俺とハルヒは今、新大阪駅に居る。 それは何故か?
今から東京へ日帰りデートするからだ。
俺とハルヒがどうして付き合い始めたか。 なんて言うのはど~でも良い話で、今までに数多くのSS作品が投下されているので各自、お好みの作品で補完してくれ。 と言う事で
「キョン! 早く行くわよ!!」
「へいへい」
朝6時半、こんな朝っぱらから新幹線に乗り込む訳である。 駅弁を買い座る席は進行方向左側、2人掛けの席だ。
「はい、キョンの分」
「サンキュ」
「やっぱ旅行と言ったら駅弁よね!」
「確かにな。 各地の名物駅弁を食べる、ってのも悪く無いよな」
「じゃあ、次の旅行は『日本全国・駅弁食べ尽くし』よ!!」
マジか!? こいつなら実行しそうで怖いな。
定刻になり、すべるように列車は発車し、続いて車内案内が放送される。
『皆様おはようございます。 この列車は、のぞみ102号・東京行きです――』
おや、何処かで聞いた事のある声だな。
『担当運転士は新川・田丸、車掌は田丸・森・古泉が終点・東京まで……』
「ぶほあっ!!」
何やってるんだ機関! 新幹線ジャックか!?
「ちょっと! きったないわねキョン、何やってんのよ?」
「只今より乗車券・特急券を拝見致します」
おいおい、よりによって古泉が担当する号車かよ。
「古泉君、何やってんのよ」
「おや、涼宮さん。 彼もご一緒ですね? デートですか。 僕は見ての通りバイトですよ」
「ふーん、頑張ってね!」
新幹線の車掌のバイトなんて聞いた事無いぞ。 まあ、実際に無いがな。
弁当を食べ終え車窓に視線を移す。
名古屋のタワーズを見上げ、浜名湖を過ぎ、富士山を望んで――
「着いたぞ」
「何で品川で降りるのよ? 東京に行くんでしょ」
「ここも東京だぞ。 それに今から行く所は品川で降りた方が早いからな」
「ふ~ん」
8:56 品川着。 山手線に乗り換える。
「キョン」
「何だ? ハルヒ」
「あんたに引っ張ってもらうのも、新鮮で良いわね」
「そうか?」
「東京、来た事あるの?」
「いや。 あ、一回位あったか。 中学の修学旅行で」
「その割にはスムーズに進んでるわね」
「案内板に従って進んでるだけだぞ」
何時もの様にハルヒに引っ張られていたら、何処に連れて行かれる事やら。 まあ、それはそれで楽しみな気はするが。
9時半・渋谷着
「やっぱ都会よね」
「神戸や大阪とは、何か違うよな。 雰囲気が」
「あたしは地元の方が好きよ」
「じゃあ何で、わざわざ来たんだ?」
「気分転換よ! 偶には良いでしょ?」
やれやれ、以前みたいに暴走しないだけマシか。
ガイドブック片手に散策開始。 数多くあるブティックに目が行くのは流石、女の子と言った所か。 俺には解らないな。
しかし、どんな衣装を試着しても似合う……ってのはハルヒだから、だろうな。
こら、そこ、惚気とか言うな。 実際見てみりゃこれしか言葉が出ないって。
表参道を通り、原宿へ向かう。 かれこれ一時間強は歩いているが、二人で歩いているせいか、時間の経過が早い。 気が付けば明治神宮まで来ていた。
「お参りするわよ!!」
はいはい、っと。
こいつ、神主をエアガンで撃ったくせに、初詣したり信心深い所もあるんだよな。
代々木から中央線に揺られ、やって来ました秋葉原。 そして秋葉原に来たからには
「ここは外せないわね!!」
だからって 『メイド喫茶』 ですか? やれやれ……少し恥ずかしいのだが。
「あんたが恥ずかしがって、どうするのよ。 ほら、行くわよ!」
何々、『メイド喫茶・Crane』? 入り口に鶴のマークが描いてあるな。 ハルヒに引っ張られ入店すると
「おかえりなさいませぇ~、ご主人様」
「あ、朝比奈さん!?」
「き、キョン君・涼宮さん!」
「みくるちゃん、何やってんの? こんな所で」
「鶴屋さんに頼まれてバイトですぅ~」
古泉だけでなく朝比奈さんまでバイトですか。 帰ったら俺も何かバイトすっかな。
「キョン、何食べる?」
「俺はハンバーグ・セット。 ハルヒは?」
「あたしはビーフシチュー・セット!」
