<AM8:00> 鶴屋北口ガーデンス
文化祭終了後の告白の後、俺とハルヒは付き合い始めた。
その翌日、水族館デートをし、勢いか流れか知らないが『鶴屋北口ガーデンス』へ行った訳だ。
『また来れば良いさ、デートは今日だけじゃ無いからな』
『それじゃ次のデートは此処に来るわよ』
確かにそうは言ったものの、まさか本当に来るとは。
しかも翌週早速だぜ。 さすがハルヒ、いや俺達か。
高校2年、11月末の日曜。 俺達は『鶴屋北口ガーデンス』の前に立っていた。
土曜定例の探索の後、俺の家に泊まったハルヒ――あ、やましい事は何もしてないぞ。 探索が終わった後、スーパーで夕飯の食材を買い、俺の家でハルヒ特製のすき焼きを食べ、俺の部屋で妹交えカードゲームをやり、ハルヒの布団は妹の部屋にあるからハルヒは妹と一緒に寝ただけだ。
そう言う事にしてくれ、詳細は禁則事項だ。 まあ、若い男女だ、その、何だ、色々と持て余していたので……。
「キョン! どの映画にするの?」
「ハルヒは何か見たいのあるか」
「特に無いけど……あ、アレなんかどう?」
どれどれ。 ん? 『メイドの土産2 ~余命1ヶ月の略奪愛~』って何だそりゃ!?
「まあ、他に面白そうなの無いし。 良いか」
「決まりね。 ちなみにカンフーアクション物らしいわ」
タイトルの何処からも想像出来んが。
『鶴屋北口ガーデンス』はとにかく広い。 伊達に『西日本最大級』を誇ってる訳では無い。
まあ、メインのショッピングモールは10時開店なので、先ずは映画を見る事にした。
映画は9時からなので予めチケットを購入し
「おい、ハルヒ」
「何?」
「何だそれは」
「見て解らないの? ポップコーンよ。 あ、キョン、ドリンク持って」
「はいよ。 ってオイ、朝あれだけ食べてもう喰うのかよ」
「映画と言ったらコレでしょ」
「定番は嫌いじゃ無かったのかよ」
「うっさいわね、キョンにはあっげな~い♪」
「そんなに一人で食う気かよ」
どう見てもLサイズです、本当にありがとうございました。
肝心の映画だが
「ん、まあ予想よりは良かったな」
「まだまだね。 あたし達の作った映画に比べたら」
本気で言ってるのか、この人は。 まあ、それでこそハルヒなのだが。
「次の文化祭は映画撮るわよ!」
「おいハルヒ、本気か? 来年は受験だぜ」
「何言ってるのキョン。 両立させるに決まってるでしょ!」
やれやれ、もう来年の文化祭の心配をしなければならんのか。
<AM11:00> ランチタイム
「……ハルヒさん?」
「何よキョン、急に改まって」
「もう昼食ですか」
「決まってるじゃない、休日のショッピングモールは戦場よ! 正午キッチリに昼食なんて呑気な事言ってたら食事にありつくまで無駄な時間を過ごすのよ」
確かに人出が多いから、まともに12時に食事なんて言ってたら混雑に巻き込まれ……って
「そうは言っても、さっきポップコーンのLサイズを食べたばっかりじゃないか。 朝も朝で、すき焼きの残りを丼にして食べて、よく入るな」
「あったり前じゃない。 食事は元気の源よ!」
ハルヒパワーの源は食事だったのか。 まあ、そんな所も好きな訳だが、正直――おっと、惚気てる場合では無かったな。
「うっぷ」
「だらしないわね。 男のくせに」
勘弁してくれ、胃袋の限界に挑戦しに来た訳じゃ無いぞ。
「よく入るな。 その体の何処に入るんだ?」
「運動してれば消化されて吸収……って、何処見てんのよ!」
「何処って、何処に吸収されるのかハルヒの体を見てるだけだが」
「このエロキョン!」
はて、何を勘違いしているのやら。
「と、とにかく少しノンビリさせてくれ。 胃が苦しい」
「それじゃ屋上に行きましょ♪」
エスカレーターで屋上に上がれば秋晴れの空が頭上に広がる。
ベンチに腰掛け……ん、何だハルヒ
「ほ、ほら。 横になりなさい」
先に座ったハルヒは膝にポンポンと手を当て
「お、膝枕か」
サンキュ、ハルヒ。
「気持ち良い?」
「ん、ああ」
「どっちが?」
「どっち、とは?」
「……秋風と、あたしのフトモモ」
な、何を仰っているのかな、ハルヒさん!?
