丘を越えて~高遠響と申します~

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早乙女太一 特別公演 を観た! ~新歌舞伎座 新開場記念~

2011年02月12日 | レビュウ
 大阪は上本町に出来ました新歌舞伎座での公演です。早乙女太一ですよ、早乙女太一! あの強烈に美しい、早乙女太一!! 友達からチケットを回してもらえることになり二つ返事でありがた~く買わせていただきました。生・太一~♪

 第一部は「狐笛(こてき)のかなた~ふたつの魂」という芝居、第二部は早乙女太一舞踊ショー「残雪の花」となっておりました。
 第一部の芝居は、上橋菜穂子さんという児童文学の世界ではかなり有名な方の原作でして、最近うちのチビ子がハマっている「精霊の護り人」というシリーズを書いていらっしゃる。上橋さんはエスニック・ファンタジーとでも言いましょうか、アジアンテイストのファンタジーを得意とする作家さんです。で、この芝居も時代劇風(でも時代も国も架空)の設定です。


<あらすじ>春奈の国に住む小夜(阿部なつみ)は人や動物の心を聞くことができる力を持っている。ある日、小夜は野犬の群れに追いかけられ傷ついた子狐と出会う。子狐を助けようとするが、自分もまた野犬達に追い詰められ窮地に陥る。その時助けてくれたのが春名の国の第二皇子、小春丸であった。小春丸は訳ありで、森の中の屋敷に長年幽閉されて育っている少年だった。このつかの間の出会いが物語の始まりとなる。
 数年が経ち、子狐は野火という美しい青年(化身なんだけどね)に成長していた。野火は狐の化身であったが、久那(大浦龍宇一)という湯来の国の術師の呪いに縛られていた。心ならずも隣国春名の国に小姓として潜入し、湯来の国のために働いていた。そんな中、野火は小夜と運命的な再会を果たす。
 春名の国の跡継ぎが亡くなり、長く幽閉されていた小春丸が春名の国を継ぐ事になる。動揺する小春丸につけこんだ久那は小春丸に呪いをかけ、春名の国の滅亡を企てる。その計画を知った小夜は春名の国の術師・大朗(太川陽介)と共に春名の国を守ろうと決意する。野火は敵の身ではありながら、小夜を護るために術師を裏切り、仲間から命を狙われる事になってしまう……。過酷な運命の中、小夜と野火の想いはやがて健気な愛と変わっていく。
 はたして野火と小夜は、小春丸を護り、春名の国を救えるのか~? 二人の愛に明日はあるのか~??

ってな話です(笑)。上橋さんの本を読んだことのある人は、結構にやりと笑えるような設定のお話です。

 二部は舞踏ショーでして、これもまたセリフはないものの、過酷な運命に翻弄される男女の出会いと別れ、そしてまたしても時空を超えて再び出会い、また別れていく……というような筋立てでした。舞踏ショーは早乙女太一の本領発揮とでもいいましょうか、あの美しすぎる女形姿で、華麗な踊りを披露してくれます。

 さてさて、ここからがレビュウ~でございますよ~。前置きが長いって(笑)。

 まずは一言。早乙女太一は逸材です。それは間違いない。放っているオーラが違います。それも金色のオーラではなく、なんていうんでしょうか、蒼いような白いような、ちょっと浮世離れした空気を身にまとっています。彼には「肉」を感じません。バレエで言うなら、精霊になった後のジゼル? 肉欲をそぎ落として魂だけを形にしてみたらこんな感じになりました……みたいな。その印象は女形の時が特に強いです。ただ、生臭さが全く無くてあまりにも綺麗すぎるものだから、情念を感じないというか、どろどろした色気がないというか。例えば梅沢富美男さんのような「匂い立つような、ちょっと発酵してそうな(笑)女の色香」ではなく、博多人形のような清楚な美しさとでもいいましょうか。恋のために死ぬようなタイプにはちょっと見えない……。まあ、彼自身まだうんと若いですからね。渡辺淳一ワールドみたいなジュクジュクの色香が出る方が不自然ですわ(笑)。
 なんにせよ、彼の持つ精霊が放つような霊気は出そうと思って出るものでも、マネして出るものでもないでしょう。

