トロントを拠点に活動するマルチ・アーティスト、メイリー・トッドの東京でのワンナイト・ショウ。ビルボードライブ東京にはほぼ満席となる多くのメイリー・ファンが集った。
海外では“レディー・ガガ・ミーツ・ノラ・ジョーンズ”と絶賛された“イリュージョン・ポップ”の使い手がどのようなステージを展開するのか、興味津々に足を運んだ。
そもそもレディー・ガガにノラ・ジョーンズとは、表現としてどうなのかと思うが（苦笑）、それは彼女のPVを見てもらえればわかるだろう。デビュー作のリード・シングル「サマー・サウンズ」の緩やかなボサ・ノヴァ調から突然ファンキーなディスコへと変貌するところや、世界で話題となった「ベイビーズ・ガット・イット」のPVの奇抜さなど、ノラとガガと融合としか表現しづらい、彼女独自のユニークさが充満したエキセントリックな作品が魅力だ。 ただ、単なる奇抜だけではなく、そこには豊かな創造性が敷かれ、ストーリー性も高い。その意味では、ガガというよりも、ジャネル・モネイに近いファンクネスやクリエイティヴィティを持っているといえるのではないか。
さて、そのライヴだが、メイリーは魚の鱗のような虹色のタイトなワンピース・ドレスを身につけて（背中はインナーが丸見えでパックリと開いている）登場。頭に団子一つ結んだヘアスタイルがキュートだ。
まず、小型のハープを片手に、ゆるやかな昼の午後を思わせる「Successive Mutations」からスタート。アルバム『エスカポロジー』収録曲を中心に、小気味よく楽曲を展開していく。
一気にフロアの熱が上がったのが、前述の「ベイビーズ・ガット・イット」から。ジュディ・オング「魅せられて」よろしく、鳥の羽を広げるような透き通ったマントをまとうと、さらに観客の熱を煽るように羽ばたかせる。さらにはヴィンテージ感溢れるドリーミーなディスコ「Hieroglyphics」を経て、イヴリン“シャンペン”キング「ラヴ・カム・ダウン」（m-flo「Mirrorball Satelight 2012」のサンプリング曲）へ。フロア中心の4、5のテーブルを後ろに下げさせてスペースを作り、本人もそこへ降りて観客を交えてのダンス大会へ。その後もテーブルに立ち、観客の横へ座り、椅子に寝そべるなど、おてんばぶりを披露。だが、そこには観客とともにエンジョイするというテーマは堅持しているため、観客の誰もが笑顔で見、体感している。自己満足という暴走に終わらないのは、ノリだけのように見えて、裏には緻密な計算がなされているからだろう。
コミカルな動きも含め、ファンや観客がどうしたら楽しめるかを熟知しているようなパフォーマンスだから、突飛なものも多いのに、決して不安視させない。エンタテインメントをやり遂げるという強い信念も感じさせた。
楽曲同様、めくりめく変化は、まるでカメレオンか万華鏡か。メンバーも観客もその空間にいる人間すべてを一体化させた、まさにマジカルなステージ。ラストもフロアの中心で観客に囲まれながらのエンディングという、彼女ならではのステージとなった。
派手やかだが奇抜さだけじゃない。リスナーを視野に入れた、賞味期限の長いポップ感覚。それを失わない限り、常に刺激を与えてくれそうだ。要注目。
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＜SET LIST＞
01 Successive Mutations
02 Did Everything I Could
03 First and Last
04 Patti Jo
05 You Can't Turn Me Away（Original by Sylvia Striplin）
06 Summer Sounds
07 I Can't Stand It
08 Baby's Got It
09 Hieroglyphics
10 Love Come Down（Original by Evelyn“Champagne”King）
11 I Tried
12 Do You Know What It is
≪ENCORE≫
13 Pinball Number Count
14 I Can't Go Far That（Original by Daryl Hall & John Oates）
15 Work To Do（Original by (The Isley Brothers)
＜MEMBER＞
Maylee Todd（vo）
La-Nai Gabriell（key）
James Taylor（g）
Eric Woolston（ds）
Chris Kettlewell（b）
