(み)生活

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ep第9話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-02-19 16:21:48 | ガラスの・・・Fiction
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新春公演『紅天女』は、まるでそうなることを見越していたようにロングラン公演となった。
マヤは舞台上で紅天女になれることに喜びを感じ、何度舞台に立っても新たな発見と
次への挑戦欲を高めた。
幕が下りた後はいつも、この激動の一年を振り返る。
そして、思い出すのは、初日の舞台ーーー

**
「月影先生!!!」
マヤの初日を観るために、そして何より『紅天女』復活を見届けるために、
千草は上京してきた。
薄氷を踏むような危うい体調なのは変わりがないが、今は紅天女を後身に託せた安堵からか、
穏やかな表情をしている。
「どうでしたか???私の・・・・紅天女は??」
着替えるのもとりあえず、マヤは矢継ぎ早に千草に尋ねた。
「すばらしかったですよ・・・。あなたの紅天女は。これこそ、紅天女です。」
そういって優しく微笑む千草の顔を見た瞬間、マヤの目から大粒の涙が流れ落ちる。
「おやおや舞台を降りたらいつもの普通の女の子に戻ってしまったようだな。」
そう言ってにこやかに二人の所に近づいてきたのは、他ならぬ真澄だ。
「速水さん・・・」
「よくやったな、マヤ。素晴らしかったよ」
そういう真澄の顔は、どこまでも優しい。
いつからだろう、人前でこんな表情を隠さずにするようになったのは・・・・。
千草はこれまで知っていた真澄の冷たく、決して人に本性を見せない鋼鉄の顔を思い、
ここまで変わった理由がマヤにあること、そしてそんな二人の関係が、
今日のこの素晴らしい紅天女の礎となっていることを悟った。
「マヤ、あなたの目には本物の恋の炎がありましたよ。全ての物を包み込む慈愛と、
 自分の命よりも大切な、一真への思い。
 あなたが観客みんなに魂の片割れのリアリティーを感じさせていました。」
千草の言葉は、マヤにとって何よりの励まし。
千草は、マヤが紅天女に新たな息吹を与えたことに、心から喜びを感じていた。
それは、かつて自身が尾一蓮に思いを託した、あの紅天女とはまた異なる、
今の時代の、天女だった。
“一蓮、私とうとうやり遂げました。あなたの紅天女を、復活させることができた・・・
 あなたは喜んでくれていますか・・・?そして私を、褒めてくれますか・・・”

初日後のパーティーがあるからと、準備のためマヤがその場を離れると、
真澄は千草に尋ねた。
「で、月影先生、これからどうなさるおつもりですか?また梅の里に戻られるのですか?」
「私のやるべきことはこれで本当にもう全て終わりました。
 マヤの紅天女を見届けて、私はもう思い残すことはありません」
そう語る千草の顔はどこまでもさっぱりしていて、まるでもうこの世に未練などないというようだった。
「月影先生、思い出に浸って余生を過ごすのも悪いことではありませんが、どうですか?
 今しばらく体を優先に、ちゃんとした治療を行うというのは・・・」
「・・・真澄さん、私は先ほども言った通り、もうやり残したことなどありません。
 あとはただ穏やかに、暮らしたい。そしていつか一蓮の元へ、・・・・その時は・・・」
そういう千草の意志は固く、梅の里に戻る決意は揺らぐことはなさそうだ。
「それならせめて月影先生、向こうでの最低限の医療的対応と、生活の保障をさせて頂けませんか?」
「それはどういう意味です?真澄さん。
 あなたはまだ、私の紅天女に固執しているの?それとももしや・・・」
速水英介・・・あの人の指示で?と問う千草に、真澄はゆっくりとかぶりを振った。
「いえ、これは僕の個人的な申し出です。それともこういえば理解して頂けますか?・・・これは・・・」
紫のバラの人からの、お礼だと言えば・・・・・。
そう語る真澄の目は、真剣だった。
「紫のバラの人は、北島マヤさんの先生である月影さんの事を大変案じています。
 北島マヤさんが安心して舞台に集中できるよう、何かあったらまた指導を賜れるよう、
 月影先生にはいつまでも長生きして頂きたいと思っています。」
「・・・・真澄さん・・・・あなた・・・・あなたが・・・・」
「そして、速水真澄自身としても・・・、僕はもう見たくないんですよ。」
そう言って一瞬下を向き、拳を握りしめた真澄。
再び顔を上げたその目には、熱い思いが燃えていた。
「マヤが、また大切な人を失って悲しみにくれる姿を・・・・、もう二度と・・・・」

