*** june typhoon tokyo ***

EN VOGUE@Billboard Live TOKYO

Envogue これぞファンキー・ディーヴァス。

 今はガールズ・ヴォーカル・グループというスタイルは珍しくないが、80年代末~90年代前半あたりはこの女性R&Bヴォーカル・グループ(だいたい3~4人組)が雨後のたけのこのように現れていた時期があった。そのなかでもぶっちぎりにトップを走っていたのがアン・ヴォーグ(EN VOGUE)だった。ファッション雑誌『Vogue』から採られた名前の通り、アーバンなスタイリッシュさを持ちながらも、西海岸特有の開放感とゴージャスさを含んだサウンドで瞬く間にスターダムにのし上がったのだった。当時もマセガキでひねくれものだった自分は、“狙った感じのあり過ぎるアン・ヴォーグよりSWVのがバランスって意味では上だよな”なんて生意気な口を叩いたものだが、そんなことをいいながらもしっかりとアン・ヴォーグのアルバムは欠かさず買って何度もプレイしていた覚えがある。

 今回の来日公演は、結成当初のテリー・エリス、シンディ・ヘロン・ブラッグス、マキシーン・ジョーンズに、ロドニー・ジャーキンスのプロデュース作『ローナ』でデビューしているローナ・ベネットを加えた4人組でのステージ。97年に脱退したドーン・ロビンソンでの“4人”ではないが、3人としてはどこか寂しい感じもしていたので、この4人というのは非常に嬉しい。
 ちなみにシンディの姓がブラッグスとなっていることでピンと来た人もいたかもしれないが、このブラッグスとは以前横浜にいたグレン・ブラッグスのハニー、つまり奥さんってことです。グレンは、片手で7つ硬球を持てたりした名実ともにビッグな選手だった。確か、ローズとともに入団したから、その時の横浜の助っ人外国人って最強なんじゃないか、と。引退後はシンディのマネージャーみたいなことしていると聞いたことがあるから、もしかして今回来日してるんだろうか???

 今日はヴァレンタイン・デーということもあって、前も横も後ろもカップル、カップル。周りで1人で来ているのは自分くらいで。(苦笑) メンバーの面々も、“今日はヴァレンタインね。カップルで来た人、どれくらいいる?(会場のあちらこちらで手が挙がる)ウワァーオ!すごいわねぇ!でも(もっと凄いことに)今日は東京のラスト・ナイトよ!”と煽っていた。

 ステージは、左からキーボード、ドラムス、ベースと至ってシンプル。多少、CDに声を被せるようなところもあったかと思うが、中盤以降は全くそういう感じはしなかった。『ファンキー・ディヴァス』(Funky Divas)のオープナー「ディス・イズ・ユア・ライフ」(This Is Your Life)のような出だしを期待したが、最初はバンドによるインストで場をじっくりと盛り上げていく。しばらくして飛び出してきた4人と奏でたのは、前述『ファンキー・ディヴァス』から「ラヴ・ドント・ラヴ・ユー」!当時に比べれば当たり前だが年齢を重ねているわけだが(40代前半くらい?)、衰えというものを感じさせない、むしろ以前より勢いがあるんじゃないかと思うくらいのパッションでスタート。それと驚いたのは、このあたりのヴォーカリストはよく肥えて、というか貫禄がつきすぎるスタイルになってしまわれる方々が多いのだが(苦笑)、この4人は全然太くない。マキシーンがちょっと4人のなかでは…とも思うが、それでも太いっていう感じはなかったし。メンバーはしっかりと体力維持をしているんだろう。二の腕や脚が筋肉質だったし。

