*** june typhoon tokyo ***

Especia@WWW

■ Especia@渋谷WWW

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Especiawww

 80年代ディスコ、AOR、フュージョンなど、アーバンなサウンドや雰囲気をコンセプトにした大阪発堀江系ガールズ・グループ、 Especia(エスペシア)の東京ワンマン・ライヴ“Bailas con Especia”を観賞してきた。会場は、スペイン坂上にある渋谷WWW。フロアはスタンディングで400人収容ということだが、300名くらいが実際の適数か。元来、映画館『シネマライズ』の地階を2010年11月に改装したもので、そのため天井が高く、地階でありながらかなり開放感がある。SPACE SHOWER TVがプロデュース。元来映画館であることを活かし、スクリーンも大きく、段差があるフロアは背が低い女性などには嬉しいところだ。この日は大部分が男性だったが、女性のファンも1、2割見受けられた。フロアは階段部分にも客が占めるほどの盛況ぶりだ。
 そのライヴだが、ライヴ・テーマの“Bailas con Especia”とはスペイン語で“君はエスペシアと踊る”の意味。ファンと一体となってワンマンライヴを盛り上げたいという心意気を込めたライヴ・タイトルなのだろう。

 エスペシアの初見は、おおよそが派手なルックスや衣装に目が行くだろう。80年代を直接的に可視化したといえばいいだろうか。現在のアラフォー以上にとってはかなり懐かしい時代観(トレンディドラマ風のPV「パーラメント」を見れば分かると思う)を表現したルックスは、その時代を知るものにとっては“懐かしい”と同時に“ダサさ”を痛感するはずだ。
 だが、そこを逆手に取り、この80年代~90年代初頭のいわゆる“バブリー”な時代を知らない、身近でない世代が若者の中心を築く2010年代にとって、このグループのコンセプトは非常に新鮮でもある。何か“浮世離れ”した感覚に近いような、リアリティのなさがウケる可能性を秘めているグループともいえる。

Especia「パーラメント」MV

 この日は中盤で5曲ばかりサックス、ギター、キーボードの生演奏が入るスタイル。リーダーの冨永悠香と脇田もなりの二人がメインでヴォーカルを務めるが、三ノ宮ちか、杉本暁音、三瀬ちひろ、森絵莉加の4人もヴォーカル・パートを持つ。楽曲によってはメインが替わり、全員がメイン・ヴォーカルを務められるグループだ。振り付けとしてのダンスも全員がこなすが、特に三ノ宮ちかにはダンス・ソロ・パートがあり、ヒップホップ風のダンスを曲間で披露して歓声を浴びている。

Especia_midnightconfusion_2 とはいえ、それぞれが抜群の歌唱力、抜群のダンス・スキルを擁しているとはまだいえない。ヴォーカル・グループとしてはもちろん、アイドル・グループとしても随一といえるかというと、今の段階では胸を張って随一と言えるまでではないだろう。だが、少なくとも、先日の新宿タワーレコードでのイヴェント(6月22日)よりヴォーカルもダンスも確実に成長していることが窺えた。たとえば、9月11日にリリースされるシングル・タイトル曲「ミッドナイトConfusion」では、サビ前ヴァースで森絵莉加のソロ・パートがあるのだが、二人のメイン・ヴォーカルに引けを取らない歌唱を披露していた。安定感という意味ではメインに抜擢してもおかしくないほどだった。
 ちなみに、この「ミッドナイトConfusion」は、これまでの楽曲とはやや趣向が異なるのだが、それはSAWAによる楽曲というところが大きい(SAWAはFreeTEMPOのプロデュースでCDデビューし、ややYUKIっぽいファンシーな声質が特色のクラブ系シンガー・ソングライター)。この日はSAWAがスペシャル・ゲストとしてメンバーに加わり、「ミッドナイトConfusion」と自身の楽曲を披露してくれた。
 また、シングル「ミッドナイトConfusion」のカップリングには「X・O」(エクストラ・オールド)という哀愁ラテン・メロウなスロー・バラードが収録され、本日のステージでも披露してくれた。この手のスローな楽曲は詞世界を吸収した上で歌いこなさないと、ほとんど聴くに堪えないものになってしまう危険性があるのだが、ヴォーカルの著しい成長がそれを回避させている。そればかりか、脇田もなりは声色を変えて二役、三役を演出する豊かな表現力を見せていた。

 これらの成長ももちろんあるのだが、なんといってもエスペシアのウリはそのサウンドにある。ソウル、ファンク、ディスコ、ヒップホップ、AOR、フュージョンあたりの要素をふんだんに駆使したアーバンなポップ・サウンドだ。全編をカラオケで流すのではなく、しっかりと生バンドを従えているところもいい。アーバン度を高めるサックスの音色やキラキラとしたカッティング・ギターは、当時の華やかさを一瞬にして蘇らせる音のマジックだ。
 さらに特筆すべきが、ボトムでブンブンと鳴るベース。ダンス・ミュージックを標榜する楽曲はいくらでもあるが、やはりベースが厚く、太くないと黒っぽさは伝わってこない。上モノはシンセやエレピなどで軽くても、ベースがほどよいグルーヴを生み出しているからこそ、耳を惹きつけるファンキーな楽曲となりえているのだ。スクラッチ効果もオールドスクールっぽくて心をくすぐる。

 そして、もう一つ付け加えると、ライヴでのアレンジ力。大胆にリアレンジした導入部などは、ライヴならではのもの。一聴しても即座にどの楽曲が分からないサウンドをアクセントにしたことで、より本編が盛り上がるという効果を生んでいた。そのあたりは、エスペシアの作家陣やプロデュース人脈たちの見事な手腕が発揮されたといってもいいだろう。

