*** june typhoon tokyo ***

AUSTRALIAN MUSIC EXPERIENCE@恵比寿LIQUIDROOM

■ オーストラリア音楽ショーケース@恵比寿リキッドルーム

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 インターネットが普及して久しい昨今、世界各地の音楽を知る機会も格段に増えてきた。その世界の中でもホットで多彩なミュージック・シーンとして注目を浴びているのがオーストラリアだ。オーストラリア音楽ショーケースと題して開催されるイヴェントの第1弾は、ヴァラエティに富む豪ソウル/ファンク周辺から4組を呼び寄せるという好企画。
 ライヴ・バンドとしても定評があり日本でも人気が高いディープ・ファンク・バンド、ザ・バンブーズをはじめ、アフロビート・シーンの若き才能たちが集ったザ・シャオリン・アフロノーツ、DJとシンガーによるリラックス・ソウル・ユニットのジョーンズ・ジュニア、豊かな芸術性を感じさせるビート・メイカーのオスカ・キー・サングの4組、さらには世界中でレコードを掘り続けるディガーでザ・キャット・エンパイアのDJ、DJジャンプスと、メルボルンのレコード店のオーナーで豪州のソウル~ヒップホップ・シーンに大きな影響を持つDJクリス・ギルの二人が登場。開演の16時から22時まで、グルーヴに溢れた快適な空間を創り出す一夜となった。

 だが、残念だったことは、こんな素晴らしい企画でありながらも、告知が隅々まで行き渡らなかったのか、開場/開演時にはほとんど集客がなかったこと。前売り発売の締め切り間近の深夜にチケットを購入したのだが、その時であってもチケットの整理番号が10番台。恵比寿リキッドルームのキャパシティを考えても、あまりにも売れていない。twitterやFACEBOOKなどでの反応も薄く、果たして観客が集まるのかと、かなりの不安を抱いて会場へ向かった。

 予想通り受付フロント周辺には人はまばら。しかもほとんどが関係者入場のようで、同業界の人たちの会話がエントランスフロアを埋めていた。となると、実際の売り上げはどのくらいあったのか……と考えると、非常に悲しく、恐ろしくもあるのでやめておこう。
 このような好企画はなかなか容易に可能となるものではないと思うので、主催者のみならず、同業界者や好事家たちを巻き込んで、広く喧伝することも必要だったのではないか。特に関係者枠でフリーで観賞した業界人、ライターやプロデューサーらは、そのあたりを考慮して能動的に宣伝してもよかったのではないかと思う。
 2番手に登場したジョーンズ・ジュニアまでは約50人くらい。さすがに最も知名度があると思われるラストのザ・バンブーズが始まる時には約100人前後はフロアにいたと思うが、開演時間からのDJタイムの間は15~30人くらいで、壁際や階段に腰掛けている人たちばかり。中央で音に合わせて首を揺らしていた自分が浮いているような感じだった。

Oscarkeysung 16時から30分間のDJプレイを経て、最初に登場したのはオスカー・キー・サング。マックのラップトップをステージ床に置き、中央の小さなテーブルにシンセ的な電子装置を操作。時にギターも奏でる。近未来観と幻想性を帯び、コラージュのようにヴォーカルを重ねて独特のグルーヴを創り出す楽曲はなかなか興味をそそる。以前、エリカ・バドゥが東京公演の時に、ラップトップとテルミンを操ってパフォーマンスをしていたが、その光景をちらっと思い出した。それはどちらかというと中性的な印象を与えるルックスも影響しているかもしれない。
 
 サウンドはラーイやクァドロン路線、ジェシー・ボイキンス3世あたりと融和性があるのかもと感じたエレクトロR&Bがベースのようだ。だが、メロディはしっかりとしていて、どちらかというとUKソウルっぽさも。楽曲の印象は異なるが、ジャネル・モネイのような古代と未来を繋ぐようなレトロフューチャリスムをテーマにしているところもあるのかもしれない。予想以上に知ってみたくなったアーティストだった。

