*** june typhoon tokyo ***

Perfume@代々木第一

■ Perfume@代々木第一

Perfume_2014


Perfume_201401





 払拭の代々木。

 テクノポップ・ユニット“Perfume”のツアー“Perfume 5th Tour 2014「ぐるんぐるん」 supported by チョコラBB”を観賞。国立代々木競技場第一体育館の4デイズの2日目。Perfumeのライヴは2013年12月の東京ドーム公演(その時の記事はこちら)以来、ステージとなると、今年5月末に国立競技場で行なわれた“JAPAN NIGHT”(その記事はこちら)以来となる。

 今回はシングル「Cling Cling」のリリースくらいのみで迎えたツアーであるため、いつもならアルバム収録曲をぎっしりと詰め込むセット・リストとなるところが、アルバムに拘らずに新旧含めたものとなった。彼女らのブレイクのきっかけとなった「ポリリズム」のカップリング「SEVENTH HEAVEN」や2009年『GAME』収録の「セラミックガール」、アンコールのラストで歌った「Perfume」などは、サプライズ度も高かった。

 ところで、開演当初はオーディエンスも思った以上に乗れてないのかもしれないと、実は感じていた。シングル「Cling Cling」はエキゾチックな雰囲気と童謡のようなファンシーな曲調が溶け合った……といえば聞こえはいいが、個人的にはきゃりーぱみゅぱみゅの楽曲に似たということもあって(どちらも中田ヤスタカが制作しているのだから、近似性が出てくるのは当然と言えば当然なのだが)、あまり積極的に聴いてこなかったのもある(きゃりーがダメというのではなくて、Perfumeらしさを意識した作りではないなと感じたので)。続く「Handy Man」「Clockwork」もどこかしらにエスニックやメランコリックが漂う楽曲ということもあったのかもしれない。ただ、会場の空間にカラフルなレーザーが文字通り走った「レーザービーム」以降はギアも上がり、バキバキとしたソリッドな音と垣間見せるキュートなポップネスが絶妙の割合で溶け合い、会場のヴォルテージをアップさせていく。

 結果的には、その“乗れていない”という自分の感覚は杞憂だったのかもしれない。だが、不思議な偶然とも言おうか、中盤のMCで明らかにされたのは、実は彼女たちには「代々木には苦い思い出がある」ということだった。以前、夢であった日本武道館公演を終え、心にぽっかりと穴が開いた状態で聞かされた「次は代々木が決まった」との知らせ。ある種の燃え尽き症候群の後に開催された代々木公演は、彼女らにとって気持ちの整理がつかないままで終えてしまったもどかしさが脳裏を占めたステージだったようだ。

 それから数年。今回、メジャー・デビューの9月21日という記念すべき日にわたる4日間で開催される代々木第一でのステージゆえに、そのような思いを払拭しようとする意識や力みが冒頭の僅かな心境の部分で現れていた……といったら邪推過ぎるだろうか。ただ、実際、初日の公演では僅かながらその思いを秘めていたところがあったと吐露していた彼女たち。その些細な感覚が自身に伝播した……と言ったら出来過ぎか。
 しかしながら今日の公演では、多くの笑顔を振りまき、そして感謝の言葉と正直な胸の内を口外したことで、知らぬ間に抱え込んでいた胸のつかえを一気に外せたような充実感に溢れた表情でパフォーマンスを披露。最後のMCでのっちが言った「代々木、払拭しました」の言葉は3人の偽らざる気持ちなんだろう。その言葉を聞き、構成としてはそれほど目を見張るものがないと感じながら観賞していた自身にも、後からジワジワとこのステージの意義深さが浸透してきた気がした。

 そんな感覚に自覚し始めて振り返ると、冒頭の、近未来都市の隙間を風のように駆け抜けた先に「Cling Cling」のヴィデオの世界観をそっくりそのまま表現したセットへと移り変わる導入や(しかも、目の前に現れる都市の街並みは“ぐるんぐるん”と回転しながら現れてくる凝りよう)、そのセットも次々と表情を変えたり、花道先端から一旦消えてメインステージへ衣装替えをしつつ移動するなど、映像、仕掛けなどにも通常のアルバムを引っ提げてのツアーと同等の工夫と趣向を凝らした完成度の高いものであったと実感。ただ、彼女らのこの代々木に掛ける思いの強さが、冒頭のどことない違和感を経て圧倒的な多幸感へとたどり着いたこの日のステージに凝縮されたことで、細かな技術や演出に目が届く以上に、人間性という琴線に触れる空間を創り出していったことに五感が反応したのだと思う。選曲、構成を冷静に考えたら過去最高というステージとは言い切れないだろうが、それらを凌駕するに値する感情の横溢が多くのオーディエンスの心を動かしたという事実だけで、このライヴは成功を収めたといっていいだろう。

 彼女たちはこのツアーを終えると、アメリカへの海外ツアーが待っている。「DISPLAY」のヴィデオでは4Kという最先端の映像技術を用いて日本の技術力の高さや先進性を訴えたかと思えば、「Hold Your Hand」では歌詞を描いたファンの掌を次々と映し出して文字通りの肌の温もりが伝わるようなハートウォームなリリックヴィデオを作成したりと、技術と人間性の両面を携え、より成長を重ねてきた。アメリカという未知の世界を経験して戻ってきた時、人気テクノポップ・ユニットという枠を遥かに超えた姿が見られるはず。そのための助走として、この代々木4デイズは、迷いと葛藤を払い去ったという意味でも彼女らのエポックメイキングな公演となるのではないか。泣き、笑いなど悲喜こもごもが満載のライヴは、ファンとの家族的な関係を築きながらもワールドワイドな展開で世界を驚かせる非常に稀有な空間として、彼女らのオリジナリティなステージとして知れ渡る日もすぐそばに迫っているのかもしれない。



◇◇◇

<SET LIST>

00 OPENING
01 Cling Cling
02 Handy Man
03 Clockwork
04 レーザービーム(Album-mix)
(MC)
05 いじわるなハロー
06 I still love U
07 恋は前傾姿勢
(Interlude Movie)
08 エレクトロ・ワールド
09 DISPLAY
10 SEVENTH HEAVEN
(MC)
(P.T.A.のコーナー)
11 Patry Maker
12 GLITTER(Album-mix)
13 セラミックガール
14 ジェニーはご機嫌ななめ
15 チョコレイト・ディスコ (2012-Mix)
(MC)
16 Hold Your Hand
≪ENCORE≫
17 Baby cruising Love
(MC)
18 Perfume
(MC)


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