カメルーン出身の女性シンガー・ソングライター、アンディ・アローが初来日すると聞き、以前より楽しみにしていた公演に足を運ぶ。場所はブルーノート東京。
彼女についてのトピックとしては、まずは“プリンス”だろう。しばしば“殿下”と共にいるところをカメラに収められているプリンス一押しの才女。21歳での自主制作『UnFresh』が注目を集めたかと思うと、プリンスのニュー・パワー・ジェネレーションに参加。2ndアルバム『Superconductor』ではエグゼクティヴ・プロデューサーとしてプリンスが参加し、3曲を共作。また、ダンサーやモデル、女優としても人気を呼んでいる。
プリンス、女性ソロと聞くと、2月にブルーノート東京で観賞したニック・ウェスト(その時の記事はこちら)を思い出したが、ニックほどのトサカヘアではないにせよ、アンディもヘアスタイルのトップのヴォリュームがあった。プリンスが好む女性は、みなそんな髪型になるのだろうか(それともそういうヘアスタイルだから好まれるのか。思えばシーラ・Eも……笑)。
実際見て思ったのは、非常にキュートなルックスだということ。表情も微笑ましい。いや、顔は音楽性と関係ないじゃないかと思うかもしれないが、プリンスが見初めるファンキーな女性ソロ・ギタリスト/ヴォーカリストということからファットなものを想像していただけに、均整の取れた凛としたルックスは意外だったのだ。
楽曲もブリブリのファンキー一直線では全くなく、喩えていうなら、アメール・ラリュー、エスペランザ・スポルディング、コリーヌ・ベイリー・レイあたりを行ったり来たりするという感じだ。ドファンクというよりもネオソウルやアコースティック・ソウル寄りが多いか。
それでももちろんファンキーな部分もあって、瑞々しい声に耳がいきがちだが、グルーヴはファンクのそれ。ラップを繰り出して独特のビートを刻んだ「アイ・ウォント・ラヴ」やドゥービー・ブラザーズのカヴァー「ロング・トレイン・ランニン」、フロアを興奮と熱度を高めた本編ラスト「ピープル・プリーザー」などでは、プリンスが好みそうな“らしさ”を醸し出していた。
バックもしっかりしていて、左手からキーボードのウィリアム・ウェルズ、中央に白人ドラマーのオーレリアン・ルフェーブル、右手にベーシストのフランク-クリフ・ジャンの3人で過不足ない音圧を構築。特に巨漢のベーシストのフランク-クリフ・ジャンが奏でるファットなボトムは、サウンドの色彩を漆黒や黒褐色に染めていく。上物がアコースティックな感触でも、そのボトムがファンキーなグルーヴを構築する土台となっていた。
エッジの効いたものからハートウォーミングなものまで、思った以上に引き出しは多彩な印象。日本人のちょっとシャイなオーディエンスにもたじろぐことなく、「イフ・アイ・ワズ・キング」でははにかみながら優しく問いかけるようなヴォーカルを、「ウェイティング・イン・ヴェイン」「アイ・ウォント・ラヴ」「フックド」ではコール&レスポンスで一体感を高め、「ピープル・プリーザー」では観客席に降りてきて手と手を取り合ってのダンスなど、力むことなく惹き込むことが出来るミュージシャンだと感じた。それが才女と呼ばれるゆえんだろうし、実にクレヴァーだ。
アンコール後は単独でしっとりと「ワン・ステップ・クローサー」を弾き語り。またの来日を約束して、拍手の華が咲くなかステージアウト。スウィートでスムーズなグルーヴの薫りをフロアと観客の心に残して、ブルーノート東京での公演初日のステージを終えた。
公演後はロビーでサイン会。CD『UnFresh』『Superconductor』がそれぞれ1000円、Tシャツとキャップもそれぞれ1000円。しかも、2点以上購入者は500円割引と非常にリーズナブルなことに驚いた。
所持していなかった『UnFresh』とTシャツを購入し、『UnFresh』には名前を含めてのサインをもらう。さらには2ショット写真も。
まだ日本では知名度が高くないからゆえのサーヴィスぶりだと思うが、これらが近いうちは難しいものになるのではないか。きっと(エスペランザ・スポルディングらのように)大きな脚光を浴びるはず。そう思える才媛だ。次回の来日公演もマスト。
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<SET LIST>
01 Story Of You&I
02 Sometimes
03 When Stars Collide
04 Conclusions
05 Waiting In Vain(Original by Bob Marley)
06 Yellow Gold
07 If I Was King
08 Dancing In The Dark(Original by Bruce Springsteen)
09 I Want Love
10 Long Train Runnin'(Original by The Doobie Brothers)
11 Hooked
12 People Pleaser
≪ENCORE≫
13 One Step Closer
<MEMBER>
Andy Allo(vo,g)
William Wells(key)
Frank-Cliff Jean(b)
Aurelien Lefebvre(ds)
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Hooked
People Pleaser