かなり前から、コンテストに参加する局が極端に減ったということが話題にのぼっていますが
みなさんはどのようにお感じでしょうか?
私自身、最近コンテストに参加していて感じていることは、コンテスト命というようなコンテスター、お手軽参加者とさらに一般の余り興味ない人との考え方の乖離が激しいかなあ、と思っています。今回、それぞれを分析することで、どうしたら良いかを考える叩き台を作ってみました。
<エキスパート>
良い点:
(1) コンテストをやる局が減少している中、熱心にほとんど毎週末参加しており、どんな遠くからでも移動して参加してくれる。コンテストを開催する方としては大変有り難い。
(2) オペレートに慣れているので、域内の局として参加した場合により多くの域外の局と交信する。
悪い点とその対策:
(a) いきなり他から乗り込んで来て高得点を挙げて賞状をかっさらってしまう。
=> 単にコンテストでの機械的なQSOだけするのでなくて、普段からいろいろなバンドにQRVし交友を広めてほしい。または、逆にコールサインを徹底的に売り込んで、この局なら仕方ないと思わせるぐらいならば摩擦は少ない。
(b) QRVする局の少ないバンドに他からつれてきて自分だけQSOできたらまたほかのバンドにつれ回す。
=> このようなことをされると、そこのバンドに出ている他の人(特にシングルバンダ−)のQSOの機会を奪うだけで、コンテスターの利己的な運用と思われても仕方ない。またこのようなQSOは、コンテストナンバー自体は分かっているので信号が確認できるだけで実際にコピーできなくてもQSOできてしまう。コンテストルールの方で10分間ルールやバンドチェンジ回数制限を導入して、強制的にある時間帯はQRVさせ、QSOの機会をひとりじめせず、なるべく多くの局にもQSOできるようにしたらどうか?そんなことをしたらQRVする局の少ないバンドは捨てる、という考えの局もあるかも知れない。しかし、それはそれで戦術(tactics)として有利ならば仕方ないと考えるべきである。リスクを冒して点をのばすか、単に局数を稼いで点数を稼ぐかを運用する本人に考えさせることで戦術の幅が広がり競技性が高まるのでは?マルチマルチの場合には単に”qrv on 7022, 21055” と連絡するのは認められると思う。
(c) コールサインとナンバー以外をコピーできない。
=> ほとんど全部のコンテストがRS/T+市郡ナンバー/都道府県ナンバーになってしまっているのもこれと関係する。複雑なナンバーを受信することはミスコピーを誘発して減点の対象となるため、どのコンテストも同じナンバー構成の方が問題は少なくなるのは理解できるが、そのために、どこからどのようにQRVすることが有利なのかを考えるという戦略(strategy)の幅を縮めている。昔の東海コンテストでは市郡ナンバー/都道府県ナンバーではなく、市郡名をローマ字で交換していたので、例えば明らかに宝飯郡と北設楽郡/蒲郡市では、前者の方がナンバーは短いので有利だが、茶臼山/遠望山の上からQRVすれば1エリアも楽々QSOできるのでナンバー交換のロスには目をつぶってそこに移動しよう、いや、本宮山でもインターフェアがでなければ問題ないのでナンバーが長く手間取る茶臼山/遠望山は止めよう、いや、いっそ自宅からローカルに協力してもらっていろいろなバンドでナンバー交換してもらった方がよいというようないろいろな戦略をたてることが可能であった。何が言いたいかというと、コンテストのオペレーションがあまりにも機械的になってしまっているので、全部のコンテストで戦略と戦術までが均一化されてしまい、コンピュータシミュレーション(Morse Runnerなど)を使ってやるのとどう違うのかが判らなくなってしまっている、電波という資源を使う必要は全く無いのではないか?
結論:エキスパートの参加する部門(例えばオールバンド電信電話、オールバンド電信)では、ガチンコ勝負ということで戦略・戦術を工夫させるようにもっと難易度を高くする。ただし、新しい局が参入する余地は残す。個人的な意見としては、dupe check sheetも100局以上交信した場合には必須にしたらどうか?
