、「法律がウチらにメシを食わしてくれるのか!」と言われたことを思い出します。)
会社を(社員の生活を)守るためには多少のことには目をつぶるのもやむを得ないんだと。


ここでまず認識しておきたいのは、既述のとおり、企業を取り巻く環境は大きく変わってきており、昔は見過ごされたことも今は許されない時代になっているということです。
企業活動を規制するルールもさまざまな角度から整備されています。(その方向が正しいかどうかは別の問題です。)
危ない橋はどんどん脆くなってきています。
不祥事で会社が社会的な制裁を受けるということは、その会社に関わっていたすべての利害関係者、何百、何千、何万人の生活者に大変な損失を与えるということです。
利害関係者のためにするルール違反が、結果的に利害関係者の生活により多くのダメージを与えてしまう可能性が高いのです。


次に、中小企業では「コンプライアンス=大げさ、大変、面倒くさい」というようなイメージが先行しているような気がします。
実際には、中業企業でコンプライアンスを実践することは、さほど難しいことではありません。

法令遵守に対する社員の意識を高め、問題行為を防止し、かつ万一の事態には最善の対応ができるようにする・・・
巨大組織を抱える大企業では、こういうことをやろうと思ってもなかなかできないのが実情です。
そのためにコンプライアンス委員会なる組織を作ったり、規程などで事細かに手続きやルールを定めたりするわけです。

それでも、それぞれの組織が独立した権限を持ちながら、組織内に独自の風土というか、物事の判断基準を培ってしまっているために、規程やルールを全社に徹底させるまでには大変な労力と日数がかかります。


でも中小企業は違います。

経営者を代表とするリーダーの目が会社全体に行き渡りやすく、リーダーの迅速な意思を社員全員にすぐさま浸透させることができます。
これは営業面で大企業に立ち向かうための大いなる武器であるだけでなく、コンプライアンス態勢整備という面でも大変有利です。
コンプライアンスを推進するのに大きなカネも労力も時間も必要ありません。
「みんなに迷惑を掛けないようにルールをきちんと守る。」
リーダーにこの意思があれば、それこそがコンプライアンス経営の原点であり、内部統制の基本です。

コンプライアンスを備える1-3_「中小企業であっても無視できないコンプライアンス」

2008-03-26 12:34:00 | 業務日誌
その流れは中小企業にも及んでいます。

最も単純な話としては、大手企業が内部統制システムにより、業務手続きの細部にいたるまでをルール化した場合、その取引相手である中小企業もその仕組みに従わざるを得ないということになります。

仕組みに従うということは、さまざまな手順書や書式に基づき業務を請負うだけでなく、個人情報を適切に管理や、環境保護に配慮した資材の開発・調達などを行うということにほかなりません。
これらの取り組みがきちんと行われることを保証するためには、それなりの社内態勢の整備が必要になります。

それだけではありません。
さまざまな業界がいま、コンプライアンスの整備を進めています。
関係法令を踏まえた、あるいはさらに厳しい基準を上乗せした業界ルールが定められています。
それらの業界団体に属する中小企業は、業界の定めたルールに従って事業活動を行う必要が出てきます。

つまり、大企業とはスケールが異なるとしても、同じようにコンプライアンス態勢を整備しなければならなくなっているわけです。

コンプライアンスを備える1-2_「変化の背景にあるもの」

2008-03-20 23:01:01 | 業務日誌
企業がこのような動きを取るのにはいくつかの要因がありますが、端的に言えば、「社会経済の構造が大きく転換したため」と言うことができます。


企業の問題行為自体は昔からあり、近年になって急に増加したわけではありません。
むしろ、昔の方が売上・利益至上主義の号令の下、贈賄、談合、利益供与などが、ごく普通に行われてきました。

ただ、情報開示を強要される制度もなく、社員の忠誠心も厚かったため、不都合な情報はなかなか表面化せず、また表面化したとしても、官庁もマスコミもさほど問題視をしてこなかっただけです。

高度成長期以降の経済発展を支えてきた日本企業に対しては、世間も多少の問題行動には目を瞑ろうという寛容さがあったように思います。


ところが1990年代に入り、バブルがはじけ、右肩上がりの経済伸長は終わりを迎えます。

規制緩和により競争が激化し、競争力のない企業の淘汰が始まりました。
終身雇用システムは崩壊し、雇用が流動化するにつれ、会社に対する社員の忠誠心も失われていきます。
情報開示制度が整備されるとともに、インターナットが急速に普及し、もはや企業が自社に都合の悪い情報を隠し続けることは不可能になってしまいました。
情報を内部にとどめようにも制度がそれを許さず、かりに偽りの数字で情報開示をしても、関係者やお客さん等によってインターネットで簡単に告発されてしまいます。

規制緩和というと、単純には誰でも産業分野に参入できるようになったというイメージがあります。
たしかに、当事務所のメインサポートでもある会社設立ひとつをとっても、平成18年5月施行の会社法により、最低資本金規制の撤廃、株式会社の役員任期の伸長など、1人株式会社でもOKなど、会社を設立する要件は大幅に緩和されました。

ただし、一方で会社法は、取締役会を置く会社には内部統制システムの整備を求めています。
内部統制システムによって、法令等の遵守体制を構築させ、企業不祥事を抑制しようという狙いです。
金融商品取引法においても、大企業に対して同じように内部統制システムの構築を求めています。