「……り、両方だ」
間抜け面になってないだろうか、俺。
ちなみに、この屋上。 児童遊具もあったりして、子供達の声で賑やかだ。
そして毎正時(00分)になると音楽と共に噴水がリズミカルに水を放出する演出がある。
お、もう正午か。 ハルヒのフトm……じゃ無かった、膝枕と離れるのは名残惜しいが、何時までも此処に居たらガーデンスの半分も回れなくなるからな。
<PM12:30> 女性服売り場
「…………」
ちなみに今日は長門は居ない。 当然俺とハルヒの2人きりのデートだからな。 よって今の3点リーダは俺の物だ。
そんな風に俺に台詞を出させなくなった理由は、コレだ。
「ねえキョン、どの服が似合う?」
どうして、こうも女性の服選びと言うのは時間が掛かるのか理解に苦しむ。
屋上から店内に戻り、かれこれ約2時間、女性服売り場をあちこち回りながら過ごしている訳である。
「……なあ、ハルヒ」
「何よ」
「お前は何を着ても似合うぞ」
「さっきも聞いた。 もうキョンったら、もっとこう具体的に感想を言ってみなさいよ」
具体的に? この俺に女性ファッションを語れ、と!? 全く畑違いも良い所だ。
「そうだな……まあ、こんな時に他人を引き合いに出すのもハルヒに失礼とは思うが、身近に居る女性と比較してみよう。 まず朝比奈さん。 あの方は白のワンピースの様な清楚な感じのファッションが似合うだろう。 そして長門。 あいつは制服姿が印象に残るが、短い髪型からしてボーイッシュな格好も良いかも知れん。 それに対してハルヒ、例えばワンピースを着たとしよう。 ファーストデートの時思ったのだが、時間を忘れて見とれてしまう程のオーラを漂わせる。 普段の活発な印象とは180度逆転させる位、それこそ清楚なお嬢様を形にしたかの様な、お前の別の一面を引き出していた。 変わって上着から見てみよう。 Tシャツを着たハルヒは普段の活発なイメージをそのまま出して眩しい程だ。 しかも出ている所は出ている体のラインを……はっきり言って他の野郎には見せたくない、俺が独占したい位だ。 もちろんボタン付きのジャケットを着てもハルヒの魅力が減る事は無いがな。 言葉が貧相でスマン。 俺のボキャブラリーが不足している。 そしてスカート。 ミニスカートを穿いたハルヒの太腿は眩しすぎて直視出来ん。 当然俺以外の奴が見たら死刑を宣告してやりたい位だ。 デニムの短パンも同様だ。 Tシャツとデニムの短パンの組み合わせはラフな格好としては最強だ。 まあ、通常のジーンズを穿かせても活動的なハルヒの魅力を落とす事は無い。 普段着のハルヒも捨て難いが、学生服のハルヒも正直たまりません。 ついでに言わせて貰うなら体育の時のポニーテール+体操服のハルヒは鼻血が出そうだった。 ちなみにバニーガールの衣装、あれはもう人前で着る事はまかりならん! 俺の前だけにしろ。 季節は過ぎてしまったが、水着姿のハルヒは……って、どうしたハルヒ?」
ハルヒを見ると顔を真っ赤にして俯いてる。 どうした、具合でも悪いのか?
そして店員が若干引いている様に見えるのは恐らく気のせいだろう。
<PM2:30> 男性服売り場
「キョン、普段のあんたは地味過ぎるのよ!」
「地味で悪いか。 派手にした所で似合わないのは自覚している」
「反論は受け付けないわ。 あたしが見立ててあげるから、黙って来なさい!」
女性服売り場の次は男性服売り場ですか。 俺の服は構わないから別の所に行こうぜ……と言っても反論の余地無し、か。
よりによって男性服売り場の中でも、俺が普段寄りもしないジャンルの服売り場に来た。
「別に俺の服は良いよ、特に欲しい服無いし」
「いいから試着しなさい!」
「へいへい」
仕方無いので言われるがまま試着してハルヒに見せる。
う~む、どことなくステージの時の衣装に似ているな。 何故か胸元がはだけてるし。
「…………」
今度の3点リーダはハルヒの物だ。
どうした、真っ赤な顔して俯いて。 そんなに似合ってないか?
