--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

宙空光学観測(1) 掃天フォトメーター

2006-05-25 | 南極だより・観測
この南極だよりは6月11日に書いています。
すっかり遅くなってごめんなさい。
それでは渡井さんの南極だよりです。
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2006年5月24日(水) 曇り 宙空光学観測(1) 掃天フォトメーター

オーロラの光学的観測装置としては、全天のオーロラ像記録を目的とした全天カメラ(ASI : All Sky Imager)と、磁気子午線方向のオーロラ発光の強度分布測定を目的とする掃天フォトメーター(SPM : Scanning Photo Meter)の2種類が代表的である。

掃天フォトメーター(SPM)は7つのレンズを串刺しのようにした形をしていて、かまぼこ型のドームに入っている。
それを串を中心にして、ほぼ北の水平線から南の水平線まで天空を掃くように約180°振らせることによって、7波長の1次元データをとることができる。
1回のスキャンにかかる時間は20秒だ。
検知器にはフォトマルが用いられていることもあって、強い光を最も嫌うのはこの装置だ。
現在では最新の測定器とはいえないが、7波長のデータが取れること、昔から使われてきたこともあってデータの継続性の面から現在も現役である。


-----本日の作業など-----
・論文
・海氷状況定点観測
・ゾル小屋雪かき
・オゾンインレット点検
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・温室効果気体濃度分析用大気サンプリング
・二酸化炭素精製用大気サンプリング
・二酸化炭素精製

<日の出日の入>
日の出  10:59
日の入  13:37
<気象情報5月24日>
平均気温-7.7℃
最高気温-6.6℃(0225) 最低気温-9.1℃(0812)
平均風速5.9m/s
最大平均風速12.7m/s風向E(1030) 最大瞬間風速15.4m/s風向E(1022)
日照時間 0.0時間

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5月23日の記事「灯火管制」に書かれていたフォトマルが使われている装置というのはこれだったのですね(他にもあるのかもしれませんが)。
フォトマルの原理は物質に光が当たったときに物質の中の電子が励起状態になり、光電子が飛び出す外部光電効果(光電効果には外部光電効果と内部光電効果があるらしい。CCDの原理は内部光電効果だそう)なのだそうです。
光が光電陰極に衝突して1つの電子に変換され、この電子が最初のダイノードという二次電子を倍増する電極?に衝突すると、たくさんの電子の放出が起こります。
複数(10個くらい入っているらしい)のダイノードで電子がどんどん増幅されるのだそうです。
オーロラの発光強度を観測するものなので、ターゲット以外の光が増幅される(検知される)と困ってしまいますよね。
だとすると月の光はどうなるのかな?
月の光の波長をとらえないようにすればいいから大丈夫なのかな?
でも、そうすると基地の明かりはどうしてダメなのかということになってしまう・・。
月は仕方ないにしても、避けられる光は避けようということなのでしょうか?
さて、少し戻ってレンズのことです。
7波長のデータをとると書いてあるのは、プラズマが衝突するものによってオーロラの色が違うのを利用したものなのでしょうか?
調べてみると掃天フォトメーターで観測されている波長には、以下のものがあるようです。
391.4nm:窒素分子イオン(far-purple),
427.8nm:窒素分子イオン(bllue-purple),
486.1nm:水素原子
557.7nm:酸素原子(green),
572.5nm
589.0nm:窒素分子(active red),
630.0nm:酸素原子(dark red),
670nm;窒素分子(ピンク色)
730.0nm:,
777.4nm窒素分子イオン,
847nm
あちこちから引っ張ってきたものなので、色や原子や分子や分子イオンが分かるものも分からないものもあります。
昭和基地の7波長はどれなのでしょうね?(この中にない波長もあるのかな?)

この装置で得られたデータはいったいどういうものなのか?
現在使われているところがあまり多くないからなのか、なかなかデータを見られるところがなかったのですが、一つだけ見つけました。
北海道で観測された低緯度オーロラ
1. Photometer Plot
6. Photometer Plot - 2
北から南に180°振って観測するというのがよく分かって興味深いです。
昭和基地のデータは、低緯度地域とどんなふうに違うのか見てみたいです。

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