130818_212835 これまでCDリリースとしては、EPの『DULCE』『AMARGA』(“Noche”“Tarde”)のみで楽曲数はそれほど多くないため、アンコールでは本編で披露した楽曲を再度パフォーマンスすることもあったが(本来の意味でのアンコールだから、別に悪くはないのだが)、それはこの先リリースが増えていくことで解決していくはずだ。
 ただ、作家陣やスタッフに願いたいのは、周囲のアイドル・グループの多くがそうであるように、これを機とみてシングルを短いスパンで連発するのではなく、しっかりとサウンドや方向性を吟味した上で楽曲を発表してもらいたいということ。奇しくも、バブル時代のサウンドは、これまで一過性のムーヴメントと括られて、時にはやや冷笑的な評価や音楽シーンなどでも軽んじられる傾向があったように思う。時を経て、Especiaという新たな形でディスコ、AOR、フュージョン……といった楽曲の良さを伝えられる好機でもあるのだから(もちろん、グループとしてこれだけにしがみつくことはないのだが)、意図を持った楽曲を適切な時期に発表してもらえたらと思う。

 17時から開演して、ダブル・アンコールを含み、時間は約1時間半弱。やや短い感じもしたが、MCはさほど長くなく、次々と楽曲を展開していく構成は、テンポもよくかなり好感を持てた。
 そうはいっても、彼女らへの掛け声的なコールはあるし、MCではファンからの告白タイムめいたこともあったりして、そのあたりはアイドル・グループならではといったところ。そんなコアなファンたちを、手慣れた感じでサラリと受け流すあたりは、場数を踏んできた強みもあるのかもしれない。
 ライヴが終わると、CD予約特典&グッズ購入者への握手会と撮影会へ。これが長い行列で、リピーターの多さを感じた。これらの時間が長いから、ライヴがそれほど長くないのかとも思ってしまったほどだ。(笑)

 彼女たちは最後に、「もっと大きな箱でやりたい」と口にした。マネージャーの清水氏は「BiSという破天荒な先輩もいますが、エスペシアはエスペシアらしく成長していきたい」との抱負。アイドルとは、ある意味限られた旬があるからこそ輝くものであるのかもしれないが、良い楽曲は後世に残る。逆説的なものかもしれないが、旬より佳曲を求めて、さらなる成長をし続けてもらいたい。浸透度は緩やかかもしれないが、良いものには必ず評価を与える人が現れ、そういう時が来る。そうすれば、自然と彼女らの目標へと一歩ずつ近づいていくはずだし、その日もそれほど遠くはない気がする。

◇◇◇

<SET LIST>
≪Opening Act:水曜日のカンパネラ≫

≪Especia≫
00 OPENING
01 Good Times
02 パーラメント(extended ver.)
03 FunkyRock
04 オレンジ・ファストレーン
05 不機嫌ランデブー
06 海辺のサティ
07 スカイタイム
08 ステレオ・ハイウェイ〈BAND SET〉
09 センシュアルゲーム〈BAND SET〉
10 トワイライト・パームビーチ〈BAND SET〉
11 MIDAS TOUCH(extended ver.)〈BAND SET〉
12 ナイトライダー(extended ver.)〈BAND SET〉
13 ミッドナイトConfusion (Special Guest with SAWA)
14 Swimming Dancing/SAWA (with Especia Dancers)
15 Twinkle Emotion(extended ver.)
≪ENCORE #1≫
16 海辺のサティ(Vaxation Edit)(with good VJ)
17 X.O
18 きらめきシーサイド(extended ver.)
≪ENCORE #2≫
19 ミッドナイトConfusion

<MEMBER>
Especia:
Haruka Tominaga
Chika Sannomiya
Akane Sugimoto
Chihiro Mise
Monari Wakita
Erika Mori

サックン(g)
miifuu(SCRAMBLES)(key)
ちーくん(sax)

Guest:
SAWA(vo)
水曜日のカンパネラ(Opening Act)

◇◇◇

ライヴ終了後の握手会&撮影会は長蛇の列が出来る盛況ぶり。1時間弱くらいはやっていたのでは?

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オープニング・ナンバーは、ナンブヒトシとのコラボ「Good Times」(シックのアレじゃないですよ)

こういう(EAST END+YURI的な??)元祖ジャパニーズ・ガールズ・ラップな人たちも最近あまり聞こえてこないから、かえっていいのではないかと。
ライヴではこうなります。

コール&レスポンスが“ディスコに私を連れてって”“バブルのあの日をもう一度!”っていうのもイイですネ。
(by バブルに乗れなかった男)

◇◇◇

オープニング・アクトは“水曜日のカンパネラ”でした。

Kom_i

ヴォーカルのコムアイを中心としたプロジェクト。この日は残念ながら、パフォーマンスを観られなかったのですが、エスペシアのライヴ終了後、コムアイさんがフロアを徘徊してたところでたまたま話をすることが出来ました。チャイナドレス姿でとってもキュートでしたヨ。
 また、若いながらもなかなか奇特な(?)体験をされているようで、話のネタはお堅いものからやわらかいものまで(西洋史から落語やらポルノ映画も好きらしい)、相当幅広いものがあるようでした。
 楽曲のタイトルも文学的だったり、芸術的だったり、かなりユニークです。

一度聴いたら病みつきになる人もいるかもです。要チェキラ。


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