「ちょっと来なさい!!」
うおっ、ハルヒ!? 急にどうした。 おい、まだ服の代金払って無いし。
それ以前にこの服欲しい訳じゃ……って聞いちゃあいねー。
「代金? はいっ!」
おっ、ハルヒが払ってくれるのか、サンキュー。 って、おい! 俺を何処へ連れて行くんだ? そんなに強く手を引っ張るなって。
導かれるままに向かった先は人気の少ない非常階段であった。
「どうしたんだハルヒ」
やっと立ち止まったかと思ったら
「キョキョキョキョキョ~~~~~~ン!!!!」
急に抱きしめられたかと思ったら、むごっ!
「!?」
く、苦しい!
とてつもなく激しいディープキスをかまして来やがった。
「……ぶはっ、は、ハルヒ!?」
「あ、あ、あんたのその格好、反則的に似合ってるのよ~~!!」
いかん。 は、ハルヒが壊れた?
「あ、あ、あ、あたし、『キョン萌え』なのよ~~!!」
(続きは省略されました)
<PM3:00> ティータイム
色々歩き回って疲れたな。
あと、先程は別の意味で疲れたが。
「何よキョン、文句あるの?」
「別に文句は無い。 情熱的なハルヒも好きだ」
「あんたこそ、発言がストレートになってるわよ」
「これでも自重してる」
お、もう3時か
「歩き疲れただろ? 少し休むか」
「良いわよ。 あ、アイス食べたい!」
そんな訳で通り掛かったフードコートでアイスを食べる事にする。
「本当に丸一日過ごせるな」
「そうね、また来ても良いわね」
「そうだな。 そろそろクリスマスだし、さっきのツリーも夜はイルミネーションを点灯させるらしいから、見に来ても良いかもな」
思い返せば、あと一ヶ月弱でクリスマス。
ガーデンスの吹き抜けには既にクリスマスツリーが飾られていて、12月の週末の夜にはイルミネーションを点灯させるとイベントボードに書いてあった。
「クリスマス、かぁ」
「どうするハルヒ、何かイベントでもやるのか」
「そうね。 SOS団全員でパーティやるのは決定だけど、キョンの家とあたしの家、夜はどっちで過ごす?」
「……出来れば誰にも邪魔されずに2人きりで過ごしたい」
「……ばか」
所で俺よ、二人きりで過ごすって、何処でだよ?
おまけに今日の俺、発言がストレート過ぎるな。
ちなみに俺は抹茶、ハルヒはストロベリーのアイスを食べている訳だが
「キョン、美味しい?」
「ん、ああ。 しつこくない甘さで美味いぞ」
「あたしのも美味しいわよ」
「そうか」
「あたしの食べてみる?」
次の瞬間
「あ~ん♪」 !?
「ほらキョン、口開けて」
「あ、ああ」
――これじゃ完全に『バカップル』だ。 え、何を今更って? ええい、五月蝿い!
「あ~ん」 パクッ
「うん、美味いな」
「でしょ! あ、キョン」
「ん、何だ」
「う・ご・か・な・い・で♪」
言葉と同時にハルヒの人差し指が俺の口元に近づいて来た
「口元についてるわよ」
指先でなぞった後
『ペロッ』
「おいしい!」
「いや、お前。 それまで同じの食べてただろ」
「何よキョン、文句ある訳?」
「いや、無いぞ。 あ、俺のも食うか?」
「食べたいっ! あ~ん♪」
待て待てハルヒ! 俺も『あ~ん』やれってか!?
「仕方無いな、ほらよ。 あーん」
「あ~ん♪」 パクリ
「うーん、美味しい!」
あの~、周囲の皆様、見世物じゃありませんので生暖かい視線はご遠慮願います。
<PM5:00> 帰宅
フードコートを出た俺達はゲームセンターでエアホッケーで遊んだり(結果はハルヒの圧勝、当然だろ)プリクラを撮ったりして過ごした。
プリクラの写真? とりあえず1枚は互いの携帯に張ったが、見たいか?