**
真澄と千草が話をしているその頃、マヤはマヤで一つの事実に直面していた。
「素晴らしい舞台でしたね」
そう声をかけられたマヤが振り返るとそこには、車いすにのった男性がいた。
「パフェのおじさん!!!」
駆け寄るマヤ、しかしここは関係者以外立ち入り禁止のエリアのはず。
「おじさん、どうしてここに入れたの?観客の方はみなもうお帰りになっているはずじゃ・・」
「おやおや、そういえばわしはまだ、あんたに自己紹介をしてなかったかのう。
 わしはこの劇場の関係者じゃよ。」
そういうと、そばにいた秘書に名刺を手渡させた。
それを受け取ったマヤは、その名刺に書かれた文字を読んで息をのむ
「大都グループ会長・・・・速水・・・・英介・・・!?」
「いつもうちの息子がお世話になっていたようじゃな」
速水さんの、お義父さん!!
「ゲジゲジの大将!?」
思わず大声を上げたマヤに、英介の周囲の人間が驚き焦るのと対照的に、
英介はいつものような大声で笑った。
「はっはっはっはっはっはーーー!!そうじゃ、わしがその、ゲジゲジの大将じゃよ!!」

**
大都劇場ロビーでの『紅天女』再開公演初日を祝う会は、正月2日という事も相まって
大変な華やかさで開催された。
取材記者たちの数もさることながら、ありとあらゆる演劇関係者がその場にいたと言ってもいい。
そしてその記者たちの質問はやはり、主役である北島マヤに集中した。

「あ~~~、えっと・・・その・・・、幸せでした。やっと紅天女になれたんだなと思って・・・」
相変わらずの記者対応に、遠くで常に気にしていた真澄も思わず苦笑いをする。
そんな真澄の横に、英介が現れた。
「北島マヤと、話をしたよ」
真澄の背中が凍りつく。

真澄と紫織の婚約解消、最後まで立ちはだかったのは英介だった。
鷹宮側は、紫織が自らの体調不良が招いたことだと説明し、
いまだ安定しない精神状態を回復させるためにも、真澄から自立して一人静養することを
強く求めると、何より孫娘がかわいい鷹宮会長はそれ以上この縁談を進める意欲など
わきようもなかった。
そして真澄と紫織の間に、今までは感じなかったある意味での強い信頼関係があることを
見抜いた会長は、大都側にペナルティを求めるようなことはせず、
ただビジネスとしての関係を維持する形でソフトランディングしていった。

しかし英介からすれば、非常に納得がゆかない。
もう少しで、鷹通の全てを手に入れることが出来ていたのに、
真澄が紫織とあのまま結婚してさえいれば。
結婚に愛など求めない英介からすれば、真澄の決断ははなはだ甘くぬるいものであり、
ビジネスマンとして有り得ない結果だった。
たとえ紫織がどれほど病弱であろうとも、心身を病んでいようとも、
血縁すら信用しない英介にとっては、大した問題ではなかった。
書類上、形式上夫婦になるだけで構わない・・・。
しかしそれを真澄は拒絶し、婚約を破棄した。
大都がこうむる損害は最小限に抑えるよう最善の努力をするという事、そして
もし、それでも英介が納得しないというのなら、速水家を出ていくことも辞さないと。
そうまでして、紫織との結婚を拒否した理由は・・・・。
自分にあって真澄にないもの、そして真澄にあって自分にないもの・・・・
英介は一つの想定をしていた。

