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闇の列車、光の旅

2010年07月17日 23時22分06秒 | 映画 や行
評価:★★★★【4点】


ずいぶん前から観たかった本作、やっと鑑賞が叶いました。

今週末の三連休が最後のチャンスであり
これを逃したら、DVDになるのを待つしかなかったのです^^



少しでも良い生活を求めてアメリカを目指す中南米の
不法移民を巡る過酷な現実を背景に、
移民を乗せた列車で運命的に出会った一組の若い男女が、
苦難の旅路の中で心を通わせていく切なくも美しい姿を
リアルな眼差しで描き出していく衝撃の社会派ヒューマン・ドラマ。

ホンジュラスに暮らす少女サイラ。
父親は、彼女が幼いときにアメリカへと渡った不法移民。
ある日、その父親が強制送還され戻ってきた。

そして、今度はサイラも連れて再びアメリカを目指す。
父親の新しい家族と一緒に暮らすという提案に気乗りはしないものの、
父と叔父と共にメキシコへ向かい、そこからアメリカ行きの
貨物列車の屋根に乗り込むサイラ。
そんな無防備な移民たちを待ち構えていたのがリルマゴ率いる
メキシコのギャング団。
疑問を感じながらも彼らと行動を共にしていた少年カスペルだったが、
リルマゴがサイラをレイプしようとするのを見て、
ついにリルマゴを殺してしまう。

裏切り者として組織から追われる身となってしまったカスペル。
サイラは助けてくれた彼に恩義を感じ、その後を追ってしまうが…。
<allcinema>



ホンジュラスから十何時間もかけ、メキシコ発の列車を目指し
重いリュックを背負い、徒歩で移動するサイラたちの過酷なドラマが
丁寧に描写される。
貧しさから逃れるためアメリカを目指し
移民として貨物列車に乗ったサイラとその家族たち。

地元警察や国境警備隊の監視に細心の注意を払いつつ
列車の屋根に乗った数百人の移民たちはたがいに気使い励まし合っていた。

一方で、少年ギャング団に身を置きながらも
組織のなかで少しずつ“ズレ”を感じ始めていたカスペル。
メキシコ・ギャング団の抗争のなかで組織のボスに理不尽なことをされ
ギャング団にいる自分そのものに疑問を持ち始めていたカスペル。
ある日、組織の資金集めという名目から、貨物列車にのる移民をターゲットに
強盗をするカスペルとボスら三人がいた。

このふたつのストーリーが同時進行し、移民列車というひとつのアイテムで
それぞれの物語が、そこで遂に合体するという美味しい手法をとっている。

それにしても、どちらのストーリーも物凄くリアリティがあり
まるでドキュメンタリーでも見ているような緊張感が最初から最後まで
持続していくところが素晴らしい。


【ここからネタバレ注意】

そして、列車に乗る移民たちからなけなしの金を奪うという行為。
走る列車の屋根上で繰り広げられる強奪シーン。
そのときボスがサイラを見て「美味しそうな娘が居るぜ!」と吐き
父親らの目の前でレイプを始めるという惨い行為を見ていたカスペルは
次の瞬間、ボスの首に大型ナイフで切り付けたのです。

そうです!カスペルは数日前に、このボスから最愛の恋人を
レイプされた末に偶発的とはいえ殺されたのです。
これはサイラを助けたというより、ボスの行為が許せなかったといえるでしょう。

さて、ここから組織から逃げる立場になったカスペルと
そこにサイラが寄り添う形となって行きストーリーはさらに緊迫感が漂うことに。

これは久々に感情移入しまくりの映画だったと思いました。
登場人物のほぼ全員のその気持ちが痛いほど伝わってくる脚本。
これを書いたケイリー・ジョージ・フクナガは長編作初監督という。
実際に中央アメリカから列車で北上する移民らに同行し資料を集めたそうです。



追記)
・闇夜に忽然と現れる貨物列車の轟音とライトが『未知との遭遇』に感じた。
 あのライトが“希望の光”に見えてしかたなかった。

・「サルマ・ハエックにそっくりな美人だぜ!」メキシコ少年ギャング団も
 ときには映画も観るんですね。このボス、案外と映画ファンだったりして。
 たしかに、サルマ・ハエックのデビュー前に似てました(って想像ですけど)

・ギャング団に与えられる武器にも格付けがあるようです。
 まずはナイフ、次にエアガン(手作り?)、そして銃、さらにマイ銃。
 そう、ギャング団のなかの自分の位置づけと同等のようだった。

・カスペルの相棒はまだ小学6年生くらいか?この子が最後に
 かなり重要なシーンで大活躍する。美味しいところをかっさらうとも^^;

・追うギャング団が各支部に連絡し連携してカスペルを追い詰めるところは
 まるで特殊警察なみの動きであった。フランス警察よりも格上ですかね^^;

・死んでしまった最愛の彼女がけっこう美人であり、カスペルのその無念さが
 痛いほど伝わってくる自分がいました。
 このカスペルを演じた青年は無名の俳優さんだそうです。
 なかなかの美形で、その脱力感、冷めた演技などを見ると今後オファーが
 どっと舞い込んでくるような予感がします。

