二人はバスに乗り帰途についた。乗客はまばらだった。
二人は右と左に分かれて座った。チョルスは外を眺め、バスに揺られていた。
見るとアンナは窓にもたれぐっすり寝入っている。
チョルスにはその姿が微笑ましかった。
「よく寝てるなあ・・・」
そのままにしておこうと思ったがふと気が変わった。窓に頭をぶつけたりするとけっこう痛い。
窓との間にぬいぐるみを入れてやろう。
チョルスはアンナの隣に席を取った。アンナの膝にあるぬいぐるみを手にした。アンナの頭と窓の隙間をつくろうとしたら、アンナの顔はつるんとチョルスの肩にもたれかかってきた。チョルスは戸惑った。胸がときときした。
窓とアンナの間にぬいぐるみをさしこんで楽にしてあげたものの、チョルスは複雑な気分を抱え込んでいた。
その夜、チョルスはなかなか寝付けなかった。何度も寝返りをうち、正面に天井を見た。
「あいつは自分が名をつけたサンシルじゃない。いつかは戻る場所に戻っていくやつなんだ。それを忘れたらダメだ・・・」
チョルスは大きくため息をついた。
子供たちが学校へ行くために二階から降りてきた。アンナに礼儀よく挨拶した。
「行ってきま~す」
「ええ、行ってらっしゃい」
子供たちは笑顔を返し、元気に出かけて行った。
子供たちに続いてチョルスも部屋から出てきた。顔も見ないでアンナに声をかけた。
「行ってくるよ」
行こうとするチョルスをアンナは呼び止める。
「何だ?」
「・・・」
「退屈な時は電話しろよ」
アンナはそそくさ行こうとするチョルスにもう一度声をかける。
チョルスは足を止め、振り返った。
「何だよ」
「ありがとう」
チョルスは照れ笑いを残し、玄関に向かった。
ドアを閉じてチョルスが出ていくとアンナは次の言葉を続けた。
「元気でね」
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