*** june typhoon tokyo ***

Elle Varner@Billboard Live TOKYO


 エレガントでソウルフルなアーバン・ナイト。

 “ポスト・アリシア・キーズ”と注目を浴びてデビューし、90年代に“クワイエットストーム”“レトロヌーヴォー”のシーンで活躍したバイ・オール・ミーンズのジミー・ヴァーナーとマイクリン・ロデリックを両親に持つ才媛、エル・ヴァーナーの公演を観賞。2013年1月の公演(その時の記事はこちら)以来のビルボードライブ公演。2ndショウ。

 前回(2013年1月)のビルボードライブ公演とは変わって、今回はバンド・セット。左からギターのエドワード・ビアンコ、ドラムのアーロン・モンロー、ベースのエマニュエル・ワシントン、右にキーボードのデイヴィッド・ドレイクの布陣。バンド・メンバー全員が黒の“F**K IT ALL”とプリントされたTシャツを着ている。呼び込み後にエル・ヴァーナーが登場。ドレッシーなアップのヘアスタイルに白地に緑をメインにした柄模様が入ったワンピースミニ(黒いスパッツが見えるくらいなミニワンピ)という出で立ちで中央のマイクの前へと歩を進めた。

 開演直後はもともとハスキーな声質とはいえ、ややかすれ気味なところもあったが、新曲の「コールド・ケース」「ドント・ワナ・ダンス」でウォームアップ(随分と贅沢なウォームアップだが)。続く「オンリー・ワナ・ギヴ・トゥ・ユー」で観客ともどもワンランクギアが上がり、ヴォルテージが急上昇。まだアルバムはデビュー作『パーフェクトリー・インパーフェクト』のみのリリースだけに、彼女を一躍注目の的にさせたこの楽曲が演奏されれば、フロアも熱を帯びるのは当然なこと。むしろ、ラストやアンコールにこの曲を残しておくようなことはせず、あっさりと前半に披露してもまったくステージのクオリティが落ちないところが、彼女が持っている実力と魅力なんだろう。華やかさをまといながら、上記の「オンリー・ワナ・ギヴ・トゥ・ユー」では本来J・コールが担当するラップ・パートをヒップホップ・マナーでフロアを煽るなど、両親から受け継がれたメロディアスな美意識やソウル・マナーに自身が身に付けたであろうヒップホップのセンスを巧みに融合させた表現力で“エル・ワールド”を彩りづけていく。
 
 バンド・サウンドにおいては、ドラムが甲高い乾いた音質でメロウなメロディとやや合わないところも感じたが、イントロで大上段に構えてフェイクを決める「アイ・ドント・ケア」あたりから全体的にまとまるようになり、あまり気にならなくなった。
 その後、エタ・ジェイムスのカヴァーでのヴィンテージ感や「ソー・フライ」ほかで披露したギター弾き語りでのアコースティック・ヴァージョン、「フ**ク・イット・オール」の途中でアリシア・キーズ「ノー・ワン」のフレーズを差し込むなどヴァラエティに富んだ演出で、単調な展開にさせない工夫も随所に見られた。

 また、表情も非常に豊か。押し殺すように唸った顔を見せたかと思えば、フロアを煽るようなエキサイティングなパフォーマンス、ソウルフルに歌い上げてオーディエンスの耳目を集める一方、自らがたまらず踊ってしまうようなファンキーなステージングなど、音楽をエンジョイしている姿にオーディエンスもついつい乗せられてしまうようだった。かといって、闇雲に叫び飛ばしたりする訳ではなく、どことなくエレガントな雰囲気を保ちながらファンキーなグルーヴを伝達しているのは、両親のDNAが影響しているのだろうか。気品があるお嬢様という生真面目さとは異なるスタイリッシュなパフォーマンスは、彼女に根差している真の意味でのR&Bをしっかりと咀嚼しているからこその芸当なのだと感じた。もちろん、恋に仕事に大忙しといった海外ドラマの主役にもなれそうなルックスや仕草も影響しているだろうが。

 本編ラストの「リフィル」はケルト風のストリングスが入る、一聴すると可憐なナンバーだが、ここではヴォルテージをアップさせるようにリアレンジしてファンキーなエンディングに。アルバムとは全く異なる演出でのパフォーマンスに、ステージアウトするやいなやアンコールの拍手が鳴りやまなかったのも頷ける大団円だった。

 アンコールは2曲。軽快なビートが走る「サウンド・プルーフ・ルーム」に続き、エルが“パパさん”といって父親、ジミー・ヴァーナー(以前よりもかなり恰幅がよくなっていました…笑)を招き入れて、「ノット・トゥナイト」で幕。曲中で“マイ・ネーム・イズ・エル”と歌うソウル・ナンバーだが、改めて“エル”と名乗る必要がないほど、存在感を大きく増してやり遂げたステージだったのではないか。

 この日も数曲披露してくれたが、近々新作のリリースも予定されているはず。次は楽曲が増えたなかでどのようなステージ構成を組んでくるのか、さらにどんな成長を遂げているのか……その期待に応えてくれる姿を早く知りたいと感じさせた、上質な一夜だった。

◇◇◇

<SET LIST>
00 Introduction
01 Cold Case
02 Don't Wanna Dance
03 Only Wanna Give To You
04 I Don't Care
05 Little Do You Know
06 I'd Rather Go Blind(Etta James Cover)
07 Band Interlude
08 So Fly(Acoustic Ver.)
09 Nothing(Acoustic Ver.)
10 F**k It All(including Phrase of“No One”by Alicia Keys)
11 Refill
≪ENCORE≫
12 Sound Proof Room
13 Not Tonight(with Jimmy Varner)

<MEMBER>
Elle Varner(vo)
David Drake(key)
Emanuel Washington(b)
Edward Bianco(g)
Aaron Monroe(ds)

Jimmy Varner(key)

◇◇◇

Elle Varner feat. A$AP Ferg - Don't Wanna Dance


Elle Varner - Only Wanna Give It To You ft. J. Cole









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