規制は単に緩和されたのではなく、実際には、規制そのものが「事前規制」から「事後規制」へ転換されたことだと捉えるべきです。
規制緩和によってたしかに参入のハードルは緩やかになった面がありますが、むしろ企業の事業運営や問題行為に対する規制や罰則は強化されているのです。


情報開示制度、雇用の流動化、自由な情報発信などによって、企業は不正情報を隠蔽することができなくなっています。
なおかつ問題行動に対しては、消費者やマスコミの厳しい社会的制裁が加えられます。
もちろん法令違反に対しては厳しい罰則が適用されます。
問題行動や法令違反で業績を悪化させれば株主代表訴訟を起こされるかも知れません。


なぜいま、企業がコンプライアンスに真剣に取り組んでいるのか。
その理由は、コンプライアンスを取り巻く法・制度が整備され、もはや経営者の好き嫌いの問題では片付けられなくなっているからです。

コンプライアンスを備える1-1_「変わりつつあるコンプライアンスへの取組み」

2008-03-14 17:00:30 | 業務日誌
久々の記事アップになります。

今回からしばらくは、コンプライアンスのことを取り上げていきたいと思います。
記事は所長に代わって、事務所のコンプライアンスサポート窓口SHINJIが担当します。
よろしくお願いします。
(なぜ名前だけで、しかもアフファベットなのかといえば、フルネームはなんとなく気恥ずかしいからです。)


              * * *


さて、近年、企業等のコンプライアンスへの取り組みは新たな局面を迎えています。

以前、私が法令関係の出版社で、コンプライアンスに関する新刊書籍のリリースに関わったころは、コンプライアンスの言葉の意味を理解している人も少なく、社内で企
画案を進めることににさえ大変な労力を費やしました。

そのころ、大手企業では、いわゆる「コンプライアンス憲章」の類を策定するところも少なくありませんでしたが、その手の宣言をつくって終わりという、カタチだけの
対応が多かった印象です。

大手企業がそのような状況ですから、日本の企業の大多数を占める中小企業では、コンプライアンスなどという概念は、ほとんど関心すらもたれないという状況でした。

ただし、中小企業について付け加えると、コンプライアンスのカタチは備えていなくても、多くの中小企業では、実態として非常にクリーンな経営が行われていたというのも、また事実です。

なぜなら、中小企業にとって、顧客からの信用は生命線であり、信用を失うような問題行為には強いブレーキがかかるからです。
また、組織規模が小さいため経営者による統制が効きやすく、倫理観のしっかりした経営者のもとでは不正が起こりにくいということもいえるかと思います。


ともあれ、一昔前までのコンプライアンスは、一部の大企業において、考え方としてはあったとしても、企業活動の実態とはあまり結びついていなかったといえます。

ついでにくだんの新刊書はというと、そういう時勢のせいばかりではないかも知れませんが、結果としては売れ行きは伸びませんでした。


ところが、あれから10年弱が経過した昨今、状況はかなり変わってきています。

大手企業においては、コンプライアンスと実務のリンケージが進んでいます。
つもり、コンプライアンスを掛け声や建前で終わらせるのではなく、できるだけ企業の具体的な活動に求めていこうとする動きが活発です。

問題発生時のメディア対応

2008-02-21 17:30:28 | 業務日誌
冷凍餃子に有機リン系殺虫剤メタミドホスが混入していた問題は、その後冷凍肉まんでも同様の物質が検出されるなど、広がりを見せています。

企業にとっても生活者にとっても、しっかりと食品の安全に関する危機意識を持たなければならない時代になっているのだと、強く感じました。


それにしても、先のJTやコープの一件を見るにつけ、問題発生時の企業のメディア対応の重要性と難しさを感じます。

メディアを前に適切でない、あるいは誤解を招くような発言や態度を取ったために、世間の反感・怒りを買い、大きなダメージを受けた例は少なくありません。

食中毒事件を引き起こした会社のトップが記者に向かって「わたしは寝てないんだ」と発言したのは有名ですが、事が起こってから(あるいは明るみに出てから)その場しのぎのメディア対応に追われると、取り返しのつかない発言をしてしまうものです。

まあ、本音が出たという見方をすればそのとおりかも知れません。
しかし、事件や事故には被害者がいるということ、一人の記者の後ろには何十万、何百万という視聴者や読者(=お客様)がいるということ、さらに、会社の内部には会社がダメージを受けることで直接生活を脅かされる多くの従業員とその家族がいるということを考えれば、トップの軽はずみな発言や態度はけっして許されるものではないでしょう。


たとえトップがメディアからの取材に慣れているからといって、問題発生時に適切な対応ができるとは限りません。
通常の取材では主に新商品や業績などの経済面がテーマになりますが、問題発生時には企業の社会的責任がテーマとなります。
その手の取材に慣れているトップはまずいない筈ですから(いたとしたら逆に怖いです)、普段から企業の社会的責任の視点から問題発生時の対応について検討しておかなければ、そつなく対応することさえ困難になってしまうでしょう。


アメリカでは、メディアのインタビューや記者会見に対応するための「メディアトレーニング」を取り入れている経営者が少なくないようです。
日本でもメディア対応を含めたリスクマネジメントが注目されはじめています。
社会的な影響の大きい企業では、トップマネジメントの一環として、何らかのメディアトレーニングは必要なのではないでしょうか。