*** june typhoon tokyo ***

Especia@HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1

 重ねた成長に見合わないジレンマも、明日に高く飛翔するための礎。

 2015年2月に『Primera』でメジャー・デビューを果たした大阪・堀江系ガールズ・グループ、Especia。10月4日に地元・大阪からスタートした2015年の集大成といえる全国ツアー〈“Estrella”Tour 2015 〉も終盤を迎え、来年1月の大編成バンドによるツアー・ファイナルまで全23公演のうち、残すところもあと僅か。そのラスト5となる埼玉公演を観賞。会場は熊谷にあるHEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1で、最終的には6、70名ほどの観客が集ったと思う。

 彼女らの生のステージを観るのは7月のタワーレコードでのイヴェント(Especia@TOWER RECORDS渋谷/新宿)以来。ライヴとなると、6月の若旦那との対バンライヴ〈バーサーズー〉(バーサーズー@原宿アストロホール)になるだろうか。
 当初はその〈バーサーズー〉第2弾が11月に行なわれるはずだったが、諸事情によって中止に。6月の〈バーサーズー〉では若旦那が「アイドルのフィールドで収まってないで、こっち(メインストリーム)へ上がってこい」と啖呵を切ったが、そう捲し立てた側から中止の申し入れがあったようだ。その啖呵を受け流した訳ではないだろうが、Especiaはアイドルのフィールドから主戦場を移すまでには至っていない。シングル「Aviator/Boogie Aroma」を7月にリリースした後は、ステージを重ねながら次のアルバムを制作中とのこと。そんな彼女らの成長を確かめると同時に、新たな発見を期待しながら、今や遅しと開演の時を待っていた。

 オープニングSEのアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌から雪崩れ込むようにしておなじみの「Intro」(from“GUSTO”)へ繋ぐと、Especiaが登場。「We are Especia~泣きながらダンシング~」の前半部分から「ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)」へ。前半は一気にフロアの熱を上昇させる狙いが見えたセット・リストで、ペシスト(Especiaのファン)たちもその思いに呼応し、コールを響かせ、歌い、身体を揺らしていく。

 「シークレット・ジャイヴ」からは徐々にギアをローに落としながら、「Bay Blues」「雨のパーラー」「West Philly」とメランコリックなモードへと突入。おそらく冒頭と終盤にノリの良い楽曲を連続させるため、中盤にミディアム~スロー・テンポの曲やバラードを置いたのだと思うが、結果的にその流れが全体のメリハリと後半のクライマックスへの加速度をもたらすことになり、観客の熱度を高めていた。セット・リストは森絵莉加が担当。最年少の彼女らしい勢いを重視したフレッシュな構成が、非常に快活でパワフルなステージへと導いたのだろう。

 この日のステージで目(耳)を奪ったのは彼女らのヴォーカルワーク。特に「Mount Up」ではフックでこれまでにないハモリを披露していたが、冨永悠香、脇田もなり、森絵莉加のメイン・ヴォーカルと三ノ宮ちか、三瀬ちひろのコーラス・パートとが絶妙なバランスで声圧を高め、重層的なコーラス・ワークを生み出していた。声量のある冨永悠香の声色がやや強調されていて、メインのメロディラインが若干押され気味だったにせよ、脇田もなりがバランサーとなってメインとハモリとの橋渡しをすることで、ヴォーカルの奥行きを生み出すことに成功。このヴォーカル・アレンジにハッとした観客も少なくなかったのではないか。

 また、メイン・ヴォーカルの3人は歌唱に独自の彩りを加えようとしていた節も感じられた。「West Philly」や「Bay Blues」などミディアム~スローのメランコリックなバラードでは冨永悠香がややブルージィな声色で“タメ”を作ったり、「シークレット・ジャイヴ」では森絵莉加がチラチラっと艶やかさを含んだ揺らぎを意識した歌唱を時折見せるなど、自分たちなりに詞世界を咀嚼し情感を乗せたヴォーカルにところどころでチャレンジしているようにも思えた。
 三ノ宮ちか、三瀬ちひろの二人はそれほどソロ・パートが多くはないが、丁寧に歌いかける意識が以前より深まったようだ。ピッチを気にするあまりに声が弱くなったり、全体のバランスを崩したりということもあまり見られなかった。

 ただし、テンポが速めのアッパーの楽曲の際にはノリの良さも手伝って気にならないが、冒頭から一気に駆け抜けたこともあって、「嘘つきなアネラ」から「West Philly」あたりまでのミディアムからスローへテンポが落ちる楽曲くらいになると、ややピッチの不安定さもちらほら。言葉が詰め込まれていない譜割の曲は特にピッチやバランスの崩れが如実に表われてしまうので、そうならないための集中力とスタミナ、注力する加減が今後の課題にもなるだろうか。

