雨の記号(rain symbol)

キムヨナの(Just A Girl & Reflection)

 English Version
한국어
キムヨナの演技はわかりやすい。やわらかな線を描いていって女性特有の世界を僕らの前にあますところなく演じて見せてくれる。見ていて楽しい。子供の頃から一人の男の子として見てきた、あるいは感じてきた麗しい女性像である。お母さんとは違って近寄りがたいがじっといつまでも眺めていたい憧れのお姉さん・・・。
 年を取って還暦にいたっても、男子の中には女性に対するそういった思いが永遠のものとしてある。
 EX (ONLY HOPE)を見た時、この娘のつむぎだす世界はほんとにきれいだと思った。若い娘の夢や祈りや心のときめきが手に取るように表現されている。まだ若いのにほとんど完成形に近い世界がそこにあると感じる。
 しかし、僕が驚かされ興味を惹かれたのは、これより少し以前のEX、(Just A Girl & Reflection)の方である。これはプログラムとしても演技としても評判はすこぶる悪かったようである。僕の評価はまるで違う。フィギュアスケーターとして彼女が新たな境地を踏み出すきっかけとなったのはこの演技でなかったかと僕は思う。2007ワールドカップEX等で演じられ、その後、お披露目期間が短かったところを見ると、彼女サイドが思っていた以上の悪評だったのであろう。しかし、そういったところから学ぶものは得てして多い。
 実際(ONLY HOPE)で結実した。
 男の子がほんとの意味で憧れる女性は、きれいに着飾り、品よくそつなく振舞う人なんかではない。何も飾らずに素をさらし、いい匂いをさせる髪の清潔な人だ。で、怒っても笑ってもくったくがない。心はひたすら明日に向かって躍動している。
 若い娘の心が透き通ったように浮かび出てくる世界である。彼女が(Just A Girl & Reflection)によって新たな境地を得たからこそたどり着けた世界ではあるまいか。
 どこにでもいる等身大の女性を演劇的イメージの強く残るステージに持ち込んだところにそのプログラムの価値はあった。単に路上のパフォーマンスを氷上に持ってきただけのようであるが、まさにこれが真のエンターテインメントではないか。誰にでも表現できそうな世界だが、氷上に移ったとたん、これは彼女しかできない、湧出できなかった世界、となっているのを忘れてはいけない。
 評価は惨憺たるものだったかもしれないが、彼女はそれまでの辛さや重圧から一気に解放されたのではないか。すなわち、来る日も来る日も練習に明け暮れ、それ以外の世界に身を放ったことのなかった彼女が、氷上においてやっとそんな少女の姿を素朴に表現してやれたのである。彼女は氷上において別の自分を演じる力を得たのだ。

 (Just A Girl & Reflection)は僕の一等好きな演目である。彼女もそうなのではないかとひそかに思っている。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「キムヨナ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事