そして色々と店舗を冷やかしで回って
そう言えば丸一日居るんじゃなかったのかって? まだ建物全てを回りきれていないのは事実だ。
それは次回のお楽しみにするとして
「今日の晩御飯はハルヒ特製ビーフシチューだったっけ」
「そうよ、楽しみ?」
「楽しみだとも、ハルヒの作る料理で不味いのに当たった事は無いからな。 しかし、何時の間に作ったんだ?」
「木曜日には下ごしらえ済んで金曜日、キョンが泊まりに来た時に完成させたのよ」
知らなかった、流石ハルヒだ。
「あ、それじゃあ次の金曜日の夜も何か作ってあげるからウチに来なさい!」
「おい、ハルヒ。 作るにしても時間掛かるだろ? 団活終わってからでも間に合うのか」
「大丈夫よ。 下ごしらえは、あらかじめ済ませておくから」
「サンキュ、悪いなハルヒ」
今日は一日中、俺達は腕を組んで歩いていた。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎると言うが、まさに実感した一日だった。 まあ、ハルヒと居る毎日が、全て短く感じるのだがな。
あぁ神様。 何故、一日は時間しか無いのでしょうか?
「なら、一緒に住む?」
「それは、流石にまだ早いだろう。 まだ高校生だぞ」
「一緒に住めば離れる事は無いのに……全く、変に堅いんだから」
「一般論を述べただけだ。 本音は正反対だ」
気が付けば夜9時。 明日は残念ながら学校だ。
「それじゃ、明日。 迎えに行くから」
「ああ、待ってるぞハルヒ」
「おやすみ、キョン」
「おやすみ」
ハルヒの家で夕飯を頂き、ハルヒの部屋で話をして、ハルヒの家の門の前で別れのキスをする。
この瞬間は少し切ない。
ハルヒも同じ気持ちだろう、きっと。
家までの道程はとても長く感じる。
明日の朝が早く来る事を願いながら、一人淋しく家路についた――。
『Back-Apple Gardens』 ~Fin~
文化祭終了後の告白の後、俺とハルヒは付き合い始めた。
その翌日、水族館デートをし、勢いか流れか知らないが『鶴屋北口ガーデンス』へ行った訳だ。
『また来れば良いさ、デートは今日だけじゃ無いからな』
『それじゃ次のデートは此処に来るわよ』
確かにそうは言ったものの、まさか本当に来るとは。
しかも翌週早速だぜ。 さすがハルヒ、いや俺達か。
高校2年、11月末の日曜。 俺達は『鶴屋北口ガーデンス』の前に立っていた。
土曜定例の探索の後、俺の家に泊まったハルヒ――あ、やましい事は何もしてないぞ。 探索が終わった後、スーパーで夕飯の食材を買い、俺の家でハルヒ特製のすき焼きを食べ、俺の部屋で妹交えカードゲームをやり、ハルヒの布団は妹の部屋にあるからハルヒは妹と一緒に寝ただけだ。
そう言う事にしてくれ、詳細は禁則事項だ。 まあ、若い男女だ、その、何だ、色々と持て余していたので……。
「キョン! どの映画にするの?」
「ハルヒは何か見たいのあるか」
「特に無いけど……あ、アレなんかどう?」
どれどれ。 ん? 『メイドの土産2 ~余命1ヶ月の略奪愛~』って何だそりゃ!?