 とはいえ、これまでと異なるのは、場数という経験を重ねたことで蓄えてきたその修正力。以前は、誰か一人のピッチやコーラス・ワークが崩れてしまうと立て直せずに終わったり、周囲にも伝播して全体のバランスが崩れたりしたこともあったが、個々のスキルと力みのなさが修正への余力を生んでいて、それがステージ上で“純粋に楽しむこと”へも繋がるという好循環となっている気がした。

 さて、「Mount Up」と同様、この日のトピックとなり得るのが「Boogie Aroma(PellyColo Remix(仮))」ということには異論はないだろう。おなじみPellyColoの手腕は唸らされることがあっても“ハズし”がないことは承知だが、この「Boogie Aroma」のリミックスでも期待通りに清爽に躍らせる仕様へと衣替えさせる好演出。何よりステージ上で歌い踊る5人の表情を見ていれば、このリミックスの是非は自ずと解かるというものだ。

 終盤は「Security Lucy」での脇田もなりの“Wow”の声で一段とギアが入ったようで、さらなる加速度でフロアのヴォルテージが高まっていく。「Aviator」「ナイトライダー」「No1 Sweeper(necio edit)」の3連発は本編クライマックスに相応しい展開で、ぺシストの身体や鼓動をいやがうえにも躍らせていた。

 しかしながら、彼女らの成長度と比例して集客が増えている、という訳ではない。この会場のキャパシティはスタンディングで380名。その数字がおおよそ正しいのであれば、残念だがその3分の1にも満たないというのが、現在の立ち位置だ。熊谷は東京都内から1時間強と決して近くはないが、絶望的に遠いというロケーションでもない。ラストの東京・新木場でのフルバンド・ワンマン公演まで約1ヵ月という時期もあって当公演を“パス”した人たちが多かった……ということも考えられるが、それでも東京近郊としての客入りとしては一抹の寂しさを覚えてしまったのも事実だ。

 彼女らはアイドルにどっぷり浸かる訳でもなく、アイドルから抜け切る訳でもなく……という微妙な立ち位置にいる。それがかえって面白いというのも一理あるだろう。ただし、それはあくまでも恣意的にそのエリアを狙っていれば、という話。個々やグループとしてのスキルアップは日進月歩していると思うが、“ガールズ・グループ”として進むべきベクトルはまだ不透明で、佇立しているというのが正直なところなのかもしれない。
 ただ、それがマイナスへ働くのか、プラスへと昇華されるのかは、今後次第だろう。以前、述べたと思うが、成長には必ず停滞期があり、もがきあがく時は訪れる。視野が狭まってしまい、不安と焦りばかりや過度な楽観主義に陥ったりすれば、現状の不安がさらに倍加して襲ってくるかもしれない。苦しい時こそ自らを丹念にチェックし冷静に物事を考えられる時。ツアーも終盤戦、目の前にあるステージに常にチャレンジして、常に自己最高のパフォーマンスを上書きしていくくらいの意気込みでラストの東京・新木場STUDIO COASTまで畳み掛けていってもらいたい。

 “必ずここへ帰ってくると 手を振る人に笑顔で応え……”とオープニングSEの「宇宙戦艦ヤマト」(Theme of Star Blazers)の一節にもあるように、“Protostar(原始星)”=大阪公演から始まった旅も終わりが近づいている。来年1月17日の東京への“帰還”まであと僅か。これまで培った揺るぎない信念で輝かしい“帰還”日を迎えたいところだ。

◇◇◇
 
<SET LIST>
00 INTRODUCTION(SE:Theme of Star Blazers/INTRO from“GUSTO”)
01 We are Especia~泣きながらダンシング~(First half)
02 ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)
03 Funky Rock
04 アバンチュールは銀色に
05 Mount Up
06 シークレット・ジャイヴ
07 嘘つきなアネラ
08 Bay Blues
09 雨のパーラー
10 West Philly
11 アビス
12 海辺のサティ
13 Sweet Tactics
14 Boogie Aroma(PellyColo Remix(仮))
15 Security Lucy
16 FOOLISH(12"Extended Ver)
17 Aviator
18 ナイトライダー
19 No1 Sweeper(necio edit)
≪ENCORE≫
20 オレンジ・ファストレーン
21 YA・ME・TE!(Dr Ver)
22 We are Especia~泣きながらダンシング~(Second half)

<MEMBER>
Especia are:
冨永悠香/Haruka Tominaga
三ノ宮ちか/Chika Sannomiya
三瀬ちひろ/Chihiro Mise
脇田もなり/Monari Wakita
森絵莉加/Erika Mori

◇◇◇





























































◇◇◇

 音が最悪ですが、雰囲気だけでも。


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