 自分が期待していた「ホワット・イズ・ラヴ」(What Is Love)「レット・イット・フロウ」(Let It Flow)「トゥー・ゴーン、トゥーロング」(Too Gone, Too Long)などは演奏しなかったけれど、メドレーで短い尺だったが「ライズ」(Lies)も演ったし、しっかりとアン・ヴォーグ・ワールドを堪能出来る構成だった。
 なかでも圧巻だったのが、中盤に配されたオールドスクール・メドレー。“トーキョー!今夜はダンス・パーティよ!さぁ、立ち上がって身体を思う存分動かすのよ!”とテリー(だっけかな)が言い放つと、テーブル席、ギャラリー席とも総立ち。「ガット・トゥ・ビー・リアル」「リング・マイ・ベル」「ベスト・オブ・マイ・ラヴ」「レディ・マーマレード」……ダンクラ世代、ディスコ好きならいやが上にも腰がくねるキラー・チューンの乱れうちに、会場はあっという間にディスコに変貌したのだった。

En_vogue_2 それにしてもこの4人、入れ替わり立ち代りよく動く。フックの決めでもしっかりと長い手足を伸ばしてポージングする姿は雑誌『Vogue』さながらだし、たとえばテリーがメイン・ヴォーカルを務める時は、残り3人がテリーとは逆側に陣取ったりと、狭いステージながらもエンターテインメントを貫いていた。もちろん真髄の歌唱力は文句なし。ヒップホップ・マナーのフレーズもスムースにこなし、ヴァース、コーラス、ラップ、シャウト、それぞれを容易いものかのように展開させていく。シャウトにおいては、マキシーンのハスキーな渋みが活かされていて、ここぞというところのメリハリ、アクセントになっていた。シンディはおそらく最年長だと思ったが、最年長っていう言葉を使うのをためらうほどの輝きで、心身ともに充実している様子が窺えた。ローナは、ヴォーカルは不安視していなかったが、相性と言う意味でこの4人としてどうかと思ったが、すっかり溶け込んでいて、そんな不安もあっさり杞憂に終わったほど。

 「ドント・レット・ゴー」で妖艶さを見せ付けたあとは、デビュー曲「ホールド・オン」で本編締め。当時、この曲がラジオから流れてきた時、あわててカセットに録音し、CDショップへ駆け込んでいったっけな。(思えばエアチェックしまくってたなぁ…って、エアチェックって今じゃ死語ですか。(爆)) その時のことを思い出させるかのような、イントロ。“ラ~ァァヴィン...ユウーゥ~!”っていうフレーズを聴いたら、背中がゾクゾクときた。ひねくれものの性分でやたらと“感動”を投げ売りするように口にするのは嫌なのだけれども、この時はさすがに身震いがした。脳よりも身体がいち早く反応したというか。この状態がいわゆる巷で連発される“感動”とは異なるかもしれないが、一つの表現として言わせてもらうならば、まさに“感動モノ”であったことには違いはなかった。
 アンコールは「フリー・ユア・マインド」で派手な締め。もう理屈はいらなかった。ただ手を突き上げ、腰を振り、思う存分にグルーヴを体感するだけだったのだから。
 しかしながら、なんとしなやかで強靭な声の持ち主か。さらにメンバーによって生み出されるグルーヴは、艶やかで煌びやかで、美しく輝き、温かい。単にコーラス・ワークと呼ぶのがおこがましくなる…そんな気さえした。

 近年は、やたらと誰しもに“歌姫”という冠をつける傾向にあるが、声も細く抜群といえる歌唱力も持たないのに、何が“歌姫”かと。そう主張する人たちには、彼女らの圧倒的なヴォーカルを聴かせてやればよい。いや、もしかしたら、“歌姫”という称号は圧倒的な歌唱力を持つものにだけ与えられるものではないのかもしれない。リスナーの心を揺れ動かす何か、その瞬間を与えられたならば、そのリスナーにとっては“歌姫”になるのだろう。
 では、アン・ヴォーグはその一つに一緒くたなのだろうか。
 ただ言えるのは、アン・ヴォーグは“ディーヴァス”であるということだ。その“ディーヴァス”がリアルに光臨する瞬間を、今夜目の当たりにしたという事実……それがここにあるだけだ。それが全てを物語っていた。

