*** june typhoon tokyo ***

KYLIE MINOGUE@幕張メッセ

■ カイリー、20年ぶりに降臨
 
Kylie_minogue_aphrodite_tour


 人間美で圧倒。

 実に20年ぶりとなったカイリー・ミノーグの公演を急遽観賞してきた。会場は幕張メッセ・イベントホール。当日は雨が降る中、今や遅しと入り口前にカイリーを見たさに多くの人が集まった。クラブ・カルチャーに近しいスタンスの楽曲が多いカイリーゆえ、クラブと密接な関係のある、いわゆるゲイ・カルチャーを信奉している人たちが多く見られた。カイリーもそういうことを解かっているのか、バックスクリーンには隆々とした筋肉を持つ男性陣のヌーディティな映像や、ステージ上では同様のダンサーがパフォーマンスも印象的だった。

 前座はm-floからVERBALとMADEMOIRSELL YULIA(マドモアゼル・ユリア)のDJ。最初に16:30頃VERBALが登場、m-floの楽曲やカイリーの楽曲を時折織り込みながらフロアを煽っていく。ベル・ビヴ・デヴォー「ポイズン」のイントロを流した時は「この年代の人~?」と手を挙げさせたりと、フロアを熱くする術は知っているVERBALならではのセットだ。途中で、ピンクのコズミックな感じのドレス衣装を纏ったマドモアゼル・ユリアも登場。しばらくVERBALと二人でステージにいた後、VERBALが退場。ユリアはユニークなマッシュアップも組み込んでいたが、あまり煽ることをせずに淡々と繋げていく感じなので、やや退屈なセットと思われたかもしれない。終盤はカイリーの出番のタイミングを見計らってのDJだったから、ある程度仕方ない部分もあるか。ただ、カイリーのナンバーを流した時には、やはりフロアからも歓声があがる。

 18時20分頃、場内が暗転。ステージは背面に縦長の5面LEDスクリーン、バックの高台から左右と中央それぞれ3本の階段がステージ中央へ向かって降りている。その階段と階段の間に、左からドラム、ギター、ベース、キーボードが配される。ステージ・セットとしては、意外とシンプルな作り。だが、背面のLEDスクリーンと男女ダンサー陣、さらには二人のバックコーラスが加わることによって、そのシンプルさが一気にゴージャスな場面へと転換する。

 ステージ構成はアフロディテ、古代戦士、カーニバル、デヴィル、アラビアン……などの数テーマに分けられ、そのたびにドレス・チェンジしたカイリーが登場する。水中を舞うセクシーな男性たちの映像から、ゴールドを基調とした衣装のダンサーたちが迎えるのは、ステージ高台へせり上がって貝に乗ったカイリー。ボッティチェリのルネサンス期の著名な絵画『ヴィーナス誕生』を彷彿とさせるギリシア神話の世界を、カイリーが神々しく成し遂げてしまった瞬間だ。そして新作『アフロディーテ』タイトル曲から、幕は切って落とされた。貝が女性器を象徴するということ、『ヴィーナス誕生』が海からやって来た成熟した女性像(ヴィーナス・アナディオメネ)ということを考えれば、このステージのテーマは性であり愛だ。愛と性と美、そして時に戦の女神であるアフロディテ、つまり身近な例で言えば、“ミロのヴィーナス”が日本に、幕張の地に降臨したともいえる。

 カイリーの素晴らしさは総合的なプロデュース力、つまり、圧倒的な世界観を披露することだ。さらに、それを小難しいことをせずにキャッチーでダンサブルなミュージックで繰り広げるところに、そのスケールの大きさと伝播力の大きさを感じるのだ。

Kylie_minogue これまで女性や美しさをアピールしてきたアーティストは多くいた。最近ではビヨンセしかり、アリシア・キーズしかり。だが、彼女らとカイリーが異なるところは、ビヨンセらが“女性の強さ”を強調してきたのに対し、カイリーはあくまでも“女性の美しさ”、もっと突き詰めて言えば、“人間の美しさ”を如何に芸術的に、しかしながら、高尚過ぎずに見せるか、というところにフォーカスしていることだ。それはまさしく、人間味溢れる神々の世界、ギリシア神話の世界観を具現化しているのだ。性・生・愛に貪欲であっただろう(言い方を変えればシンプルということも出来る)古代の価値観を、現代の悩める人類に問題提起しているのかもしれない。あくまでも取っ付き易い、ダンス・ミュージックという形で。
 ほとんど裸体の男性が筋肉隆々でセクシーなポージングをしたかと思えば恍惚な表情を繰り返したり、海中でタコの化身になりきったカイリーなどの背面スクリーン映像や、SMとグラディウスを合わせたような衣装を着たかと思えば、イカのような三角頭のギラギラしたコートを羽織ってただ歩くといったダンサーたちなど、人間らしい滑稽さも含有した、艶やかながらも人情のある、人間の喜怒哀楽を表わしたステージだ。視覚と聴覚……五感を駆使して、官能と生命力を伝えていく、そんな使命があるようにも思えた。

