最新のR&Bチャートをご紹介

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速藤年正 Toshimasa Hayato

デペッシュ・モードの「It's No Good」

2005年04月25日 14時00分31秒 | 全米チャート
depeche_mode

今回は、1980年に結成されたイギリスの4人組エレクトロポップグループ、デペッシュ・モードの「It's No Good」を、Club 69のリミックスバージョンで紹介しましょう。

2004年11月10日、デペッシュ・モードのリミックスアルバム『Remixes 81…04』が国内盤で発売されました。その名のとおり、デペッシュ・モード活動当初のヒット曲から最新のナンバーまでを一挙にリミックスバージョンで収めたアルバムです(ノンストップアルバムではありません)。初回限定盤は3枚組CDという特別仕様で(通常盤は2枚組CD)、ここに紹介する「It's No Good (Club 69 Future Mix)」は、3枚目のボーナスCDの6曲目に収録されているナンバーです。

このアルバムの発売情報を知ったと同時に、まずは37曲にも及ぶ収録曲リストを隅から隅まで穴が開くほど見回しました。もちろん「It's No Good」のClub 69バージョンが入ってるかどうかを確認するためです。

デペッシュ・モード「It's No Good」のオリジナルバージョンは、1997年のアルバム『Ultra』からの2ndシングルとして全米でカットされシングルチャート38位をマーク。ダンスリミックスに関しては全部で3バージョン入りのアメリカ盤12inchが発売され、1997年6月21日付全米ダンスチャートでナンバーワンを獲得しています。

当時のアメリカ盤12inch(Mute/Reprise 43845)には

A-1. IT'S NO GOOD Hardfloor Mix
A-2. IT'S NO GOOD Bass Bounce Mix
B-1. IT'S NO GOOD Speedy J Mix
B-2. SLOWBLOW Darren Price Mix (←別の曲のリミックス)

…が収録されていました。

ちなみにイギリス盤12inch(Mute/12 Bong 26)には、

A-1. IT'S NO GOOD Hardfloor Mix
A-2. IT'S NO GOOD Speedy J Mix
B-1. IT'S NO GOOD Motor Bass Mix
B-2. IT'S NO GOOD Andrea parker Mix
B-3. IT'S NO GOOD Dom T Mix

…の5バージョンを収録。

ダンスチャート自体は全米のクラブやディスコのプレイリストの集計みたいなもので、一番かかっている曲が必然的に上位にランキングされるシステムになってます。

ところがこの「It's No Good」に関しては、全米のDJがかけているのはアメリカ盤12inchでもイギリス盤12inchでもなく、プロモーション盤オンリーでDJに配られていた「It's No Good」の「Club 69 Future Mix」だということが判明。

ご存知のとおり、市販されてないものを買うのはどこの世界でも至難のワザでして、全世界のDJ陣は、必死になって「It's No Good (Club 69 Future Mix)」の12inchを探し回りました。
リミックスを担当するClub 69(Peter Rauhofer)については後述しますが、とにかく売れっ子リミキサーで、ハードでカッコいいリミックスを作る天才だと思っていただければ間違いありません。

今となってはリリースから8年が経過してますので「It's No Good (Club 69 Future Mix)」自体の貴重さは薄れてきたものの、それでもネット上ではこんな値段で取引されています。(※アメリカ盤12inchが95ポンド=19,048円で売られている)

送料込みで約2万円というのは、どーなのかとも思いますよね。でも、なかなかネットにも出てこないアイテムなので、売ってるだけマシといった感じでしょうか。

この「It's No Good (Club 69 Future Mix)」のナンバーワンヒットに続き、2001年のアルバム『Exciter』からは、「Dream On」(2001年6月9日付全米ダンスチャート1位)、「I Feel Loved」(2001年9月8日付全米ダンスチャート1位)、「Freelove」(2002年2月2日付全米ダンスチャート1位)の3曲がダンスナンバーワンをマーク。トータル4曲が連続で首位を獲得するという快挙を成し遂げています。
ちなみにリミックスアルバム『Remixes 81…04』からも「Enjoy The Silence (Remixes)」がカットされましたが、こちらは全米ダンスチャート25位(2004年12月4日付)と、残念ながらトップを獲得することはできませんでした。