「まあ、他に面白そうなの無いし。 良いか」
「決まりね。 ちなみにカンフーアクション物らしいわ」
タイトルの何処からも想像出来んが。
『鶴屋北口ガーデンス』はとにかく広い。 伊達に『西日本最大級』を誇ってる訳では無い。
まあ、メインのショッピングモールは10時開店なので、先ずは映画を見る事にした。
映画は9時からなので予めチケットを購入し
「おい、ハルヒ」
「何?」
「何だそれは」
「見て解らないの? ポップコーンよ。 あ、キョン、ドリンク持って」
「はいよ。 ってオイ、朝あれだけ食べてもう喰うのかよ」
「映画と言ったらコレでしょ」
「定番は嫌いじゃ無かったのかよ」
「うっさいわね、キョンにはあっげな~い♪」
「そんなに一人で食う気かよ」
どう見てもLサイズです、本当にありがとうございました。
肝心の映画だが
「ん、まあ予想よりは良かったな」
「まだまだね。 あたし達の作った映画に比べたら」
本気で言ってるのか、この人は。 まあ、それでこそハルヒなのだが。
「次の文化祭は映画撮るわよ!」
「おいハルヒ、本気か? 来年は受験だぜ」
「何言ってるのキョン。 両立させるに決まってるでしょ!」
やれやれ、もう来年の文化祭の心配をしなければならんのか。
<AM11:00> ランチタイム
「……ハルヒさん?」
「何よキョン、急に改まって」
「もう昼食ですか」
「決まってるじゃない、休日のショッピングモールは戦場よ! 正午キッチリに昼食なんて呑気な事言ってたら食事にありつくまで無駄な時間を過ごすのよ」
確かに人出が多いから、まともに12時に食事なんて言ってたら混雑に巻き込まれ……って
「そうは言っても、さっきポップコーンのLサイズを食べたばっかりじゃないか。 朝も朝で、すき焼きの残りを丼にして食べて、よく入るな」
「あったり前じゃない。 食事は元気の源よ!」
ハルヒパワーの源は食事だったのか。 まあ、そんな所も好きな訳だが、正直――おっと、惚気てる場合では無かったな。
「うっぷ」
「だらしないわね。 男のくせに」
勘弁してくれ、胃袋の限界に挑戦しに来た訳じゃ無いぞ。
「よく入るな。 その体の何処に入るんだ?」
「運動してれば消化されて吸収……って、何処見てんのよ!」
「何処って、何処に吸収されるのかハルヒの体を見てるだけだが」
「このエロキョン!」
はて、何を勘違いしているのやら。
「と、とにかく少しノンビリさせてくれ。 胃が苦しい」
「それじゃ屋上に行きましょ♪」
エスカレーターで屋上に上がれば秋晴れの空が頭上に広がる。
ベンチに腰掛け……ん、何だハルヒ
「ほ、ほら。 横になりなさい」
先に座ったハルヒは膝にポンポンと手を当て
「お、膝枕か」
サンキュ、ハルヒ。
「気持ち良い?」
「ん、ああ」
「どっちが?」
「どっち、とは?」
「……秋風と、あたしのフトモモ」
な、何を仰っているのかな、ハルヒさん!?
「……り、両方だ」
間抜け面になってないだろうか、俺。
ちなみに、この屋上。 児童遊具もあったりして、子供達の声で賑やかだ。
そして毎正時(00分)になると音楽と共に噴水がリズミカルに水を放出する演出がある。
お、もう正午か。 ハルヒのフトm……じゃ無かった、膝枕と離れるのは名残惜しいが、何時までも此処に居たらガーデンスの半分も回れなくなるからな。
<PM12:30> 女性服売り場
「…………」
ちなみに今日は長門は居ない。 当然俺とハルヒの2人きりのデートだからな。 よって今の3点リーダは俺の物だ。
そんな風に俺に台詞を出させなくなった理由は、コレだ。
「ねえキョン、どの服が似合う?」
どうして、こうも女性の服選びと言うのは時間が掛かるのか理解に苦しむ。
屋上から店内に戻り、かれこれ約2時間、女性服売り場をあちこち回りながら過ごしている訳である。
「……なあ、ハルヒ」
「何よ」
「お前は何を着ても似合うぞ」
「さっきも聞いた。 もうキョンったら、もっとこう具体的に感想を言ってみなさいよ」
具体的に? この俺に女性ファッションを語れ、と!? 全く畑違いも良い所だ。
