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人外の人

2007年03月26日 | 歴史
「人外の人」とは、人であって人でない人が、身分制度のうるさい時代にはつくられて差別された。

江戸時代の医者も方外の人として区別された。
頭を坊主にして僧形をさせられているのは、世捨て人を制度として形取らされているのであろう。将軍・大名という貴人に接近して、ときにその皮膚にまで触れるのは普通ならその身分も尊貴でなければならないので、この世に存在しない人間であるという約束事が必要になり、それがために世捨て人の姿をとらされ、名も僧名を名乗らされる。それも正規の僧でなく、中世に大量に出た私度僧に類縁させられた。

殿中の雑用をする茶坊主たちも、おなじ意味で「方外」とされ、医者と似た僧形をとらされた。

王朝のころは、真言・天台の祈祷僧が昇殿の資格はなくとも天子や后妃に近づき、ときには祈祷のためにその肉体に触れ、出産に関する祈祷の場合は産道に触れたりする。
そのことは僧は浮世の人ではないという約束事の上に成立しているが、医官が貴人を診察治療する場合、考えようによっては祈祷僧と類似するということで僧形をとらせることに、いつのほどかなったのであろう。


                      『胡蝶の夢』司馬遼太郎著より

                                     つづく





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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-05-07 21:56:32
町医者や村医は、町人百姓身分。
御殿医や藩医は武士身分。

茶坊主は、同心や徒士と同じ下級侍で武士身分ですね。

ちなみに大名身分の公家も、身分外身分ですね。
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ご指摘の身分について (iina)
2009-05-08 10:43:00

          調べてみました。

なるほど、「町医者や村医」の身分は、町人百姓のようです。
「花神」の村田蔵六がそうであったと司馬遼太郎が書いていました。

「御殿医」や「藩医」の身分は、武士。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E6%AE%BF%E5%8C%BB

茶坊主は、初代・林家正三の
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E5%AE%B6%E6%AD%A3%E4%B8%89
によると、
「茶坊主を勤める。後、その武士の身分を捨て」とありますから、
「茶坊主」の身分は武士。

「公家」に大名身分とは?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E5%AE%B6
には、「公家社会は幕末まで温存されたが、明治維新期に解体され、
公家のほとんどは華族身分へ移行」とあります。
江戸時代でも「武士」と「公家」は厳然と区分されていたように思われます。
従って、江戸時代の「公家」の身分は、「公家」と思いますが・・・?

ともあれ、本題「人外の人」の趣意は、「浅草弾左衛門」です。
http://blog.goo.ne.jp/iinna/e/d1cf2ecbc0adcf6a718e6bcb81a3c097
個人的には、ご指摘の身分にはこだわりをもちません。

しかし、とても勉強になりました。
    ありがとうございました
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