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読了しました:ローマ人の物語(3)

2004年07月30日 | (旧)イタリアへ行きたい
「新しい国家の設立、または旧制度の徹底的な改革は、一人の人間が単独でなすべきことである。」(マキャベッリ)

本書では、ポエニ戦争においてあれほどにも良く機能した、元老院主導による少数指導体制が、戦後の環境変化に適応できずに統治能力を失っていく有様が描かれます。既得権益のカタマリと化した元老院はまさに「抵抗勢力」、これに真っ向から挑んだグラックス兄弟は、無惨な最期を遂げます。しかし、元老院勢力は、彼らの改革(それは時代の方向性に沿った、合理的なものであったのですが)をつぶすことには成功したものの、これに代わる政策を打ち出し、実行していくことができません。結局、「実力者」個人の手によってしか事態が打開できないことが、あらわになっていくのです。スッラが強権をふるって元老院主導体制をテコ入れしたにもかかわらず、彼の死後にこれがたちまち瓦解していったことは象徴的です。「少数による集団指導体制」が、それを強制する個人の力なしには機能しないというのですから。

大きな成功をおさめたシステムが時代の変化に合わなくなったとき、これを変革することがいかに難しいか。
今現在の日本に生きる私たちにとって、まったく、他人事でない話です。
冒頭のマキャベッリの言葉のように、旧制度の徹底的な改革は、一人の人間の強力なリーダーシップによってしかなしえないものなのかもしれません。そうすると、歴史上の岐路にさしかかった一国家が、さらなる興隆の道に進めるか、衰亡への道をたどるのかは、ちょうどこの時に、ふさわしい力量をもった人物を生み出せるかどうかにかかっているのかもしれません。

そして、ローマはこのとき、「彼」を得るのですが...それは次巻の話になります。

ローマ人の物語III:勝者の混迷
塩野 七生 1994年 新潮社

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