--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

亀裂発見

2006-03-23 | 南極だより・観測
この数日昭和基地はめっきり寒くなりました。
雪も数日おきに降るようになり除雪も次第に難しくなってきます。
このまま冬になるのでしょうか?
それでは渡井の南極だよりです。
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2006年3月22日(水) 曇り 大気サンプリングラインに亀裂発見 

もしかしたら、大気サンプリングラインに漏れがあるかもしれない。
なぜか急にそう思った。
このラインは文字通り大気をサンプリングするためのラインで、漏れがあるかどうかは通常サンプルを持ち帰って分析しないとわからないのだ。
大きな漏れがあれば音などで異常が発見できるのだが、小さい漏れの発見は難しい。
しかし、そんなことを言っていたら使えないサンプルを1年間採取してしまうことになる。
それだけは絶対に避けたい。

リークがあるかどうか手っ取り早く調べるのは、大気サンプリングラインで吸引した大気を分析してみることだ。
リークがあるならば、おかしな値がでてくるはず。
幸い隣では二酸化炭素濃度連続観測装置が常時稼動している。
というか大気サンプリングラインは二酸化炭素濃度連続観測装置の中に組み入れられているのだ。

ダイアフラムポンプ下流のSUS製フレキシブルチューブ(以下、フレキ)の出口で、連続観測ラインに繋ぎ換えて分析を行った。
ありゃ、出力の変動が大きくかつ通常の値より大分高いではないか。
5時間後、再度同じ実験をする。
やっぱり駄目。

これはどこかがリークし室内の空気を吸っている可能性が高い。
ということはポンプを含めた上流ラインの室内部分がもっとも怪しい。
となれば疑われるのはポンプ自身か、その上流のフレキだ。

ポンプを停止させてラインを分解し、それぞれに圧力を一時的にかける。
片方の端は閉じてあるので、リークがあれば圧力は減っていくのでリークの有無がわかるのである。
ポンプ上流側のフレキをチェックしたところ、圧力はどんどん下がる。
じゃじゃ漏れだ。
目視検査をしたところ、ポンプの吸気口から3cmほどのところに2箇所亀裂が見つかった。
これでは室内の空気をどんどん吸こんでしまうので、何をサンプリングしているのかはわからなくなってしまう。

亀裂はちょうど凹んでいる部分にありよく注意してみないとわからない。
それにフレキの曲がり具合によっては亀裂が閉じているようにも見える。
フレキのRがきつくなっていたところへ振動の影響が加わったことが原因だと思われた。
とりあえずフレキ新品と交換。
再び連続観測装置に繋ぎ換えたところ今度は通常の分析値とまったく同じ値を示す。
どうやら直ったようだ。

しかし、この方法は誰でも簡単にできるというわけではないし、出来たとしても毎回毎回チェックを行うわけにはいかない。
根本的な解決策が必要だ。
耐久性に優れるポリエチレンチューブやテフロンチューブを使ってはどうだろうか?
流している流量は数L/minほどもあるので、吸着や脱ガスの影響もフレキと比較して遜色ないであろう。


-----本日の作業など-----
・温室効果気体分析用大気採取
・炭素同位体比分析用大気採取
・二酸化炭素精製
・各種書類提出
 溜まっていたメール、書類をできる限り提出
・Linux
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・新聞係ミーティング
・カイワレ大根栽培
・大気採取ラインリーク報告

<日の出日の入>
日の出  6:25
日の入  18:30
<気象情報3月22日>
平均気温-12.7℃
最高気温-7.8(1726) 最低気温-17.6(2400)
平均風速5.5m/s
最大平均風速7.9m/s風向S(1140) 最大瞬間風速9.5m/s風向S(1140)
日照時間 0.0時間

                       <以上、3/23渡井アップ>
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<以下、3/30み・くり追記&画像アップ>
これは、通常観測しているCO2とは別に二酸化炭素濃度連続観測装置の中にサンプリングする部分があるということ?
大気サンプリングラインは二酸化炭素濃度連続観測装置の中を通ってシリンダーに詰められていくということなのでしょうか?
大気はポンプで吸わなくては採取できないから、二酸化炭素濃度連続観測装置の中のポンプを使っているということなのかな?
どちらにしても、お持ち帰り用の二酸化炭素サンプルを採取しているということなのですよね?
渡井さんが南極に行く前に、極研でガラス管にゆるゆるに詰めていたのは、こうやって詰められた二酸化炭素のサンプルだったのですね。
確かに日本に帰ってから、屋内の空気も一緒に吸い込んでましたというのでは1年を棒に振ってしまいますね。
丈夫そうに見えるフレキシブルチューブですが、吸気する振動で亀裂ができてしまうものなのですね。
根本的な解決策を講じたとしても、何があるか分からない訳だから毎回毎回チェックするわけにいかないとしても、突然漏れているかもと思う感に任せているわけにもいかないから、やっぱり時にはチェックしないといけないのかな。
今次は渡井さんが微量気体(温室効果気体)の専門家だから可能だけれど、そうでない時もあるというのだから難しいなぁと思います。
こういうトラブルに対応しているのはどの部門でも同じなんだろうと思うのです(先日のレントゲンもそうでしたし)。
細かいメンテナンスとトラブルシューティングをしながら越冬するってとても簡単にはいえないほど気を遣うものだと思います。

ん?でもこれって機械だけでなく、人間の体にも言えますよね?
機械もそれぞれ一つしかなかもしれないけれど、隊員さんの体もそれぞれ一つですから、お体にも気をつけてくださいね。
なんか、おかしな終わり方ですが。

疑問:
吸気していて、屋内の空気を亀裂のできたところから吸ってしまっても「漏れ」って言うんですね?
確かに逆の言葉は思い浮かばないんだけれど、漏れているというと流れ出ている感じがするので、とっても不思議。

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