Jonesjnr 続いては目当てのジョーンズ・ジュニア。シドニーを拠点とする、シンガーのエヴァン・ジョーンズとDJのモーガン・ジョーンズ(DJモーグス)によるデュオ。ホセ・ジェイムスやメイヤー・ホーソーン、ビラル、ジル・スコットらのオープニングアクトを務めた実力派だ。レトロなソウルやチルアウト的なメロウ・トラックを、ヒップホップ的な観点で解釈したサウンドが特色。リラックスなムードが横溢するが、60、70年代のソウルをモダンな表情に変えていくところが面白い。また、シンガーのエヴァンがステージを所狭しとキレ味鋭い動きで駆け回ったり、モーガンのもとに駆け寄りスクラッチの手真似などをするところを見ると、レトロなソウルを題材には扱っているが、それはあくまでもヒップホップを通過したソウルという側面から触れたもののような気がする。エッジを立てずにゆったりとした時流でのオーガニックな佇まいや、ノスタルジックな面もありながら鬱蒼とした部分がないのは、UKではなくオーストラリア産らしいというところか。

Theshaolinafronauts 3組目はザ・シャオリン・アフロノーツ。フードを被った謎めいたアフロビート・バンドで、リーダー格のギタリストが羽のように広げられる黄金のマントを羽織っていて、どこか日本のブラス・ロック/フュージョン・バンド、スペクトラムを思わせる出で立ち。重いビートがズンズンと進むなか、ファンクはもちろん、ミステリアスなムードのジャズ・サウンド、ユニークなロック的要素までも盛り込んだインストゥルメンタルを披露してくれた。ただ、インスト・バンドでファンキーな要素がある集団にはありがちなところかもしれないが、同じフレーズを何度もループするので、楽曲によってはやや冗長に感じられるものもあったかもしれない。とはいえ、リズムがうごめきはじめて次第に大きな渦へと移り変わっていくような音の波の鼓動には、身体の芯から揺さぶられるものが。各々のパートのソロでも見せ場を作っていて、場慣れぶりは、ステージで培ったライヴ・バンドたるパフォーマンスだった。

Thebamboos ラストは日本でも人気があるザ・バンブーズ。カイリー・オウルディストとエラ・トンプソンというタイプの異なる女性ヴォーカリストを迎えて、ホーン隊3名を大フィーチャーしたファンキーなソウルやサイケデリックなガールズ・ポップ、ヴィンテージ感を帯びながらハッピーなテイストのソウル・ミュージックを奏でるなど、オーストラリアでは国民的バンドと言われるゆえんが解かる、色彩豊かな世界観で観客を圧倒。決して媚びることなく、しかしながらキャッチー過ぎる訳でもない、その絶妙のバランスと思わず微笑まずにはいられない多幸感を呼ぶサウンドやパフォーマンスが、見る者を心豊かにさせるのだ。貫録がありながら、どこかチャーミングなイメージの彼ら。その魅力をふんだんに見せつけてくれた。
 彼らのライヴではレコードを回していたDJ二人、DJジャンプスとDJクリス・ギルもフロアに登場。彼らも他の観客同様、ご機嫌モードで身体を揺らしていた光景が、このライヴの良さを物語っていたといえる。

 今回は集客としては成功しなかったが、大切なのはまずこれを広く伝えること。メジャーとは異なり、認知度が思うように高くならないかもしれないが、アーティストはやってきた音楽を信じて継続し、ファンは彼らの音楽を愛する。出来るならば、生でそれを体感する。その繰り返しが、やがて僅かなうごめきから大きなうねりへと変わっていくのではないかと思う。決してその場の空間を共有した人は多くはなかったが、充実感に満ちた有意義な6時間だった。次の開催も期待したい。


◇◇◇


<MEMBER>

THE BAMBOOS
THE SHAOLIN AFRONAUTS
JONES JNR
OSCAR KEY SUNG

DJ JUMPS(DJ)
DJ CHRIS GILL(DJ)



◇◇◇

Australianmusicexperience_01_2



The Bamboos feat. Kylie Auldist - Keep Me In Mind


The Shaolin Afronauts - Kilimanjaro (Live)


Jones Jnr. - Don't You Worry | Sofar Sydney


Oscar Key Sung - "All I Could Do"












 

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