大阪・堀江系ガールズ・グループ“Especia”(エスペシア)のツアー〈“Mucho GUSTO Especia”2014 Tour〉の横浜公演を観に行く。台風の影響が心配されたが、既にチケットはソールドアウトということで、熱気溢れるライヴとなった。
会場のB.B.STREETは関内駅前の商業施設“セルテ”の12階にあるライヴハウスで、デパートのレストラン街の一角にあるような感じのかなり狭い箱だ。室外の廊下やエレベーターのエントランスに、今や遅しと待ち構えるファンの姿でごった返していた。
オープニングアクトは元BiSのDJ テンテンコ。80'sテクノ風の浮遊感漂うオルタナティヴなエレクトロを流していたが、テーマがイマイチ解からず。特に観客を煽る訳でもないので、穿った見方をすると、元アイドル(といってもBiSだからその意味合いも違ってくるとは思うが)の若い子でもこんなマイナーな音楽プレイ出来るんだぜという自己満足プレイに思えなくもない。「最後に歌います」と言って1曲歌って終えたが上手くもないし(というか下手)、正直言うと後半は退屈の一歩手前だった。これは自分が彼女が初見だったことも関係するかもしれないが、他のツアー会場のゲストと比べるとどうだったのだろうか。ただ、その良く言えば“緩さ”が本編への熱へと繋がったといえば、効果的と言えなくもないか。
さて、Especia。代官山LOOPでの“Mixed Up”以来(その時の記事はこちら)となるが、そのイヴェントから当ツアーとでは劇的な変化があった。それは前回は杉本暁音が在籍したEspeciaとしての東京最終公演で、このツアーは杉本暁音脱退後の5人編成で各地を巡る新生“Especia”としてのステージだということだ。杉本が抜けた穴をどう埋めるのか。歌唱配分やパート割、ダンスなども5人としてのものを新たに構築していかなくてはならない。10月4日の脱退以降、どの程度の完成度なのか。やはり穴は大きいままなのか。そのあたりをテーマに観賞することにした。
結論から言うと、この5人編成でのEspeciaは今後のグループとしての成長の加速をつける変化の一つになり得るということだ。元来、杉本暁音は他のメンバーの毛色とは少し異なるところもあったが、かえってその染まらない個性ながらグループに溶け込むという不思議な感覚をもたらしていた。彼女自身は歌うということに強い意識を持っていたと感じたが、実力としてはリーダーの冨永悠香、脇田もなりを脅かす存在にはなれていなかったのが率直なところ。最年少の森絵莉加の急成長もあって、グループとしても本人としてもジレンマがあったように思う。そういう意味では、グループにとってこの時期の脱退というのはむしろプラスに働くのではないか。もちろん、6人としてのEspeciaに対しての感慨やノスタルジーはあるだろう。ただ、個人的にはアイドルではなく“ガールズ・グループ”と名乗っている以上、歌唱力やパフォーマンスもそれ相応でないとならないという想いがあるので、この変化が“吉”と出る可能性は高いと感じた。
最も変化が現れたのは、これまでコーラスやダンスに力点が置かれていた三ノ宮ちか、三瀬ちひろの歌唱パートが増えたこと。もちろん、歌唱力においてはまだまだ発展途上だが、グループとしてのヴァリエーションが広がることは確か。当面は彼女らの声質、声域に合ったパートを中心に任されるのだとは思うが、ソロ・パートを担い歌唱への意識がいっそう芽生えていくことで、グループとしての奥行きや現在メインを張る二人、冨永、脇田への下支えにもなるのではないか。
次に、まだ数曲ではあるがハモリ・パートが増えたこと。厚みをもたせることが出来る歌が増えることは、歌える楽曲の選択肢やアレンジにも多く対応出来るということ。ステージではメンバー全員が阿吽の呼吸でハモっているところまではいかずに疑心暗鬼的な要素がちらつくが、これもこのツアーで経験を重ねていくことで、徐々に出し引きを覚えていくだろう。
そして、これらの歌唱の土台の底上げによって、エース格の二人、冨永と脇田の向上心を生み出すことにも成功しそうだ。以前、冨永は多彩な変化球を持つがコントロールに波がある一方、脇田は球種こそ少ないがズバリと決める持ち球を持っているという記事(ネギリリペシア@O-EAST)を書いた。その評価は変わってはいないが、この5人編成への流れやメンバーの歌唱意識の増加が、二人それぞれの歌唱で引っ張るというリーダーシップや責任感へと促しているような気がする。特に冨永はこれまでリーダーとしての責任感を全うしなければという思いが強すぎて、やや空回りする不安定さも散見されたが、底上げによるグループの一体感の向上によって、僅かではあるがステージングに余力を持ちはじめ、歌唱アレンジなどにもよりチャレンジしていけるようになるのではないか。
脇田はパンチの効いたインパクトのある歌唱ながらもキュートなヴォーカルという好素材をさらに活かすべく、冨永とは異なるアプローチで歌唱を引っ張ろうとする気持ちが増しているはずだ。声域が決して広くはない彼女らにとって、やや低くても安定を保つ脇田の声はグループの存在の有無を左右するような不可欠な要素なのは間違いない。それが切磋琢磨することで、さらなるグルーヴを生み出すことが出来るはずだ。
おそらく5人になってからだと思うが、冨永と脇田がステージ中央で背中合わせで歌う場面がある。それが現在のグループとしての核ということを証明しているように思えてならなかった。また、メンバー二人ずつがお互いに向き合って歌う場面も。特に三ノ宮、三瀬が歌唱パフォーマンスに一歩踏み出し始めた表われでもある。森はキレが一番だが、まだ若さで突っ走っているところが大きいのも事実。とはいえ、それも(ケチャ)パートに快感を覚え、場数を踏むことで垢抜けたこともあり、そのストレートなキレが彼女のスタイルとして定着しつつある。その意味からも、ようやくガールズ・グループとしての素地が整いつつあるような気がした。
アイドル“楽曲派”と言われてはいるが、いつまでも楽曲“だけ”に頼っていく訳にはいかない。その観点からも、この5人でのツアーは彼女らの今後の試金石となるものに違いない。このツアーのラストには、Especia史上最大のキャパシティとなるO-EAST公演が待ち受けている。フル・バンドによるステージというその公演までどれほどの成長を見せるか。楽曲だけじゃない本当の意味での“楽曲派”として飛躍出来る素地を固められるかどうか。このツアーで多くの経験をして、その成長ぶりを見せるべく東京に戻ってきてもらいたい。
◇◇◇
<SET LIST>
≪Opening Act≫
DJ テンテンコ
≪Especia≫
01 Intro(from GUSTO)
02 No1 Sweeper(Necio edit)
03 ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)
04 スカイタイム
05 オレンジ・ファストレーン
MC
06 アビス
07 L'elisir d'amore
08 嘘つきなアネラ
09 BEHIND YOU
MC(海辺のサティ(PellyColo Remix))
10 Mount Up
11 FunkyRock
12 FOOLISH
13 パーラメント
14 海辺のサティ(va Bien edit)
15 アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver.)
16 きらめきシーサイド(va Bien edit)
17 Outro(from GUSTO)
≪ENCORE≫
18 YA・ME・TE!(GUSTO Ver.)
19 ナイトライダー
20 No1 Sweeper(Necio edit)
21 ミッドナイトConfusion
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