「ダークナイト」を見ました

2010-04-15 10:37:05 | Weblog
クリストファー・ノーラン監督        ワーナー


宇多丸さんの本、「シネマハスラー」でも取り上げていた映画です。宮崎哲弥さんも面白かったとお話ししていたこともあり、見てみました。「バットマン」というアメコミ作品の映画化ですが、その原作は読んだことがありません。またクリストファー・ノーラン監督作品も初体験です。が、そういうもろもろを入れてもかなり面白かったです。


ゴッサム・シティーという架空の治安が大変悪い都市が舞台で、大富豪青年実業家であり、1人自警団のようなヒーロー、バットマンでもあるブルース(クリスチャン・ベール)は警部補ゴードン(ゲイリー・オールドマン)と協力して街の治安を回復するべく日夜努力を続けている。そんな中、マスクを被った男たちが銀行強盗を行っていた、仲間を殺しながら。最後に残った男は、ピエロのようなメイクを施した男ジョーカー(ヒース・レジャー)。ジョーカーには常識という概念が無いかのように、次々と手段を選ばない行為が行われていきます。それは恐ろしくもありますが、それだけでなく日常がいかに暗黙の了解によって成り立っているか?を突きつけてきます。そんなジョーカーの出現に、治安を乱すギャングも、取り締まる警官も、秩序を乱されていくのですが・・・


まず、バットマンというヒーローが、生身の人間であり、超能力を有したいわゆる正義の塊ではない、人間である、というところが、最近の流行でもあると思いますが、ドラマに奥行きを持たせる設定になっていて面白く感じました。私の子供のころは勧善懲悪な世界が(ウルトラマンや仮面ライダーとか)広がっていましたが、より現実に即した感じで(最初に意識し出したのはやはりガンダムのアムロでしょうか?)、良いと思います。善を行う行為の中に悪が含まれる可能性を常に意識させられ、自意識の葛藤を深く描くのはやはり面白いです。所詮善対善の世界(自分の側には自分なりの善がある)でしかないわけですし。


そのうえでのジョーカーの存在が、演じているヒース・レジャーの迫力も相まって圧倒的存在感です。このジョーカーとバットマンの対峙というかコインの裏表感が非常に面白く感じました。ジョーカーは何事にも価値を認めず、相手にその刷り込まれた価値の本当の意味を考えさせる存在として、刷り込みの暴き手として描かれています。当たり前ですが、刷り込みがあるからこそ、普通の社会通念や常識があるのですが、その根底に疑いを持たせ、その欺瞞性を突いて来ます。そしてバットマンを強く悩ませます。バットマンに選択を強いる形になるのです。常にジョーカーが能動的であって、バットマンは受動的なのです。引用になってしまいますが、全くの同感だったので書きます、宇多丸氏と同様に私も、ある行為の後の清々しく風にそよぐ、パトカーから顔を出したジョーカーの顔が素晴らしかったと思いました。


ジョーカーの言葉や行動がほとんど読めないうえに、整合性が無いにも関わらず説得力があったり、考えさせられたりするのがとにかく面白かったです。架空の都市ゴッサム・シティーに起こる騒動を非常にシリアスに描いた傑作だと思いました。


果たしてバットマンはジョーカーに勝てたのでしょうか?いろいろと見た人と話したくなる映画で面白かったです。


シリアスなヒーローものに興味のある方に、演技に圧倒されたい、と言う方にオススメ致します。

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