--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

XCTD集中観測

2007-02-27 | しらせ便り
<この記事は3月5日に書いています>
やはり読み解くのに時間がかかり・・というか、難しそうなので後回しにしたため遅いアップになってしまいました。
この日「今日も結構揺れているけれど、北北東の風で前後方向の揺れなのでかなり楽です」とメールがありました。
あまり横揺れとか縦揺れとか考えたことがなかった。
横揺れのほうが厳しいということなのですね。
それでは、渡井さんからの「しらせ便り」です。
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2007年2月26日(月)曇り時々雪 XCTD集中観測

今朝は0300に起きた。
太陽が昇るか昇らないかの時刻である。

これは明け方から始まるプリッツ湾でのXCTD観測のためだ。
この観測はプリッツ湾奥の氷舌下で形成される重い海水が、底水の起源になっているのでは?ということで計画されたのである。
重い海水が生成されるということは、地球上の海洋循環の源にもなっているかもしれないということ。
興味深い観測なのである。

XCTDというのは使い捨ての水温・塩分記録計。
他に一般的に使われるXBTは使い捨ての水温記録計である。
これらは細い2本の信号線とその先につなげられた使い捨てのプローブからなり、プローブには水温と海水の電気伝導度を測定するセンサーがつけられ、リアルタイムでその信号を船上で得ることができる。
塩分は水温と電気伝導度から計算できる。
深さはどうやって計測するのかというと、落ちていく時間を計ってそれに比例して深さを配分する。
海中ではプローブが一定速度で落ちていくことがわかっているので、逆算することができるのだ。

観測の方法は簡単だ。
プローブをセットしたランチャーはワイヤーでPCにつながれている。
PCのスタートボタンを押した後プローブをセットすれば、自動的に電気的な校正を行ってプローブ投下準備OKのサインが出る。
そこでピンを抜いてプローブを投下すれば、水温・塩分が自動的に計測できる算段だ。
PC画面にはリアルタイムでプロファイルが表示されるので興味深い。
残念なことは深度1100mまでしか測定できないこと。
このあたりの深度は3000m程度ある。

観測は大陸縁辺部に沿って経度にして5分おきに行われた。
船速は15ノットほどなので測点と測点の間は約50分。
1100mの深度に達するまでは約9分、用具準備や撤収も合わせると一回の観測にかれこれ15分ほどかかるので、中休みが35分ほどある勘定だ。
(しらせでは観測機器等を含めて用具というのだ。観測機器撤収は用具収めという。)
中途半端な時間であるがこれはこれで面白い。
今次隊で得られたデータは見ることができるので、鉛直分布を比較してみる。
うーん、ここはこんな変化だったのか!
ここではこんなに急激に水温が変化しているぞ!
ちょっとしか離れていないのにこんなに違う!
興味はつきない。

しかし残念なことに、氷海の張り出しが大きく、予定していた投下地点の半分ほどしかできなかった。
普段は船の風下側舷から行うのだが、海氷が多くなってくると船尾から行うことになる。
海氷が邪魔をして信号線を切断してしまうためだ。
船尾ではまだ海氷は少ない。
もっともスクリューが海をかき混ぜるので船尾で行うことはできるだけ避けたいのだが、背に腹は変えられない。
ところが海氷の密接度が高くなって、船尾で行っても信号線が切れるようになってしまった。
こうなれば成す術もない。
泣く泣く観測を諦め、氷海を離脱することになった。


#氷海ではないところでは横から

#氷海では船尾から行う。サイドで使っていた長い筒は使わないでそのまま投げ込む。

#PCの画面と関連機器

-----2007.2.26本日の作業など-----
・プリッツ湾XCTD集中観測
・観測隊アルバム編集委員会
・pCO2計、CO2計、O3計チェック
 大気中CO2計のラインが波しぶきと吹きすさぶ潮まじりの雨を吸い込んでしまった
 幸い乾燥剤でせきとめられご本尊までは達しなかった模様
 デッドボリュームの増加になるが水トラップが必要かも
・観測隊報告作成
・観測隊アルバム作成

<航海情報>
1811UTC +400 南緯65度56分 東経66度53分 自針56.1度 対水速度4.2kt
天気曇り 気温?度 真風向108度 真風速25m/s 相対風速27m/s

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eXpendable Conductivity-Temperature-Depth(投下式伝導度水温深度センサー)と書いてあるものがありますが、eXpendableが犠牲にしてよいという意味なので、使い切りタイプの観測機器ということになるのでしょう。
CTD(伝導度水温深度センサー)に比べると深度は稼げないし、塩分の測定精度は低いと書いてあり、それならCTDの方がいいのに・・と思ってしまうのですが、今回のように海氷が多くあるところでは、着水時に場所もとらないし、使い切りのため引き上げの時にプローブが破損しても大丈夫という利点があるし、ということが分かりました。
また、CTD観測と同域での観測結果が書かれているものを見ると、XCTD観測のポイントのほうが圧倒的に多く、要所要所でCTD観測が行われているといるようです。
XCTD観測はCTDのように大がかりではないので、回数を多く行えるということだったのですね。

CTD観測が内蔵されている圧力計から深度が分かるのに対し、XCTD(XBTも)はあらかじめ分かっている海中落下速度から深さを求めるというのが面白いなぁと思いました。
落下速度で深度を測るというので、船を止めて観測し、次の観測地点まで15ktで移動すると思ったのですが、側転と側転の間だが50分で観測にかかる時間が15分で35分の中休みと書いてあるので、航行しながらの観測のようです。
15ktいうとだいたい27km/hくらいでしょうか。
もちろんこの速度を勘定に入れた上でのプローブの落下速度が分かっているということなのですよね?


さて、XCTD観測の概要が分かってようやくなんのためにこの観測をするのか?というところにたどり着いたのですが、実はこの分野はずいぶん前にこども南極観測隊で知った後、昨年末に足を運んだ東京海洋大学海洋科学部付属 水産資料館 企画展 南極観測50年「南極海」その生態系と海鷹丸南極観測の足跡でさらに詳しく知りたいと思ったのですが、未だ勉強中なのです。
とても分かりやすかったこども南極観測隊の中の、「世界の海の深層流をうごかす南極の氷」を紹介して終わることにします。
もっと勉強したら私なりに記事にしてみたいです。

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