明治・大正・昭和初期の古い写真を見て、その時代に生きていたわけでもないし、その風景を見たこともないのに、何故か懐かしいと感じてしまうことがある。体の中を流れている祖先の血がそう感じさせるのだろうか。
熊本市の動植物園はその一部分が江津湖に面している。園内に入らなくても岸辺に沿って設けられている遊歩道から、ゾウとキリンを見ることが出来る。動物園の動物たちはそのほとんどがどこかの動物園で生まれたもので、自分たちの仲間たちが実際に生きている場所を知らない。大きなスクリーンに広大なアフリカの大地で暮らす自分の仲間たちの姿を映し出したら、ゾウやキリンはどんな反応を示すのだろうか。
キリンは優しいがどこか淋し気な目をしているように、望郷の念を抱いているように、私にはそう見える。