「そうだな……まあ、こんな時に他人を引き合いに出すのもハルヒに失礼とは思うが、身近に居る女性と比較してみよう。 まず朝比奈さん。 あの方は白のワンピースの様な清楚な感じのファッションが似合うだろう。 そして長門。 あいつは制服姿が印象に残るが、短い髪型からしてボーイッシュな格好も良いかも知れん。 それに対してハルヒ、例えばワンピースを着たとしよう。 ファーストデートの時思ったのだが、時間を忘れて見とれてしまう程のオーラを漂わせる。 普段の活発な印象とは180度逆転させる位、それこそ清楚なお嬢様を形にしたかの様な、お前の別の一面を引き出していた。 変わって上着から見てみよう。 Tシャツを着たハルヒは普段の活発なイメージをそのまま出して眩しい程だ。 しかも出ている所は出ている体のラインを……はっきり言って他の野郎には見せたくない、俺が独占したい位だ。 もちろんボタン付きのジャケットを着てもハルヒの魅力が減る事は無いがな。 言葉が貧相でスマン。 俺のボキャブラリーが不足している。 そしてスカート。 ミニスカートを穿いたハルヒの太腿は眩しすぎて直視出来ん。 当然俺以外の奴が見たら死刑を宣告してやりたい位だ。 デニムの短パンも同様だ。 Tシャツとデニムの短パンの組み合わせはラフな格好としては最強だ。 まあ、通常のジーンズを穿かせても活動的なハルヒの魅力を落とす事は無い。 普段着のハルヒも捨て難いが、学生服のハルヒも正直たまりません。 ついでに言わせて貰うなら体育の時のポニーテール+体操服のハルヒは鼻血が出そうだった。 ちなみにバニーガールの衣装、あれはもう人前で着る事はまかりならん! 俺の前だけにしろ。 季節は過ぎてしまったが、水着姿のハルヒは……って、どうしたハルヒ?」
ハルヒを見ると顔を真っ赤にして俯いてる。 どうした、具合でも悪いのか?
そして店員が若干引いている様に見えるのは恐らく気のせいだろう。
<PM2:30> 男性服売り場
「キョン、普段のあんたは地味過ぎるのよ!」
「地味で悪いか。 派手にした所で似合わないのは自覚している」
「反論は受け付けないわ。 あたしが見立ててあげるから、黙って来なさい!」
女性服売り場の次は男性服売り場ですか。 俺の服は構わないから別の所に行こうぜ……と言っても反論の余地無し、か。
よりによって男性服売り場の中でも、俺が普段寄りもしないジャンルの服売り場に来た。
「別に俺の服は良いよ、特に欲しい服無いし」
「いいから試着しなさい!」
「へいへい」
仕方無いので言われるがまま試着してハルヒに見せる。
う~む、どことなくステージの時の衣装に似ているな。 何故か胸元がはだけてるし。
「…………」
今度の3点リーダはハルヒの物だ。
どうした、真っ赤な顔して俯いて。 そんなに似合ってないか?
「ちょっと来なさい!!」
うおっ、ハルヒ!? 急にどうした。 おい、まだ服の代金払って無いし。
それ以前にこの服欲しい訳じゃ……って聞いちゃあいねー。
「代金? はいっ!」
おっ、ハルヒが払ってくれるのか、サンキュー。 って、おい! 俺を何処へ連れて行くんだ? そんなに強く手を引っ張るなって。
導かれるままに向かった先は人気の少ない非常階段であった。
「どうしたんだハルヒ」
やっと立ち止まったかと思ったら
「キョキョキョキョキョ~~~~~~ン!!!!」
急に抱きしめられたかと思ったら、むごっ!
「!?」
く、苦しい!
とてつもなく激しいディープキスをかまして来やがった。
「……ぶはっ、は、ハルヒ!?」
「あ、あ、あんたのその格好、反則的に似合ってるのよ~~!!」
いかん。 は、ハルヒが壊れた?
「あ、あ、あ、あたし、『キョン萌え』なのよ~~!!」
(続きは省略されました)
<PM3:00> ティータイム
色々歩き回って疲れたな。
あと、先程は別の意味で疲れたが。
「何よキョン、文句あるの?」
「別に文句は無い。 情熱的なハルヒも好きだ」
「あんたこそ、発言がストレートになってるわよ」
「これでも自重してる」
お、もう3時か
「歩き疲れただろ? 少し休むか」
「良いわよ。 あ、アイス食べたい!」
そんな訳で通り掛かったフードコートでアイスを食べる事にする。
「本当に丸一日過ごせるな」
「そうね、また来ても良いわね」
「そうだな。 そろそろクリスマスだし、さっきのツリーも夜はイルミネーションを点灯させるらしいから、見に来ても良いかもな」
思い返せば、あと一ヶ月弱でクリスマス。
ガーデンスの吹き抜けには既にクリスマスツリーが飾られていて、12月の週末の夜にはイルミネーションを点灯させるとイベントボードに書いてあった。
「クリスマス、かぁ」
「どうするハルヒ、何かイベントでもやるのか」
「そうね。 SOS団全員でパーティやるのは決定だけど、キョンの家とあたしの家、夜はどっちで過ごす?」
「……出来れば誰にも邪魔されずに2人きりで過ごしたい」
「……ばか」
所で俺よ、二人きりで過ごすって、何処でだよ?
