ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

Slightly Sinful

2006年03月03日 | B
Slightly Sinful  By Mary Balogh (2004)

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine: 
Sensuality: 7.5

印象深いお話です。登場人物達の会話がとてもおもしろいジョークに満ちていて楽しめます。
ヒーローはBedwyn家シリーズの三男Alleyneです。以前紹介した「Slightly Tempted」のヒロインMorganの兄で、このお話の中では戦死してしまったのだとみんなあきらめ追悼式までやりました。Morganの結婚式が終わってみんなBedwyn家の邸宅Lindsey Hallに帰って来たときに、表のテラスに誰か立っているのを見つけたというところでこの話は終わっています。

今回の「Slightly Sinful」は、主人公Alleyneが妹Moganとブリュッセルで生き別れてから彼女の結婚式の日に帰って来る時までのお話です。

Alleyneはワーテルローの戦い終戦の前日、ウェリントン公爵にメッセージを届けた帰りの森の中で敵の弾にあたり落馬し、頭を強く打ち記憶を失ってしまいます。

ヒロインRachelはWenston男爵の姪にあたるれっきとした貴婦人ですが、男爵との縁は切れており、両親を失ったあとはとある貴婦人の付き添いとして働いていました。ですが、ヒロイン自身と友人達までをも巻き込む詐欺に合いお金をだましとられます。
ちょうど戦争も終わったので、戦死した兵士の死体からお金になりそうなものを取ってこようと一大決心をして森へ繰り出します。ですが、心の優しいヒロインはもともとそのようなことが出来るはずもなく、森の中で重傷を負って虫の息で横たわっているAlleyneを発見し助けます。

主人公が記憶喪失の話は恋愛小説にかぎらず結構あるお話ですが、これはオリジナルです。最初はAlleyneは全く記憶を取り戻す手がかりもなくて読者をイライラさせますが、記憶をなくしてまっさらな気持ちから人生をやり直すことに意義を見出すAlleyneの心理描写が最初から最後までよく描かれています。

Rachelは常に優しく思いやりにあふれており、ちょっと完璧すぎますが、Alleyneが「My guardian angel」と呼ぶのにふさわしい女性です。

Rachelと奇妙だけれどもサバサバとした友情関係を持った4人の売春婦達と、Alleyne救助を手伝ってくれたWill軍曹は脇役とは言いがたいほどにそれぞれ個性のある性格が描かれており、一人一人の顔が浮かびます。

ヒーローは記憶喪失で、ヒロインと友人達はお金を騙し取られたという精神的につらい状況にありながら、みんなでジョークを言い合って楽しむ軽快なダイアログはハート5つです。読んでいて実際にその場でにいるような感覚にとらわれ、みんなのジョークに吹き出してしまいます。

主人公達が二人だけで心のうちを明かしあうダイアログは、ジョークを言い合っておもしろおかしい時もあり、泣けてしまうほどに感動するものもあります。

情景がいつまでも心に残る質の良いロマンス映画を見るような感覚にとらわれるこの作品は、Baloghならではです。


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