出て来た料理の味は、まあまあかな。 別に朝比奈さんが作った訳じゃ無いし、正当な評価だろ。
「いってらっしゃいませ、ご主人様!」
な~んか妙な気分だな。 よりによって朝比奈さんにその台詞を言われると
「バカキョン! 鼻の下、伸びてるわよ」
「そうか? そんな筈は無いと思うが」
「どうだか。 あんた『みくるちゃん萌え』だもんね」
「せめて『だった』にしろ。 過去だ、過去」
気にしても仕方無いだろ。 それを言うならハルヒの中学時代はどうだったんだ? と言いたいが止めておこう。
重ねて言うが、今日のデートは日帰りだ。 よって時間があまり無い、そんな訳で
「次の目的地に行くわよ!」
やれやれ。 だったら別に秋葉原に来なくても昼食なんて
「みくるちゃんに会えたから、良かったじゃない」
いや、それはそうだが。 それって結果論だし……まあ良いか。
「次は『お台場』だっけ」
はいはい、エスコートしますよ。 お嬢様。
京浜東北線で新橋へ向かい、『ゆりかもめ』に乗り換える。
「ねえ、キョン」
「何だ、ハルヒ?」
「運転手居ないけど、どうやって動くの?」
「遠隔操作だ。 地元にだって六甲ライナーやポートライナーがあるだろ。 それと同じだ」
「ふ~ん。 あ、見て見て! レインボーブリッジよ!!」
レインボーブリッジを渡ると
「あれ!? キョン、ガンダムって静岡に行ったんじゃ無かったかしら?」
「どれどれ……確かに、どう見てもガンダムだな」
「予定変更よ! 次で降りるわ!!」
やれやれ。 しかし何でガンダムが置いてあるのかね? 近づいてみると
「あ、キョン君と涼宮さんじゃない」
「何やってるんだ朝倉? こんな所で」
「ガンダムを静岡まで動かすのよ。 ちなみに操縦するのは長門さんだから♪」
な、何だって~!?
「すっごいじゃない!! キョン、あたし達もn「やめとけ」」
「え~っ、何でよ! ガンダムに乗れるなんて滅多に無いのよ!!」 いや、普通に無いから。
「しっかし有希って何でも出来るのね、もしかしてニュータイプ?」
うん、惜しい! 惜しいぞ!! しかし昔、俺が長門の事を宇宙人と言った時には信じなかったが、これを見たら信じそうだな……って、信じさせてどうするよ?
『……間もなく発進する、下がって』
お、マジで長門が乗ってるのか
「ハルヒ、下がるぞ」
『……ユキ・ナガト、ガンダム出ます』
ゴゴゴゴ――と轟音をたて、行ってしまった……あれ、ガンダムって単体で重力下、飛べたっけ?
「そんな事に突っ込んでたら、キリが無いわよ?」
「そうよキョン、あんたもロマンが無いわね!」
ハルヒと朝倉のダブル突っ込みとは珍しいな。
ビーナスフォートを散策し、メガウェブへ。
アレッサンドロ・ナニーニカフェでパニーニを食べた後、再び『ゆりかもめ』に乗り竹芝まで戻る。 そこから徒歩で浜松町・芝公園を抜けて、東京タワーへ向かう。
「今、新しいタワー、作ってるのよね」
「解体されるのか? これ」
早速チケットを買い、特別展望室へ。
二人で傾きつつある太陽を見つめながら――
「日帰りじゃ物足りないわね」
「そうだな。 それじゃあ社会人になったら……その、何だ、泊まりで……」
「……エロキョン」
こら、何で『お泊り』イコール『エロ』なんだ? 全く。
空気が澄んでいれば遠く富士山まで見えるらしいが、今日は空気が悪いせいか景色が霞んで見える。 それでも今日回った所は見渡せたので、一日を振り返る。
「また来よう」
「うん!!」
「そろそろ行かないと、帰りの新幹線に間に合わん」
「慌しいわね。 でも楽しかったから良いわ」
後ろ髪ひかれる思いで下りエレベーターに乗り込む。 次のデートは近場で良いな。 遠くに行くなら纏めて時間を取ろう。
浜松町から品川まで山手線で移動し、20時過ぎののぞみ号で新大阪へ。
夕飯の駅弁を食べた後は、歩き疲れたせいか俺もハルヒも夢の中へ……
列車は見慣れた景色へと俺達を運んでくれる。
<Day Tripper> ~Fin~
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