 最近は、スティーヴィー・ワンダーの新譜『タイム・トゥ・ラヴ』(2005)の「ソー・ホワット・ザ・ファス」(So What The Fuss)のバック・コーラスなどで参加していたけど、そろそろまたオリジナルを出して欲しいところですな。 

◇◇◇
 
<SET LIST>

00 Opening ~Band Instrumental~(People Make The World Go Round)
01 Love Don't Love You
02 No, No, No Can't Come Back
03 My Lovin' (You're Never Gonna Get It)
04 ≪MEDLEY≫
Lies
You Don't Have To Worry
Riddle
~MC~
05 Ooh Boy
06 Whatta Man
07 ≪OLDSKOOL MEDLEY≫
(Intro)For The Love Of Money (Original By The O'Jays)
Got To Be Real (Original By Cheryl Lynn)
Bad Girl (Original By Donna Summer)
Ring My Bell (Original By Anita Ward)
Best Of My Love (Original By Emotions)
I Heard It Through The Grapevyne (Original By Gladys Knight)
Respect (Original By Aretha Franklin)
Lady Marmalade (Original By Labelle)
Tell Me Something Good (Original By Rufus)
Square Biz (Original By Teena Marie)
08 Giving Him Something He Can Feel (Original By Curtis Mayfield)
09 Whatever
10 Don't Let Go (Love)
11 Hold On
≪ENCORE≫
12 Free Your Mind

<MEMBER>
Terri Ellis (Vo)
Cindy Herron Braggs (Vo)
Maxine Jones (Vo)
Rhona Bennett (Vo)
Raymond McKinley (B)
Gordon Campbell (Dr)
Jamie Hawkins (Key)

◇◇◇

En Vogue - Free Your Mind

演出がモロ“シンセ全盛期"=“Everybody Dance Now!”C+C風味だなぁ。(笑)
En Vogue - Hold On

なぜかみんなホイットニー・ヒューストン似を意識してるのではと思うのはオレだけ?(笑)


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コメント一覧

野球狂。
R&B好きは同じライヴに通ず?
http://blog.goo.ne.jp/jt_tokyo
やっぱり、R&Bや黒系好きは同じ場所に引き寄せられてしまうってことでしょうか(笑)。

アン・ヴォーグは自分もガールズ・グループのなかでは1、2を争うくらい好きですね。ドーンの気まぐれには少々やられましたが(苦笑)、メンバーが入れ代わり立ち代わりしても、それでも誰もが“歌える”グループはそういないと思います。

最近も全米ツアーなど活動はしているようなので(シンディ、テリー、ローナの3人ですが)、また来日してもらいたいですし、アルバムも期待したいところです(『Electric Cafe』というアルバムが今年中に予定されているらしいのですが……どうでしょうか)

それはそうと、こちらこそ、駄文オンパレードの拙ブログを楽しんでいただけてありがたいです。
少しでも愉しい音楽生活の助力になれれば、幸いです。
Hide Groove
同じ時間に同じ場所で…Part3
女性コーラスグループの中で個人的に一番好きなグループ、しかもこの日が自分にとってEN VOGUE初ライヴ!
新メンバーローナは、脱退してしまったワイルド系担当ドーンの穴をしっかり埋めていたと感じました。それにしても彼女たち、やはりソロイストとしても歌える個性派のボーカリストが四人で、畳み掛けるグルーヴは、たまらないですよ!

ティーナマリーのカバーには個人的に悩殺されそうな興奮。(チビりそうでした、失礼)
完璧な女性コーラスグループとして君臨していたあの時代に輝き続けた底力は、やはりさすがの存在感!
しかし最近になってストリート感覚をまとったトラックを武器に活躍していたSWV EXCAPE の良さを痛感している次第です。
またJade復活の動きも気になるところ…💨

野球狂。さんとは何度となく同じ時間に同じ場所で、ライヴを体感していたのかと勝手に親しみを持ちつつ、野球狂。さんの音楽への愛情溢れる言葉の数々に舌包み打ちながら、読んでおりますよ!

今後も末長くお付き合い宜しくお願い致します🍀
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