--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

ドラム缶落とし!(後編)

2006-01-08 | 南極だより・作業
ドラム缶落としの後編でーす。

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2006年1月6日(金) 快晴 ドラム缶落とし!(後編)

ヘリポートからドラム缶を集積場に狙いをつけて転がす。
が、集積場までの道のりは舗装されておらず、小石が転がる悪路である。
しかも傾斜はキツイ。
石に跳ねられ思わぬ方向に転がることもしばしばだ。

そこで登場するのが方向修正係り。
ドラム缶の横から手に持ったタイヤをドラム缶の端に当て方向を修正するのだ。
当てる力を加減することで方向を変えることができる。
でもこの時ドラムの正面に立ってはいけない。
下手をするとドラムの下敷きになる危険性があるのだ。
時折大きくはじかれてあらぬ方向に行くこともある。
そんな時はタイヤをドラム缶に下に投げ入れ一旦止め、方向修正係りが力技でドラム缶をフェアウェイに戻すのだ。

その下流には微調整係り兼ブレーキ係りが必要だ。
集積場所までの距離によって必要人数は変わるが、2,3人ほどは必要だろうか?
ここでの微調整によって最後のドラム缶立てが楽になるか大変になるかが決まるので責任重大だ。
スピードが乗っている時は比較的まっすぐ進むので薄いタイヤを投げ込みブレーキをかけることもある。

木落とし坂をご存知だろうか?
諏訪大社下社の御柱祭の山出しの道中で、丸太の上に人が乗って坂の上から滑らせて落とす場所がある。
それほどここの傾斜は急ではないが、
国道や県道でこれほど急な勾配の坂を見ることは稀だ。
それほどの勾配はあるのである。
高低差は20mほどであろうか?
ところがドラム缶は丸くてよく転がる。
御柱では丸太は長手方向に落とすので、スリリング度はどっこいどっこいではないだろうか。

最後の集積係りは一番大変かもしれない。
5人ほど配置されているのだが、ドラムを完全に止め、砂地の上を集積場所まで運んでそれを立てなければならない。
ドラムを止めるのには幅のあるタイヤが有効だ。
タイヤを投げ込む際高さがある分ブレーキ力が強まるからだ。
2本を投げ込めばまず止まる。

ドラム缶を立てるときも位置を合わせて立てないと、立てるドラムの端がすでに立ててあるドラムの中ほどにつっかかってうまく立たない。

そんな時は要修正。
無理やり押し込むより、やり直した方が手っ取り早い。

今回集積したのは
黒いドラムの軽油(通称ウィンター軽油、略称ダブ軽)、
青いドラムの南極用低音燃料(通称南極軽油、略称南軽)、
紫のドラムの航空用ジェット燃料(JET-A1)、
水色の船舶用シリンダーシステム兼用油(通称エンジンオイル)、
緑の南極用不凍液(=クーラント)、
であった。

ちなみに各ドラム最下段までのヘリポートからの距離は
ダブ軽が64歩、
南軽が128歩、
JET-A1が96歩、
エンジンオイルが64歩、
クーラントが57歩、
であった。
ダブ軽の集積場所はヘリポートから斜め下方の位置にあるので
転がすのも方向転換するのもテクニックが必要だ。

---本日の私の主な夏作業---
・ドラム缶荷受
・しらせ船上観測機器引継ぎ
・オゾン計、47正副機平行ラン開始。
---本日の47次隊昭和基地の主な夏作業---
・第一夏宿胴ぶち打ち
・廃棄物処理
・NHK棟移築先捨てコン
・レドーム補修
・PANSYアンテナ立て
・ドラム缶荷受

<気象情報>
最高気温  1.1℃
最低気温 -4.5℃
平均気温 -1.7℃
平均風速 1.8m/s
日照時間 21.5時間

気象庁webより
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前編分と合わせて考えてみました。

必要な作業は全部で7つ。
・ヘリからドラム缶を転がす
・転がってきたドラム缶の方向を変える
・ドラム缶を一時保管しておくところまで運ぶ
・ドラム缶を坂から落とす!
・坂の途中で方向修正をする
・坂下で微調整及びブレーキをかける
・集積場所まで転がして立てる

しかし何というすごい作業。
「名物」と言われるだけのことはあるなぁと思います。
でも、かなり詳しく細かく書いてあるにもかかわらず、細かいところまではやっぱり分からないものですね。
ドラム缶の動きは大体分かるけれど、それぞれの係りはどの位置にどの角度で立っているのかとか、タイヤは縦に使ったり横に使ったり、投げたりしているみたいですし。
どちらにしても、この勢いでドラム缶が飛んできて、正面に立っていたら絶対に下敷きになるに違いない。
想像するとかなり怖いなぁと思うのでした。
このスリリングな作業を映像で見ることができないなんて、とっても残念です。

そうそう、前編をもらったときにメールで質問していたことがあったのです。
「ヘリポートから集積場所までは、どれくらいの距離があってどれくらいの高低差があるかも教えてね」
答えてくれてありがとう。
しかも、歩数で。
もしや、わざわざ歩いて数えてくれたのだろうか?

で、もっとも大事なことが書いてないんですね。
渡井さんはいったいどの役をやったんでしょう??
それで、その感想は?
そのうち聞いてみたいものです。

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