「紅天女はどうなったんだ?」
「素晴らしい舞台になったと思いますが・・・・」
英介の質問がその答えを求めていたのではないことは分かっていたが、
あえて真澄はそう答えた。
「手に入るのか?大都に?」
「・・・さあ、それはどうでしょう。僕自身、どうなるか分かりませんしね。」
「紅天女」の上演権は北島マヤ個人の物となっている。
今回の公演は、演劇協会が設立した紅天女上演実行委員会が執り行った。
裏で実質の制作にかかわったのは確かに大都芸能であるが、独占ではない。
今後の焦点は、北島マヤがどこの芸能事務所と契約をするのかに集まっている。
「北島マヤと、何を話したんですか?」
今度は真澄から質問した。
「それをお前に話す必要はない。」
「じゃあなぜそのことを僕に言ったんです。話すつもりがないなら言う必要もないではないですか?」
「以前、わしは確かにお前に言ったはずだが・・・?」
お前がやらなければ、わしがやると・・・・
「・・・!?お義父さん、何をお考えですか?」

その時、マヤに記者の質問が飛んだ。
「北島さん、今後どこか芸能事務所に所属するおつもりですか?」
「フリーで今後もやっていくんですか?」
「確執があると言われている大都芸能が今回の制作には関わっていますが、そのことについて何か?」
矢継ぎ早の質問に目をくるくるさせるマヤを助けようと、とっさに真澄が動こうとしたその時・・・
「北島マヤさん、お届けものです・・・」
マヤと記者の間に割り込むように、大きな紫のバラの花束がマヤの手に届けられた。
「紫の・・バラ・・・」
小さな体にいっぱいのバラの花をそれはそれは大切そうに抱えたマヤは、
しばらくその幸せの余韻に浸ったのち、記者の方を向き、
「とりあえず今は、紅天女の事だけを・・・・。今後の活動については、そして紅天女の今後の上演については
 幕が下りてから改めてお答えします。」
としっかりとした口調で話した。

「紫のバラの人・・・か。いったい誰なんじゃろうな。」
そう言いながら英介はちらりと真澄の方を見た。
先ほどマヤに花を届けた配達人・・・、見覚えがあるような・・・。

紫のバラを抱えるマヤの写真は、翌日の新聞でも大きく取り扱われ、
紅天女の舞台成功とともに、マヤの演劇人生を語るエピソードとして取り上げられた。
当初1ヶ月の予定だった舞台は、早々に3月末までの上演延長が決定したが、
更に興味を持った人々が殺到し、すぐにプラチナチケットと化した。
そして今回観ることの出来なかった人々からの熱烈な再上演を希望するメッセージが
上演委員会に届き、早くも来年以降の紅天女に向けての話が出ている。
しかし上演権はマヤが保有している。全てはマヤの意志次第。
こうして、日本を熱狂の渦に巻き込んだ『紅天女』の3ヶ月が瞬く間に過ぎて行った。


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
なんだか微妙に伏線チックな表現がちりばめられていますが、
まだオチを悩んでいるだけだったりして・・・。

そういえば紫のバラの人カミングアウトは既にしてたけど、
缶ジュースのおじさんカミングアウトはまだだったことを思い出し、
挿入しました。
悩みどころは、カミングアウトせずにマヤにかまかけて真澄の事ゲロらせるか、
先にカミングアウトしてから真澄とのことを聞くのか・・・。

いわゆる悪英介だったら絶対最初のやり方だと思うのですが、
英介もマヤにメロメロだしな~~~、あと老いてきてるし・・・とか
悩みました。
で、結局、どうしたんでしたっけ??あ、まだ書いてないや。
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