--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

「微生物ってなに?」

2007-01-17 | ふしぎ・なるほどー
昨秋、47次夏隊の福井さんから1冊の本が届きました。
「微生物ってなに?」という、私のような素人にも楽しく読める本です。


この本の「極限環境の微生物」という項を、福井さんが執筆されています。
昨夏、昭和基地周辺(宗谷海岸)の露岩域を中心に調査された微生物のことをはじめとして、地衣類や苔類についても触れられています。
47次での観測や調査について、速報性のあるものは新聞やインターネットを通して出ることがありますが、まとまって読む機会はまだ多くありません。
しかも昨夏は渡井さんが夏作業中だったこともあって、夏のオペレーションの情報はほとんど入ってきませんでした。
そういう意味でも、とても興味深く読ませていただきました。
内容についてあれもこれも書いてしまうといけないかな、と思うのですが、ひとつだけ紹介したいと思います。
それは、「コア」のことです。
「コア」という言葉は、現在ドームふじで掘削している「アイスコア(氷床コア)」で知ったのですが、47次を応援するようになって大きなプロジェクトのひとつ「海底堆積物(海底コア)掘削」を知りました。
恥ずかしながら同じ47次で、もう一つ堆積物の掘削をしていることは知らなかったのです。
福井さんたちは、露岩域に点在する湖沼の湖底堆積物から、藻類や細菌、原生生物などが採取されたのだそうです。
南極という生物にとっては厳しい環境であり、しかも南極の湖沼は氷床起源の水をたたえており、栄養が乏しいのだそうです。
その乏しい栄養分で藻類が光合成を行い、その有機物を原生生物などが利用して、それらの排泄物や死骸を微生物が分解して栄養分を藻類に供給しているという物質循環に感動する、と福井さんは書かれています。
氷床の雪解け水の中で独自の循環を作り出している生物の力強さを、もっともっと知りたいと思いました。

福井さんの書かれた項の他にも、地球の生い立ちから始まり、私たちの暮らしの中の微生物(食品、薬、農作物、工業や環境と微生物)、最新のテクノロジーまで、あらゆるところに関わっている微生物のことが分かりやすく書かれており、目から鱗が落ちることもたくさんです。
また、豆知識やコラムもとても面白いです。

ぜひ、皆さんも読まれてみてはいかがでしょうか。


☆ 福井さんは、47次の夏隊員であり、北海道大学の低温科学研究所の先生でいらっしゃるのですが、とても気さくで、47次の出発前にこのブログを通じて知り合ってから、私のようなものにも気軽に声をかけてくださいます。
「微生物ってなに?」も、福井さんのご厚意で進呈していただきました。

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