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新・人間革命  師恩 二十三 (3250)

2006年01月10日 | 人間革命
新・人間革命  師恩 二十三 (3250)

 山本伸一は、「村民の集い」で、児童のお礼のあいさつにこたえて、自作の詩「厚田村」を朗読することにしていた。

 この詩は、伸一が戸田城聖と共に、初めて厚田村を訪れた一九五四年(昭和二十九年)の夏、戸田の少年時代をしのんで詠んだ作品であった。

 朗読は関係者からの強い要請でもあった。

 彼は、マイクの前に進み出た。

「何もできないものですから、せめてものお祝いに、十九年前に作ったこの詩を、読ませていただきます」

 伸一の朗々たる声が体育館に響いた。


 「厚田村

 ――恩師の故郷に憶う


 北海凍る 厚田村

 吹雪果てなく

   貪しくも

 海辺に銀の 家ありき

 これぞ栄ある

     わが古城


 春夏詩情の 厚田川

 鰊の波は 日本海

 松前藩主の 拓きしか

 断崖屏風と 漁村庭」


 皆、目を輝かせて耳を澄ましていた。なかには涙ぐむ人もいた。


 「厚田の故郷

   忘れじと

 北風つつみて 美少年

 無名の地より

     世のために

 長途の旅や 馬上行」


 朗読が終わった。一瞬の静寂のあとに大拍手がわき起こった。立ち上がって手を叩く人もいた。

 かつてはニシン漁で賑わいを見せた厚田村も、今では、人口が減少し、村の前途は決して安泰とはいえなかった。

 しかし、厚田村の美しさをうたい、戸田城聖を育んだこの天地のもつ深い意義を明らかにした詩は、村民の誇りを呼び覚まし、郷土建設への勇気と希望をわき起こしていったのである。

 大聖人は「浄土と云ひ穢土と云うも土に二の隔なし只我等が心の善悪によると見えたり」(御書三八四ページ)と仰せになっている。

 その場所がどうなっていくかは、人間の一念によって決まっていく。  人びとが正法を受持して、強く清らかな善なる心で、郷土の建設に取り組んでいくならば、いかなる地も、必ず常寂光土となることを教えているのが、まことの仏法である。
 伸一の胸には〝厚田の友よ、負けるな!″との叫びがこだましていた。


 語句の解説

 ◎常寂光土

 仏の住む国土のこと。法華経以前の経教では、苦難多き裟婆世界を汚れた穢土として嫌
い、仏の住む浄土は遠い別世界にあるとしていた。だが、法華経では、この裟婆世界こそ
仏が常住する国であると説き、苦悩の現実を幸福世界へと変えゆく原理が示されている。