千年女優
2002年9月
今敏
「だって私、あの人を追いかけている私が好きなんだもの」
ストーカーの話ではありません。
煽りで「猟奇的・・・」なんて書いてあったので、「Perfect Blue」ノリかと思いきや、その辺の味付けはほんとにサラッとしたもので、全体的には恋愛映画。一人の女性が名も知らない男性を追い続ける、というやり方を間違えたらイタイ柱なんですが、とても上手く見せていました。
既に隠居してしまった大女優の一人の男性への思いの回想録であり、好きな男性を追いかけるために映画業界に飛び込み大女優となっていく様を追いかけたドキュメントタッチというわけではありません。
どちらかというと不思議な世界に迷い込んでしまった少女の物語的に見えてしまうのでしょうが、その世界(映画界)に仕掛けじみたモノはなく、時代は変われど主人公のキャラクターは現在(隠居済み=もしくは少女時代)のそれと大差はなく、壮大さはそれほどありません。その辺がサラッとしていて見やすさにも一役買っているのでしょうか。
この女性は最終的には何処に向かっていたのでしょうか?「だって~」が根幹にあるということで、この女性の人生はそれに有る意味縛り付けられてしまっています。この場合、彼女はそれで幸福なのですが、万が一それが無かった場合が恐ろしいです。これほどある一つの事物に傾倒しうる人間がベクトルを失った状態。
やっぱり猫の首をちょん切ったりしちゃうんでしょうか?
現在、生活している人間の中に、生きるためのモチベーションを維持しつけていられる人間がどれほどいるのでしょうか?全て疑問形なのは私自身見当も付かないからです。移り気な私にはありません。
この作品は、まさにアニメならではなんでしょうね。あれ実写でやったら恐ろしい金額でしょう。時代モノとか近代モノ、SFまで入ったりして。結構盛りだくさん。基本的にアニメはそう言う無茶が通ってしまうのですが、時代がバラバラなのに統一感がある絵というのは難しいのでしょう。サスガです。私は絵が下手くそなのでなおさら。
最近はアニメが・・・、なんていっていると馬鹿にされそうですが、ほんとに全体として凄いですね。作品として、面白い。オサレ雑誌なんかでもバンバン特集されちゃうのも分かります。だって面白いもの。
ちゃんと筋通してやってるなって感じがあります。
まだギリギリで好きな人だけでやってるって感じがあります。最後の楽園みたいな。ただ、ちゃんとお金はなんとかなっているのか心配にはなりますが。
昔言われていた「アニメなんてガキの見るモノだ」ってのが逆転してますね。去年馬鹿売れした某刑事物映画なんて、あれこそガキの見るモノです。あれ、なんだったんでしょう?どうにかならないんでしょうか。もちろん、実写でも素晴らしい日本映画は沢山ありますが、駄目なアメリカ化が進んでしまっているような・・・。
余談なのですが、実家に帰った時にこの映画を見たんですが、何故かテレビが50インチのプラズマになっていました。凄ぇ。ほんとにちっちゃい映画館並ですね、ありゃ。
お金持ちになったら買おう。
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