ひまわりてんびんへの道

会社は変われど、一貫して企業法務に携わってきました。思いつくまま、気の向くまま、気長に書き続けます。

ガンダムのおまけは、景表法違反

2005年10月26日 | 法律一般
ペプシのおまけのガンダムが、景表法に違反し、サントリー株式会社に対して、公取委が注意したという。

清涼飲料水「ペプシツイスト」などのおまけをめぐり、同飲料水を製造・販売しているサントリー(大阪市)が公正取引委員会から、景品表示法違反の疑いがあると注意を受けていたことが、25日わかった。

 中が見えない袋に入った人気アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクター模型は、消費者の射幸心をあおる「懸賞品」に当たると判断された。

 サントリーは2003年9月から、32種類の「ガンダム」の模型のうちいずれか1種類を袋入りのおまけにして、「ペプシツイスト」ボトル缶などの販売を始めた。おまけは全商品についていれば、通常は「景品」とされるが、ペプシの場合、いくら商品を買っても全種類を集め切れるかどうかは運に左右されるため、公取委は「懸賞品」と認定。懸賞品の価格は商品価格の2%以下でなければならないが、今回はこの制限を超えていたという。

 公取委は9月末、サントリーに注意を出すとともに、全国清涼飲料工業会にも、同じような販売手法を取らないよう要請した。サントリーは審査中だった同月上旬に、袋を透明なものに変更した。

(2005年10月26日3時2分 読売新聞)

ここで、適用されているのは、普段なじみのない「不当景品類および不当表示防止法」(いわゆる、景表法)という法律。

その立法趣旨は、消費者の商品や役務の購入に当たって、賞品や役務そのものの内容や性質ではなく、これらに付随する経済上の利益によって、消費者の選択が惑わされることのないよう消費者を保護することにある。
その概要は、公正取引委員会の景品表示法トップページを参照されたい。

そもそも、「景品」とは、顧客誘引の手段として、取引に付随して提供される経済上の利益をいう。今回のガンダムのおまけは、まさにこれに、当たるというわけ。

そして、景品は、その提供方法によって、景品の最高額や景品の総額の規制を受けることになる。

今回の提供方法は、ペプシを買えば、すべてについてくる、もれなく付いてくるので、一見、「総付け景品」のようだが、実は、景品の価額等に差があって、本件の方法のような、外からは何が入っているのかわからないような方法での提供は、「懸賞」に当たることになるのだ。(以下、(4)参照)
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について

1 告示第一項第一号の「くじその他偶然性を利用して定める方法」についてこれを例示すると、次のとおりである。
(1)抽せん券を用いる方法
(2)レシート、商品の容器包装等を抽せん券として用いる方法
(3)商品のうち、一部のものにのみ景品類を添付し、購入の際には相手方がいずれに添付されているかを判別できないようにしておく方法
(4)すべての商品に景品類を添付するが、その価額に差等があり、購入の際には相手方がその価額を判別できないようにしておく方法
(5)いわゆる宝探し、じゃんけん等による方法

「懸賞」に当たるとなると、景品の最高額は、取引価額の20倍か10万円のいずれか低い額まで、そして、当選者がもらえる景品の最高額は、その景品を提供するキャンペーンで見込まれる予定売上総額の2%以内までとなる。

そして、今回の事例に当てはめると、ペプシのボトルの値段は、147円であり、懸賞となると、その20倍までの2,940円までの景品の提供が可能となる。
そして、今回のガンダムの景品の価額は、この中に納まっており、最高額では問題はないが、上記の最高額の2%規制で問題となった模様だ。つまり、ペプシが何本売れようが1本に1個必ずついてくるわけだから、景品の価額は147円の2%、約3円を超えることは、どう考えても確実なので最高額の規制に違反するとされたのだろう。
新聞記事には、「射幸心を煽る」ことが懸賞に当たるともとれる書きぶりだが、そうではないことに注意しなければならない。

そして、ここで問題となるのは、このような形で景品を提供するに当たっては、提供者側としては、どの種類の景品も同様の確率で消費者が手に入れられるように計算して景品をパッキングしているということだ。一部の種類の数を少なくして提供しているわけではない。ましてや、景品の価額に差を設けているわけでもない。
プレミアムかどうかは、消費者の主観に過ぎないとも言える。
確かに、どの景品があたるかは運に左右されるが、メーカーに射幸心を煽る意図はまったくない。

経験則上、景品の最高額の規制で、公取委が景表法違反を適用して注意したのはまれなことだが、今回の場合、上記のようにもれなく提供なので確実に最高額規制に触れるからだろう。そして、あまりにも大々的に実施してきたからかもしれない。
景表法違反の端緒は、消費者からというよりも、消費者を騙った同業他社からの告発が多いのだ。

寂しいことだが、今後、同様のキャンペーンは、、「総付け景品」としてすべて中身が見える形で提供されることになるだろう。

消費者にとっては、何が当たるか分からないという楽しみと引き換えに、ねらった景品は、商品がなくならない限り手に入れられることができる、ということになるのだ。

でも、景品の最高額に規制があるなんて、どれだけの人が知っているのだろう?

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