平方録

ニンゲンは考える脚である

医者から止められていた自転車にGOサインだ出た。

一昨年の秋から乗っていないので1年数か月ぶりと言うことになり、大いに結構なことなのだが、今一つ心底喜べないのはこの時期が1年で最も気温が下がる寒さの底に当たる時期であり、乗るにはそれなりの防寒と覚悟が必要だという点である。
短パンにポロシャツ程度の軽装でさわやかに風を切って走るのが気持ち良いのであって、防寒具に身を包んで乗るというのはボクの主義ではない。
ただ風もなく、日中の気温が12~3度以上になるような日でもあれば短パンの下にタイツでも履いてポロシャツの上に少し厚めのウインドブレーカーでも羽織れば漕いでこれるだろう。

何れにしたって春分の日が過ぎればもっと気軽に乗れるようになるはずで、ここまで我慢したのだからあと2か月くらい待つのはどおってことはないのだ。慌てる必要は全くない。
この日を予想しないわけではなかったので、つい4、5日前に玄関の片隅に置いてある自転車のタイヤの空気をいったん抜いて再びパンパンにしたのだ。
ブレーキレバーも引いてみた。やや軋みがあったのは仕方ないことで、これから暖かい日を見つけながらギアの様子なども含めて整備し、汚れも奇麗に拭き取るなどしてピッカピカにしようと思う。
まずはその手数を楽しもうと思うのだ。

わが肉体面でいえば足の筋肉の衰えは触ってみれば分かることで、これまで内心では忸怩たる思いを募らせていたので、ようやくその憂さを晴らせる時がやってくる。
年齢を考えると完全復活があるのかどうか、その辺りは少し心配だが、人というのは案外しぶといものだという印象は来し方抱いてきているので、その点も注目である。
こうした復活を妨げる要因というものは、えてして自分自身の心の中に存在するのであって、何のことはない、自分で気づかないところで自分自身にブレーキをかけるということがしばしば起きるものなのだ。
その辺りを注意しさえすれば、一定の時間が過ぎれば元の筋肉を取り戻せるに違いない。

一方で自転車に乗ることで来し方、精神や肉体の健康を維持してきたのだという自覚を持っているボクにとって、その考えが少し的外れなのだという言説を最近目の当たりにしたことで、ちょっとばかり思うところが出てきたんである。
つまり、これからの健康維持に於いて、再び自転車を中心に据えてやっていこうという従来の考え片にもろ手を挙げて賛同できる気分ではなくなったのだ。
NHKスペシャルが放映した「人体」シリーズの「骨」という番組内容が原因である。

単なるカルシウムの塊でヒトの体を支えるのが役割だと考えられてきた骨が、実はほかにもとても重要な役割を担っているということが分かったというのだ。
何と「若さ」を司っているのだという。「記憶力」「筋力」「免疫力」、そして「精力」を維持・強化する物質を必要に応じて作り出しているのが骨なのだそうである。
逆に言うと骨がそれらの物質を出さなくなる時、つまり「老化」のスイッチを押すのは骨である、という見方ができるのだという。

骨に老化のスイッチを押させないようにするためには、骨に衝撃を与え続けることが必要で、例えばジャンプを繰り返すことでそれは実現できるというのだ。
そこでモデル例の一つとして示されたのがアメリカの自転車競技の選手で、7歳から本格的に自転車のトレーニングを始め、一流選手の仲間入りをしていたが骨がスカスカになっていることが判明して30代早々に競技生活を断念させられたばかりか、このままでは命にもかかわるということで、今やジョギングで骨に衝撃を与えつつ体力の回復を図る日々だというのだ。
そういう新しい知見というものをデータも交えて示されると、なるほどと思わざるを得ないのである。

案内役でiPS細胞の山中伸弥教授は「自転車には心肺機能を鍛えるなどの効能はあるけれど、身体全体のためにはジョギングの方が好ましい」とはっきり言っているのだ。
と言うことで、ボクも「老化」のスイッチを押させないために1時間程度のジョギングをし、一方で自転車に乗るのは来し方やってきたように精神の解放のため、というような使い分けをするのが良いのかなと思い始めているところなのだ。

ニンゲンは考える脚――なのである。



富士三景





真ん中の写真はそれほどでもないが、今冬の富士山はなぜか雪の部分が真っ白に見えず、したがって写真でもくすんで写るのだ

コメント一覧

平方録
ニンゲンは考える脚である
高麗の犬さま

富士山の見え方について同じ思いを抱かれている方がいらしてホッとしました。
高麗の犬
同感
年末、年始の高尾山から見た富士の頂上も同様でありました。単純に雪降ってないんじゃないか?
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