<お手軽参加局>
良い点:
(1) エキスパートの相手として適当な数交信してくれるのでたくさんの部門に分かれていても参加局があり、そのため順位付けができコンテストとして成立する。
悪い点とその対策:
お手軽参加局を大きく2つのパターンに分類することができる(i) アワードなどを目的にして自分の欲しい局しかやらない局;(ii)QRVする環境/時間が限られているために敢えてシングルバンド部門に特化する局
まず、(i)について:
(a) 自分の欲しい局しかQSOしない。
=> これは主催者側で、できれば全部のマルチに対して少なくても1局はQRVするようにお願いして回る。参加賞を出す(静岡市郡コンテスト)コンテストで全部の市郡(市町村?)を完成させた局(JARLほか。有料で良いができれば無料だとなお良い)に対してコンテストアワードを発行してもよい。記念品を送る(岐阜コンテスト)のもあるが他にはないか?(=岐阜コンテストでは開催10周年として記念局運用とアワード発行を行なった。)
(ii)について:
(b) 他のバンドにでない。
=> チェックログをもっとPRする。書類提出する部門はコンテスト開始時にきめる必要は全くなく、ログを送る時に決定すれば良いことを周知する。シングルバンダーでもあまり相手がいない(例えば昼の1.9 MHzなど)ようならば、空CQを垂れ流しにするよりも他のバンドも覗いてみませんかと誘いをかける。まあ、現状ではバンドチェンジに関する制限はないので、他のバンドからひき連れてくることは可能であり、他のバンドでQSOした局に参加したい(書類提出したい)バンドにちょっとだけQRVをお願いするのもありなのでそれをPRするのもよいかも知れない(あまり勧めたくはないが)。
(b) 優勝できる部門に甘んじている。
=> たまには違う部門で参加してみませんかと勧誘する。例えば、移動してみるのはその第一歩でしょう。
結論:
お手軽参加局を増やすには、お手軽参加局が参加する目的を、コンテストを主催する方で汲み取って、要望にマッチする方策を考える。できれば、エキスパートとして育ってもらうような方向を考える。
<ビギナー>
良い点:
(1) コンテストを将来とも行なうためには、新しい人の参加が必要である。
悪い点とその対策:
(a) コンテストでのオペレートに慣れていない。
=> 最初参加したころを思い出すとよいが、コンテストで、大声(?)で他の局と競り合って呼ぶ度胸がない、ナンバー交換だけの機械的なQSOのやり方が判らないなど。昔のように高校/大学のクラブ局でコンテストをやると言う機会は無くなった。地域クラブか、コンテストを開催する方で、何かしら説明会をやる必要があるのでは?
(b) 最近のコンテストはどちらかといえば電信中心なので電話だけでは参加しにくい。
=> 上級講習会を開く。電信もできるようにするだけではなく、ある程度のスピードでもコピーできるように訓練する機会を設ける。コンテスト主催者側では、4級でも簡単に参加できる方策を考える。単に局数だけで競うのもありかも知れない。
(c) なかなか賞状をもらう所まで行かない。
=> アマチュア無線は「自己訓練」のためにやっているとしても、何かほめられた方が楽しいに決まっている。しかしいきなりオーバーパワー、スプラッタまき散らしでは、単なる鼻つまみものにしか過ぎない。まず、「自己訓練」ということで前回参加した時よりも点数が増えたかを問題にすることが大事だという点をはっきり認識させる。さらにどの部門に参加することで入賞に近付くかを自分の設備と技量を勘案して“自分で”考えさせる(これは戦略と戦術の一部なのでコンテストに参加するにあたり重要なことである!)。このことがコンテストの醍醐味に繋がることを認識できると良い。
結論:
新しい人を入れるのは急務であるが、そのための教育を考える。コンテスト自体が面白いと感じるか、移動運用するのが楽しい、普段できない遠い局とも簡単にできる、多くの局とできるから楽しい、または単にアワードハンティングの目的として参加するなど、どれが楽しいと考えるかはその人次第なので、各人の希望にマッチした方向を考えてオリエンテーションする。
最後に:
このような戦略・戦術を考え抜いて非常に良い結果を残している例としてDXコンテスト(CQ WW-CW)でのVooDooコンテストクラブ(www.voodoocontestgroup.com)の優勝を目指したアフリカからのQRV(5V7A, 9G1AA, XT2DX, 5U5Uなど)がある。本にまとめてある(Contesting in Africa, Roger Western, Idiom Press)ので一度読んでほしい。