*** june typhoon tokyo ***

Gabriel Garzon Montano @代官山UNIT

 初来日公演は、ルーツにも寄り添ったモダン・ヴィンテージなソウル・セッション。

 ドレイクの「イフ・ユーアー・リーディング・ディス、イッツ・トゥー・レイト」にて「6 8」がサンプリングされ、メイヤー・ホーソーンやレニー・クラヴィッツ(欧州ツアーのサポートアクトも務めた)、ジャイルス・ピーターソンらから高い評価を受け注目された米・ニューヨーク出身のマルチアーティスト、ガブリエル・ガルゾン・モンターノの初の単独来日公演があると聞き、時間をやりくりして一路、東京・代官山UNITへ。19時開演からの約40分間はオープニングアクトとして日・英・タイの血を引く仏・パリ出身のDJ/オーガナイザー、タケル・ジョン・オトグロことTJOのDJプレイによる心地良いグルーヴがフロアを満たすと、自身が奏でるキーボードとドラムというミニマムな編成でステージの幕が開けた。

 ニューヨーカーとはいえ、コロンビア人の父とフランス人の母を持つモンターノ。その出自からの影響も窺える単なるR&B/ネオソウルではなく、フレンチ的な洗練性とカリビアンな快活さがところどころに見え隠れするクセのある歌唱やリズムが耳を捉えていく。アフロビート集団やファンク・バンドでの活動経験もあり、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやプリンス、ディアンジェロあたりの影響も頷けるファンクネスを受け継ぎながら、ルックス同様にエキゾチックなヴォーカルワークやトラックメイクで、ジワジワと胸の内に躍然たる鼓動を呼び起こしていく。

 変則的なクラップとヴィンテージ感に包まれるトラックが耳に残る「サワー・マンゴ」で自身の世界観への扉をゆっくりと開くようにいざなうと、ラテンヨーロピアンの薫りが漂うセクシーな「ザ・ゲーム」へ突入。やおらステージを降りると、オーディエンスのフロアの中へ。モンターノを中心に輪が出来、“トントントントン”のコール&レスポンスでヴォルテージも急上昇。この粋な演出にオーディエンスも一挙にステージとの距離を縮めたように感じられた。

 「ロング・イヤーズ」はアウトロのファルセット気味のコーラスをはじめ、内省的なメロウ・ファンクといったテイストはディアンジェロに近いか。直接的というよりも内から沁み出してくるようなパッションを官能的なヴォーカルで表現すると、続く「ミー・アローン」では美しいメロディの上をささやかにファルセットがなぞるという郷愁と寂寞の狭間を彷徨うような何とも言えないメランコリックな世界が横溢。そうかと思えば、ポコポコと跳ねるビートの上でスムースなソウルネスを展開する「エヴリシング・イズ・エヴリシング」で心地良いグルーヴを生み出してオーディエンスの身体を揺らせるなど、さまざまな背景や要素を抽出しながら、クールな佇まいと時折垣間見せる人懐っこさの絶妙なバランスで、ミニマムな編成を感じさせない奥行きの深いステージを構築していく。

 ドラムビートと重なり合うにつれてサウダージ的なムードが漂う「ボンボ・ファブリカ」、さらに侘しさを強調して静寂の波を泳ぐようなスキャットが響きわたる「6 8」、ミステリアスで妖艶なムードに包まれる「ナエジャ」と繋いだ中盤では、出自と共に多角的にさまざまな音楽性を吸収する資質も醸し出す異国情緒の空気で満たすと、新譜『ジャーディン』の核ともいえる「クロール」を投下。フック直後に挟み込むいななくようなうめき声はプリンスのそれで、ミディアム・スローながらもファンクネスが加速度をつけて伝わってくる。オーディエンスの熱も高まるばかりだ。

 しかし、そのまま勢い高めていくのではなく、次に演奏されたのは亡き母への想いを歌った「プア・ママン」。オルガン風の音色で奏でる哀切なメロディと気怠さを催すギターが絡み合うなかで切々と歌う姿は、レクイエム的といってもいいか。歌唱に表情が映りやすい歌い方ゆえ、いっそう悲壮感がひたひたと伝わってくる。このあたりの表現力は、表情豊かなラテンの遺伝子が巧みにさせているのかもしれない。

 本編ラストは物憂げなムードからより戻しての「キープ・オン・ランニング」。これで1st EP『Bishouné: Alma del Huila』収録曲を全て演奏したことに。ヴィンテージなムードのなかで繊細な心情をセクシーな歌唱で綴ったモダン・ソウルといった趣は、派手さはないが時間を追うごとに余韻が増すような音楽性で、過度な煽りもないパフォーマンスとの相乗効果も。アンコールは新譜『ジャーディン』収録の「マイ・バルーン」。乾いた空気と温暖な陽気が入り混じるカリブ沿岸に晴れわたる秋空といったイメージが似合う曲で、終盤はキーボードへ戻っての弾き語りに。
 ここで終わりかと思いきや、オーディエンスの拍手に応えて、即興でラテン曲をスペイン語にてほぼア・カペラで披露。父がコロンビア人というルーツに添った演目でショウの最後を締めくくったところは、彼が持つアイデンティティの一つを表現したともいえそうだ。

 ソウルネスを追求しながら広範囲的に音楽性を吸収するところは、なるほどメイヤー・ホーソーン同様だが、ナードやマニア的に混在させるのではなく、ルーツであるラテンやヨーロピアン的なスタイリッシュを包含しているのかモンターノの特色。官能的かつ人懐っこいヴォーカルワークも相まって、この初来日公演でも女性の姿が多く見受けられた。近年の西海岸をはじめR&B/ソウル・シーンに顔を見せているアンビエントなアプローチやサイケデリックなモードもあり、足を踏み入れるとツボにはまる中毒性も持ち合わせている。小編成を感じさせない変幻性を帯びていたステージに、彼が創り出す小宇宙の一片を観た気がした。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Sour Mango
02 The Game
03 Long Ears
04 Me Alone
05 Everything is Everything
06 Fruitflies
07 Bombo Fabrika
08 6 8
09 Naeja
10 Crawl
11 Pour maman
12 Keep On Running
≪ENCORE≫
13 My Balloon
14 “Latin Songs”(A Cappella)

<MEMBER>
Gabriel Garzón Montano(vo,key)
(ds)

TJO a.k.a. Takeru John Otoguro(Opening DJ)

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