おまけに今日の俺、発言がストレート過ぎるな。
ちなみに俺は抹茶、ハルヒはストロベリーのアイスを食べている訳だが
「キョン、美味しい?」
「ん、ああ。 しつこくない甘さで美味いぞ」
「あたしのも美味しいわよ」
「そうか」
「あたしの食べてみる?」
次の瞬間
「あ~ん♪」 !?
「ほらキョン、口開けて」
「あ、ああ」
――これじゃ完全に『バカップル』だ。 え、何を今更って? ええい、五月蝿い!
「あ~ん」 パクッ
「うん、美味いな」
「でしょ! あ、キョン」
「ん、何だ」
「う・ご・か・な・い・で♪」
言葉と同時にハルヒの人差し指が俺の口元に近づいて来た
「口元についてるわよ」
指先でなぞった後
『ペロッ』
「おいしい!」
「いや、お前。 それまで同じの食べてただろ」
「何よキョン、文句ある訳?」
「いや、無いぞ。 あ、俺のも食うか?」
「食べたいっ! あ~ん♪」
待て待てハルヒ! 俺も『あ~ん』やれってか!?
「仕方無いな、ほらよ。 あーん」
「あ~ん♪」 パクリ
「うーん、美味しい!」
あの~、周囲の皆様、見世物じゃありませんので生暖かい視線はご遠慮願います。
<PM5:00> 帰宅
フードコートを出た俺達はゲームセンターでエアホッケーで遊んだり(結果はハルヒの圧勝、当然だろ)プリクラを撮ったりして過ごした。
プリクラの写真? とりあえず1枚は互いの携帯に張ったが、見たいか?
そして色々と店舗を冷やかしで回って
そう言えば丸一日居るんじゃなかったのかって? まだ建物全てを回りきれていないのは事実だ。
それは次回のお楽しみにするとして
「今日の晩御飯はハルヒ特製ビーフシチューだったっけ」
「そうよ、楽しみ?」
「楽しみだとも、ハルヒの作る料理で不味いのに当たった事は無いからな。 しかし、何時の間に作ったんだ?」
「木曜日には下ごしらえ済んで金曜日、キョンが泊まりに来た時に完成させたのよ」
知らなかった、流石ハルヒだ。
「あ、それじゃあ次の金曜日の夜も何か作ってあげるからウチに来なさい!」
「おい、ハルヒ。 作るにしても時間掛かるだろ? 団活終わってからでも間に合うのか」
「大丈夫よ。 下ごしらえは、あらかじめ済ませておくから」
「サンキュ、悪いなハルヒ」
今日は一日中、俺達は腕を組んで歩いていた。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎると言うが、まさに実感した一日だった。 まあ、ハルヒと居る毎日が、全て短く感じるのだがな。
あぁ神様。 何故、一日は時間しか無いのでしょうか?
「なら、一緒に住む?」
「それは、流石にまだ早いだろう。 まだ高校生だぞ」
「一緒に住めば離れる事は無いのに……全く、変に堅いんだから」
「一般論を述べただけだ。 本音は正反対だ」
気が付けば夜9時。 明日は残念ながら学校だ。
「それじゃ、明日。 迎えに行くから」
「ああ、待ってるぞハルヒ」
「おやすみ、キョン」
「おやすみ」
ハルヒの家で夕飯を頂き、ハルヒの部屋で話をして、ハルヒの家の門の前で別れのキスをする。
この瞬間は少し切ない。
ハルヒも同じ気持ちだろう、きっと。
家までの道程はとても長く感じる。
明日の朝が早く来る事を願いながら、一人淋しく家路についた――。
『Back-Apple Gardens』 ~Fin~
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