*** june typhoon tokyo ***

ERIMAJ@COTTON CLUB

■ エリマージ@コットンクラブ

Erimaj





 ニューヨーク出身のジャズ・ユニット、エリマージの来日公演(TheDayTheSunRoseTwiceTOUR)を観賞。会場は東京・コットンクラブ。二日目の2ndショウ。自由席は満席、指定席もほぼ埋まるなかで、ニューヨークの最先端ジャズが東京の夜に響き渡った。

 現代のヒップホップ世代による現在進行形ジャズの最前線ユニットということで“ロバート・グラスパーに続く……”といった紹介もされる彼ら。ロック、ソウル、ヒップホップなどを融合したジャンルレスなジャズを聴かせるという意味ではロバート・グラスパーやデリック・ホッジ、クリスチャン・スコットらと形作るムーヴメントに乗ってはいるが、その実はロバート・グラスパーとは対極に位置するような解釈のサウンドのようだった。

 エリマージはリーダーのジャマイア・ウィリアムスのファースト・ネームの逆さ綴り(Jamire→ERIMAJ)を冠したユニット名からも推察されるように、ジャマイアのドラムが軸。キーボードのコーリー・キング、ギターのマシュー・スティーヴンス、ベースのアラン・ハンプトンが奏でる音を取りまとめ、浮遊と幻想の空間を創り出していく。ややもすれば、自己満足的でもあり、非常に難解な音楽とも取られがちなのかもしれないが、静寂から繰り返されるミニマルな音が次第に壮大なスケールへと昇華していく展開は、音を重ねていくごとに脳内にジワジワと刺激を与え、恍惚をもたらしていく。

 特にベースとジャマイアが鳴らすスネアが創り出す重厚なボトムの主張が強く、そのあたりがヒップホップ世代の解釈といわれるゆえんか。アルバム『コンフリクト・オブ・ア・マン』の「ブラック・スーパー・ヒーロー・テーマ・ソング」などは前述のロバート・グラスパーあたりとの親和性も感じられるが、ロバート・グラスパーがキーボードなのに対し、エリマージはジャマイアのドラムが軸。ウワモノやメロディを鳴らすロバート・グラスパーに対し、ビートとリズムで構築するジャマイア。そういった観点から考えると、ロバート・グラスパーというよりもザ・ルーツに近い感じも。ボトムが強いトラックは、彼らはフロウしないが、ラップを乗せたら合うと思うし、ザ・ルーツの肝もドラムのクエストラヴであるから、ジャマイアのドラムが軸のエリマージとは近似性があると思う。

 とはいえ、生み出される音たちは、ヒップホップというよりもポスト・ロックに近いか。ミニマル・テクノな部分もある。イメージで言うと、北欧あたりのキーンとした冷たい空気が張る波の穏やかな湖上に水蒸気が立ちのぼり、次第に霧やもやが浮かび上がってくる幻想的な景色が脳裏をかすめるような。かと思えば、レッド・ツェッペリンの「移民の歌」でのズンドコしたボトムのリフのような腹にズシリと響く重低音を繰り広げたり、時にはフュージョンのような“まとわりつかない”サウンドを奏でてみたりと、ジャズの即興性よりも繊細に突き詰めて構築された現代音楽/実験音楽的な、肌というよりも細胞で、奥底に眠っている遺伝子を発揚させるようなアプローチとでもいえるか。

 これはもう“エリマージ”という唯一無二の世界観でしかなく、“ジャズ・ミーツ・ヒップホップ”的な安易な解釈で体験すると確実に裏切られるというステージ。この日はほぼ満席ではあったが、初見の人も多かったようだ。話題となったJ・ディラのカヴァー「ナッシング・ライク・ディス」のような楽曲ばかりを期待していた人は、多少難しかったのかもしれない。アルバム・タイトル曲「コンフリクト・オブ・ア・マン」や「フォー・ユー(フォー・フー?)」などはヒップホップのビートに根差したトラックだったが、それ以外は日常と非日常を彷徨わせるような酩酊感が覆う音空間。好きな人にはたまらないが、初見の人も多く(おそらく招待が多かったはず)、1日2ステージで3日間開催がすべて(好事家たちで)ほぼ満席になる構成かと言えば、それはやや厳しいものだったと言わざるを得ない。
 とはいえ、個人的には、ヒップホップからフュージョンまでの新たな(ジャズらしくない)ポスト・ロック的な解釈を体感出来、今後も注視したいユニットだと感じた。もう少し“歌モノ”を入れてくれるとさらに嬉しいところだが。

 余談だが、途中で退席する男女カップルが1、2組いたようなのだが(離席したまま戻ってこなかったので)、仮にデートだったとしたら、エリマージのステージは九分九厘いわゆるデートには向かないと思うので、これから考えている人は止めておいた方がいいと忠告しておく。(笑)

◇◇◇

Erimaj_jamire

 
<MEMBER>

Jamire Williams(ds,vo)
Corey King(key,tb,vo)
Matthew Stevens(g)
Alan Hampton (b,g,vo) 

◇◇◇

ERIMAJ-Conflict Of A Man

ERIMAJ - Social Life


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