・地元警察に発見されてしまった父と叔父。原因はサイラの身勝手な行動が原因。
 あれだけ家族は離れずに!と言っていたのに。しかもそのせいで没。アーメン。

・壮大な映像がとても綺麗。列車に乗る移民たちの希望がそこから感じられる。

・上映前のロビーにて、他の女性客から名演の映画の割引に付いて問われ
 「ココの劇場は会員になってないので」と言おうとしたらワタシの持っている
 チケットと番号札を見てスタッフでないことが分ったようです^^;

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監督:ケイリー・ジョージ・フクナガ
脚本:ケイリー・ジョージ・フクナガ
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
音楽:マルセロ・サルボス


出演:エドガル・フローレス/パウリナ・ガイタン/クリスティアン・フェレール


『闇の列車、光の旅』

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8 コメント

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☆ご紹介の画像から☆ (TiM3)
2010-07-18 00:50:15
何故だか、アーネスト・ボーグナイン車掌の襲って来る(=^_^=)『北国の帝王』って作品を連想しちゃいました。
もしくは『ポリス・ストーリー3』(の終盤)とか・・

ああ、だいぶ暑さにやられてるなァ・・(=^_^=)
返信する
これはお薦め映画かも (ituka)
2010-07-18 01:24:06
TiM3さん こんばんは。

列車上の移動というのは、いろんな映画で登場してそうですね。
ワタシが好きな列車系映画といえば『カナディアン・エクスプレス』辺りです^^

本作のヒロインが好きになるかどうかで評価が変わってくるかもしれませんが
ワタシ的には、とびっきりの美人とは思えなかったけど
段々と可愛いかも!と思えてきたのは、他に娘っ子が出てなかったからともいえます^^;



返信する
これは (ぺろんぱ)
2010-07-18 21:24:04
私も観に行く予定です。
京阪神では公開がもうちょっと先です。(T_T)
観たら再訪させていただきます!
返信する
愛知の方が早かったのですね (ituka)
2010-07-18 21:43:13
ぺろんぱさん こんばんは。

通常では第三の都市といわれる愛知は、ミニシアター系はいつも最後の方でしたが
本作はこちらの方が早かったんですね^^

これは期待通りの秀作でした。
脚本がいいと、こんなにも素晴らしい作品が出来るんだな~と思いましたよ^^
返信する
観て参りました (ぺろんぱ)
2010-08-08 21:54:25
劇場スタッフに間違われたitukaさん、こんばんは。(*^_^*)

車窓から、じゃなくて、車上からの眺め(風光)が美しく、できれば平和な暮らしの中でそれを見せて挙げたかったという思いが込み上げました。

カスペル(ウィリー)役の青年俳優に心惹かれ>今後オファーがどっと舞い込んで
そうなるといいなぁと思います。

親指の件、「生き残りの人間達」の何らかのコミューンに属していて、そこを脱する時或いは何かの掟を破った時の罰則であったのかもしれないっていうような記述を目にしましたが・・・原作を読んでいないので真相は分かりません。

涙のタトゥーが哀しかったです。
それを消すウィリーの姿が更にもっと切なかったです。
返信する
おっと!^^ (ituka)
2010-08-09 00:28:07
ぺろんぱさん こんばんは。

遂にご覧になったのですね。鑑賞お疲れ様です。

例の女性客は「映画6本観ると、フランス映画のみ無料鑑賞・・」とかなんとか言ってましたので
スタッフのように応えようとしても無理でした(笑)

>できれば平和な暮らしの中でそれを見せて挙げたかった

世界中の悲惨な現状を映画として観ることができるのは平和に暮らしている私たちだけなんですよね^^;
こういう映画によって貧困層を援助しようとする富豪が現れないものでしょうか!^^
いや、政治的になんとかするべきでしょうね。

>涙のタトゥーが哀しかったです。

首にあった“母さん、すまない!”でしたっけ?
あれのインパクトもかなりありました^^
涙のタトゥを消す行為に女性は心奪われるんですね〆(。゜Д゜。)ノメモっとくね

親指の件、ありがとうございます。
これで確信しました。ワタシも某巨大掲示板のなかで原作を読んだひとが言うにそんなことが書いてありました。
ただ、ガイくんのは別件で紛失したようです^^
返信する
映画代。 (BC)
2010-08-15 11:03:09
itukaさん、こんにちは。
私の地方では先週からの上映だったので
itukaさんとこのほうが上映が早かったのですね。
そう言えば『縞模様のパジャマの少年』もitukaさんとこのほうが上映が早かったな~。

>「サルマ・ハエックにそっくりな美人だぜ!」メキシコ少年ギャング団も
 ときには映画も観るんですね。

貧困な社会の少年でも映画代はあるのでしょうね。^^

>このカスペルを演じた青年は無名の俳優さんだそうです。

そうだったのですね。
新人とは思えないぐらい堂々としていたし、
演技も上手かったですね。
返信する
たぶん、ジャンクビデオだったりして (ituka)
2010-08-15 11:49:19
BCさん こんにちは。

そうだったんですよね!
『縞模様のパジャマの少年』のときもこちらの中部の方が早かった^^
よく覚えて居てくれました。嬉しいです^^

顔前面にあんなタトゥをいれて、映画を見ながら泣くこともあるでしょうから
そのギャップに、想像すると可笑しいです^^;

カスペルくんは演技上手かったですよね。
あの若さで、しかも経験もないのに、監督さんにすべてのシーンで
何通りもの演技をして見せて、そこから選んでもらったらしいです(苦労人やね)^^
返信する

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