ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

The Pleasure Trap

2007年10月17日 | T-U-V

Elizabeth Thornton. 2007. The Pleasure Trap. Bantam Books Historical Romance.

Trapトリロジーの3作目。
Book1: The Marriage Trap
Book2: The Bachelor Trap


リージェンシーという設定を全く無視してるところはトホホ…。
でもパラノーマルな部分やH/Hは気に入りました。

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

Ash Denison(爵位はあったように思うけど…)は、ナポレオン戦争で何年も戦ったので、英国に戻ってきてからは適当に毎日のほほんと楽しんでいました。
それでも、みんなに親切で有名なAshはある日、知り合いの頼みで、女流作家達が集まるシンポジウムに(シブシブ)行くことになります。
謎だらけの"Angelo"という作家が、上流社会のメンバー達の秘密を小説にして新聞に掲載しているのです。それが誰なのか探り出して欲しいと頼まれたのです。

シンポジウムで二人は出会います。
Eveはこれまで、Lord Denisonは人当たりが良くてマナーのよい紳士だといううわさを聞いていたのですが、時折見せる彼の思慮深く、且つ鋭いまなざしに気づきます。

Ashが謎の作家Angeloのことを調べ始めると、事あるごとにEveと遭遇。
そしてEveが危険な目にあうと、彼女を守ると決心します。

(今回のあらすじはかなり手抜き…


            
 

AARではC-と厳しい評価だし、アマゾンでも賛否両論のようですが、私は「最後まで本が置けなかった」派です。
おもしろいことに、AARの酷評を読むと、このお話が大きくこき下ろされているポイントが2つほどあるのですが、これが私がこのお話を気に入った部分でもあるんです。

AARでレビューを書いたDavisのネガティブなポイント、まず一つ目:

・"I had an issue with Eve's "Claverley charisma," starting with the term's overuse throughout the book. A bigger problem was that both eve and her mother were so gifted in so many areas I couldn't handle it. Eve could read the thoughts, character, and memories of people; she could trap another person in a dream with her, like with Ash [...]."

Davisは個人的にEveが持つ超能力に関するうんぬんが気に入らなかったようです。
この能力がどんなに特別で優れているかという描写がくどすぎるし、Eveも彼女の母親もこの色んな方面で使える才能というのにはうんざりしたそうです。例えば、Eveは人の考えや記憶が読めて、その人がどんな人物かもお見通しだし、他人と夢を共有することもできる、という才能。

Kの意見:
確かに、この能力の描写はたくさんあったけど、Eveの"人となり"を描写する上では、こういう普段私達が想像も付かないような能力を詳しく説明するのは避けられないことです。
リージェンシー時代に「私、超能力あるのよ」なんて言ってみてくださいよ。『異常者』としてタスマニア流刑だったら良いほうだったと思いますよ。
その辺のことをDavisは忘れていると思います。
だからThorntonがくどいほどこの「能力」がEveやEveの家族にとってどんなものか説明するのは重要なポイントなのに、Davisにはくどいだけだったんでしょう。

「私はパラノーマルファンだけど、これにはまいった!」みたいなことを言っていますが、それはパラノーマルファンだからこそ感じたことなんじゃないでしょうか。
パラノーマルのお話ではそうであることがお話の大前提だけど、リージェンシーという設定の中での位置づけとは全く違います。
私はパラノーマルは普段読まないコテコテリージェンシーファンだからこそ、こういう部分はすごく新鮮だったし、Eveの人となりを知る上でかなり役に立ちました。

あと、EveとAshが夜に同じ夢を見る部分に関しては、次のDavisのポイントをまず読んでから:

"[T]he addition of sensual derams in Eve and Ahe's relationship bothered me. It was such a big step for them, but it wasn't even real, not to mention the fact that they generally had better conversations in the dreams than they rarely had in the conscious world."

Davisは、EveとAshが夢の中で関係を築いていくという展開には全く納得がいかなかったようです。というのも、この夢の中で二人が(肉体的にも)大接近するんです。Davisは、これが関係を築く上でものすごく重要な役割を果たしているはずなのに、これが現実ではない(だからおかしい); 夢の中での会話のほうがたくさん重要なことを話している、と。

Kの意見:
この夢を通して二人が関係を築くのはDavisも分かっているじゃないですか。でも現実でも濃厚な会話をしないといい関係が築けないっていうのはDavisの言い分はおかしいです。(このお話に関しては、です。)
このお話では、二人だけが共有する特別な夢の中だったからこそ、そこでの会話ややりとりが重要な役割を果たすんです。
これが、AshとEveが起きている時の意識的にガードされている気持ちにいい意味で影響するんです。夢の中のほうが解放されているから、知らないうちに互いの本音を分かち合っていることにもなるし。(←二人はちゃんと後で気づきます)

このEveの、気持ちが通じ合える人と夢を図らずも共有してしまったという部分、Davisは"Trap"という言葉を使っていますが、この夢はEveのコントロールの効かないところで起こっていることを忘れてはいけません。

それに、私が読んだ限りでは、この同じ夢を見てしまうのはEveの超能力のせいだけじゃないという印象を受けました。
Ashはこれまでずーっと八方美人で誰にでも好かれてたのに、実は自分の本音の部分はガードしてた、ということになってます。
でも、それなのに、Eveのことは夢にまで見てしまうほど気になるんです。
それに夢はみるみる現実的になってきます。そして次にEveに実際に会うたびに、この夢のせいで彼女を見る目が違ってきます。
ちょっと、魔法にかかったような印象は確かにありますが、決してEveが意図的にやったことではないので、Ashを"Trap"「罠にかけた」という解釈は間違っています。
題名のように、Ashが「快楽の罠」にかかったというなら、それはEveという最適なパートナーと出会えたから、というもっと比喩的な意味での罠です。

さらにDavisは、「夢というのは二人の関係を築く手伝いをする役目じゃないといけない。新人作家は夢を使うなと言われているそうだが、今回その理由がやっとわかった」と言っています。
が、彼女のレビューからはその「理由」とやらがさっぱりわかりませんでした。
Thorntonのこの作品では夢がうまく使われていたというのが私の意見。このH/Hの二人が次にいつ夢を見るんだろうと、ドキドキしましたよ。

AshもEveも個人的には私の好みのH/Hではないけど、案外気に入りました。パラノーマルに関係を築いていく点も私は楽しめました。

私が気づいたこのお話の大きな欠点といえば、Wallpaper Historicalだっということ。言葉使いが特に、現代のアメリカ英語そのままで雰囲気台無しでした。


>>Spotlight on Elizabeth Thornton



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