 さすがのヴェテランということはあるが、飛び抜けて声量で圧倒するというタイプではない。だが、唯一といっていいアコースティック調で披露されたプリファブ・スプラウト「イフ・ユー・ドント・ラヴ・ミー」のカヴァーでは、時折観客の歓声に微笑みながら、しっかりとした歌唱力を披露してくれた。決してヴィジュアルやトリッキーなことだけでは、やってきていない……という矜持がチラリと見えた瞬間でもあった。だが、それは誇示ではなく、あくまでもストレートにこの心の声を届けたいという気持ちからの歌唱だったと感じた。

 ヴォルテージ……そもそも最初からヴォルテージは上がりっ放しなのだが、さらに一体化したのが、やはり大ヒットの「ラッキー・ラヴ」だ(次の曲は“オールド・ソング”と紹介)。観客から返って来るコーラス・フレーズにはカイリーも嬉しく驚いたようで、女神を気取って出てきた当初とは違った、キュートな表情ばかりを見せていたのが印象的だった。その興奮の冷め遣らぬまま「プット・ユア・ハンズ・アップ」で本編は幕。

 アンコール・ラストは「オール・ザ・ラヴァーズ」。全ての愛する人たちへカイリーが送る普遍の愛のメッセージだ。高台へ登場した円柱ピラミッドへダンサーたちの手を介しながら頂上へ上り詰めるカイリー。同時に金色の紙吹雪。愛と美の伝道師カイリーが海から現れて、愛を求める人々=観客たちに愛を施し、天上へと帰還していく……カイリーによるヴィーナス・パフォーマンスは、観客に喜びと刺激を与えて幕を閉じることとなった。




◇◇◇


<SET LIST>

00 OPENING/INTRODUCTION
01 APHRODITE
02 THE ONE
03 WOW
04 ILLUSION
05 IN YOUR EYES
06 I BELIEVE IN YOU
07 CUPID BOY
08 SPINNING AROUND
09 GET OUTTA MY WAY
10 2 HEARTS (Original by Kish Mauve)
11 WHAT DO I HAVE TO DO
12 CONFIDE IN ME
13 CAN'T GET YOU OUT OF MY HEAD
14 IN MY ARMS
15 LOOKING FOR AN ANGEL
16 THERE MUST BE AN ANGEL(PLAYING WITH MY HEART)(Origial by Eurythmics))
17 LOVE AT FIRST SIGHT
18 CAN'T BEAT THE FEELING
19 IF YOU DON'T LOVE ME(Original by Prefab Sprout)
20 BETTER THE DEVIL YOU KNOW
21 BETTER THAN TODAY
22 I SHOULD BE SO LUCKY
23 PUT YOUR HANDS UP
≪ENCORE≫
24 ON A NIGHT LIKE THIS
25 ALL THE LOVERS


◇◇◇


Kylieaphroditetourverbal

 こちらは前座のVERBAL(ヴァーバル)のDJプレイの様子。

 カイリーは終演後、ツイッターにこんなメッセージをつぶやいてくれました。

@kylieminogue

Tokyo...you were a*m*a*z*i*n*g!!!!!! so emotional so fun so beautiful!!!!


 ワオ!(笑)

 ほぼ最前列に近い場所で観られて、こちらこそソー・アメイジング!!ですYO。
 

◇◇◇

 そして、カイリーとVERBALとのコラボ曲「ウィー・アー・ワン」。

Kylie Minogue × VERBAL / We Are One


 


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コメント一覧

野球狂。
nanakoさん、どうもです。
http://jtt.blogzine.jp/jtt/
nanakoさん、どうもです。

カイリー行ったのかいりー?
……
やっぱりオーストラリア繋がりってことでしょうか。
次回は、世界ツアー同様、ド派手なセットでパフォーマンスしてもらいたいですね。

ところで、
こちらは相変わらず適当に生きています。
痩せないと会えないらしいから、早く元のスリムなnanakoさんに戻ってください。(爆)

nanako
久しぶり!
久しぶり!
私もカイリー行ったよ。
しかも同じ日。後ろの方だったけどね。

カイリー可愛かったね~
また日本に来てくれないかな??
ところでお元気?
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