夜明けのダイナー(仮題)

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SS:Sea Side Story

2011年03月06日 19時44分45秒 | ハルヒSS:シリーズ物
     
   <Scene1:Summer Holiday>

 
  高校2年の夏休みがやって来た。 今年も宿題なんて、さっさと終わらせてSOS団全員で楽しむんだから!!
 

7月・最後の日曜日、皆で海に行こうと決めた。 でも、その日、あたしとキョン以外は用事があると言って来なかった。
キョンは残念そうな顔してたけど……そんなにみくるちゃんの水着姿が見たかったのかしら。 相変わらずのエロキョンよね!
あんたが後から来たんだから、今日は――なんて、あんたばっか、お金を出させるのも悪いから今日は割り勘で良いわよ。
え? あたしだってそんな気分の時もあるわよ。 ほら、ちゃっちゃと行く!!

あいつの手を引っ張り駅に向かう。 また「やれやれ」と言いながらついて来る……そんなに2人きりが嫌なの? 何故かイライラする。
 
  何故って? 何故かは解らないけど。
 
マルーンカラーの電車から、シルバーの電車に乗り換える。 あたし達を乗せた電車は、海沿いを西へ走る。
今日は生憎の曇り空。 雨は降らないって言ってたから当然、傘なんて持って無い。
 
海に着いて早速着替え泳ぐ。 今日の水着はお気に入りの一枚。
天気が良ければ日焼けする為に寝転んでも良いかな、って思ったけど、今日は2人なんだし。
――2人で何するの? 只、泳ぐだけ? あいつは何をやるにしても、つまんなそうにしてるし。
 
 
 
  何を一人ではしゃいでるんだろ? あたし。
 
 
 
『オトモダチ』のまま、この夏を迎えて、そのまま過ぎて行くんだろうか? この気持ちのモヤモヤが晴れぬままに。
 
「あ」

空から落ちてきた水滴は、やがて一面に降り注ぐ滝の様に……折角2人で来たのに、何も楽しめないまま帰るのか。
 
 
 
  あたしの頬をつたうのは、雨? それとも――
 
 
 
 
  <Scene2:Sunset Beach>
 
時は過ぎ、8月最後の日曜日。
今度はあたしから「2人で海へ」と誘った。 あいつは「やれやれ」なんて言ってたけど、満更でも無い表情だ。
 

この夏、5人で色んな事して楽しかった。 そして、あたしは、自分の気持ちに気付いていた

  『キョンが好き』 って事に

でも、好きの一言が言えず、このまま夏を終えようとしていた。
 
あたしから言えないのは『気付いて欲しい』とか格好付けた理由じゃ無く『この関係が壊れるのが怖かった』から。
キョンの気持ちを知るのが怖かったから、伝えられずに……でも、手を繋いでも以前みたく、あたしが引っ張るのでは無く、こうして隣に並んでくれるのは期待して良いのかな?
って、少し自惚れてみる。 昔のあたしじゃ考えられない。
 
 
 
  そう、あたしは変わった。 あいつによって。
 
 
 
そして、また来た。 あの海に。 
今日は快晴。 デッキ・チェアにパラソルをレンタルして、サンオイルを塗ってもらう……何か緊張するわ。 何でかしら? ただサンオイルを塗ってもらうだけなのに。
 
一日中、泳いだり、話をしたり、食事したり。
 
焼けた肌、白いシャツ。 波打ち際を2人で歩く。 
気が付けば陽が沈む。 手を繋いで、あたしは歌う。 お気に入りのラブ・ソングを。
 
気付いてくれたら嬉しいけど、このままでも良いとも思う。
 
 
 
  そして何も言えないまま……夏はもう終わるのに――
 
 
 
 
  <Scene3:She’s Leaving Home>
 
 
 
月日は流れ、あたし達は大人になった。
 
 
 
変わらないと思っていた、あたしの部屋。 
いつも寝ていた布団・毎日向かっていた机・そして、その横の写真立ての中の『あいつ』。
クローゼットの中は全て整理した。 あるのは学生時代の制服と、着なくなった洋服だけ。
 
 
 
  そう、あたしは、この部屋を出て行く。
 
 
 
今年の夏、キョンにプロポーズされた。 そして明日、あたしは苗字が変わり、あいつと一緒になる……ううん、一緒になれる。
 
写真立ての中、キョンの寝顔から、あたしとのツーショットに変わっていた。
さよなら夏の日の思い出、切なかった日々。
 
 
 
あたしは幸せになる。 あいつと一緒に居れば、満たされる自分が居る。 繋いだ手、もう離さない。
 
 
 
  そして夏が来る度、あの海へと。 2人で――
 
 
 
  <Sea Side Story>   ~Fin~


 
 









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