 では、芝居の中ではどうか。これがまた、不思議な魅力がにじみ出ていました。物憂げな、けだるいような立ち姿。男を全く感じさせない少年の声(アニメの声優も出来そう。もちろん少年)。ことさら張っているでもないけれど、妙に耳に馴染むんですよ、これがまた。……ピンマイクついてたからかも知れないけど。ほんでまたこれが、手が綺麗なんだ、手が! 腕も長いが、指先の優雅な事。ちょっと勘弁してくれよ……と思うくらいに指の関節が綺麗(笑)。剣の柄を持つ手がなんと美しいことか。なにげな~く、ゆったりと座りこむ動作だけでもつい目がいっちゃう。なんだ、この吸引力?
 かと思うと、びっくりするくらいに身のこなしが軽い。立ち回りの時に足音が気にならない。息遣いも気にならない。立ち回りという舞踊です。私の好みの問題かもしれませんが、女形の踊りよりも剣舞とか立ち回りの方が彼の本来の魅力が出るんじゃないですかね。
 早乙女太一は中性です。男でもない、女でもない、オカマでもない。中性という性別。彼の官能的なまでの美しさは女形よりも、中性である瞬間の方がより強くにじみ出ているのではないしょうか。彼に宦官の役が回ってくるというのも納得です。
 ちなみに野火が術師・久那に折檻されていたぶられている時のなんと色っぽいこと! 久那に踏みにじられて悶える姿に、あたしゃ悶えました(爆)。は?! これはもしかして、変態チックな発言?! ええ、どうせ私はSですよ(笑)。

 という訳で、早乙女太一という非凡かつ稀有な存在については充分納得いたしました。が、全体の満足度は……すんません、七割くらいでしょうか。

 特に二部に期待していたのですが、これがね~、ちょっとね~。全体的に散漫な、もしくは統一感のない印象がぬぐえませんでした。舞台全体が時代劇で作られているのに、音楽があまりにも騒々しい。エレキの音がガンガン入って、ボーカルがまたやかましい。音楽だけを取ってみたらそうでもないかもしれません。でも、舞台に合わない。
 早乙女太一の踊りは先ほども述べましたが、情欲のあまり感じない、激しい感情の表出のない踊りなのに、歌がめちゃめちゃストレートに歌いまくってる。繊細さも抑制も秘め事もあったもんじゃない。普通にポップスの音楽としてはいいかもしれないけれど、もう少ししっとり感が欲しかったですな。なんで演歌じゃなかったんだ? 演歌が重いなら、せめて歌謡曲でしょ。早乙女太一の繊細な美しさをぶちこわしてたと言っても過言じゃないと思いますよ。
 そして、出演者が多すぎて、舞台のどこを観たらいいのかわからない。主要な役どころの人が同時に舞台と花道とに立ったりすると、「なんだなんだ? 何が起きたんだ?」っておろおろしちゃう。……座ってた場所がかなり端だったから舞台の全景が見えなかったせいもあるんでしょうけどね。
 芝居は多分好みです。私は嫌いではなかったけど、一緒に行った母には「お子様向け?」といった感じだったようです。隣の席のおばちゃんもこっくりこっくりしてたし。歌舞伎座という場所にくる人は年齢層が高いですからねぇ。それを考えると、題材としてはどうだったんだろう。これがブラバとか梅芸での公演なら全く問題なかったんだろうけどね。

 ああ、今日も長くなっちゃった(笑)。


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2 コメント

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お芝居 (はなこ)
2011-03-07 09:27:43
行かれたのですね~
うちの義父母が行って来たそうで、パンフを見せてもらいました。
なんか、やかましかった。。。とは言ってました。
彼、ちびっこのころから、されてて、すっかり大人になられましたね~
Unknown (ちえぞー)
2011-03-07 15:38:43
>はなこさま
毎度おおきに。いらっしゃいませ。

そうですね~、早乙女太一ファンはともかく、普通の演劇ファンにとっては少々厳しいものがあるかもしれません。

それも差し引いて、早乙女太一は美しい
それは間違いないです。
これからもっと大人になって、
もっともっと美しさの中にエグ美(造語ですw)が出てきたら楽しいですね~~~~~

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