Club 69のディープで力強いダンスビートにデイヴ・ガーンのクールなヴォーカルがマッチして、まさに大容量のメインフロアーでかけるには最高の重低音サウンドが繰り広げられる「It's No Good (Club 69 Future Mix)」。ポップだったりキャッチーだったりするワケじゃなく、かなりマニア向けのクラブ系ミックスなので個人的評価は☆☆☆★★(三つ星)とやや辛口ですが、時価2万円相当のリミックスがわずか229円でダウンロードできてしまう文明の進化には脱帽です。

■デペッシュ・モード■
1976年、ヴィンス・クラークとアンドリュー・フレッチャーの二人がイギリスのバジルドンでノー・ロマンス・イン・チャイナを結成。グループは短命に終わり、ヴィンス・クラークは新たにマーティン・ゴアと二人でフレンチ・ルックを創設。そこにアンドリュー・フレッチャーが再加入し、グループ名をコンポジション・オブ・サウンドに変更する。1980年にヴォーカルのデイヴ・ガーンが加わってデペッシュ・モードと改名。オルタナティヴなシンセサイザーサウンドがロンドンのクラブシーンで人気となり、ミュートレコーズからメジャーデビューを飾る。1stアルバム『Speak & Spell』(1981年)発売後にグループのソングライター、ヴィンス・クラークが脱退し、アリソン・モイエと組んでヤズーの活動をスタート(後にアリソン・モイエはソロに転向、ヴィンス・クラークはイレイジャーを作る)。新ソングライターのアラン・ワイルダーを迎えたデペッシュ・モードは「People Are People」(1984年イギリスチャート4位、1985年全米チャート13位)、「Enjoy The Silence」(1990年イギリスチャート6位、1990年全米チャート8位)などがアメリカでもヒットを記録。時代がオルタナティヴ志向を目指す1990年代に入ると、彼らの人気はますます加速し、1993年のアルバム『Songs Of Faith And Devotion』は全米アルバムチャート初登場ナンバーワンを樹立。1995年のアラン・ワイルダー脱退やデイヴ・ガーンの麻薬中毒・自殺未遂を乗り越え、グループは3人体制でアルバム『Ultra』(1997年)を発表する。オリジナルアルバムとしては2001年の『Exciter』が最新作。


■Club 69■
本名Peter Rauhofer(ピター・ラウホファーと読む人もいれば、ピーター・ローファーと読む人もいて、どれが正確なのかは不明)。オーストリアのウィーンで生まれ育ち、輸入レコードショップで働きながらウィーンのクラブでアンダーグラウンド系のDJを始め、同時にオーストリアのGIGレコーズのディレクターとしても活躍。後に「Rock Me Amadeus」(1986年全米チャート1位)のヒットを放つファルコも担当アーティストの一人だった。1992年、ピター・ラウホファーはClub 69名義でセルフプロデュースによる自らのシングル「Let Me Be Your Underwear」(1993年全米ダンスチャート18位)をリリース。このヒットによって世界各国でのDJ依頼やリミックスのオファーが飛び込むようになる。レコードショップの経営、クラブDJ、レコード会社のディレクター、ダンスのリミックス&プロデュースなどなど、幅広い活動を続けることが物理的に不可能になり、レコーディングとDJのキャリアに特化するため1995年ニューヨークに転居。音楽の中心ニューヨークでは、Tribal America、Twistedとレーベルを移り、最終的に独自レーベルのStar 69を設立。70枚以上の作品を送り出すとともに、リミキサーとしても、マドンナ「Nothing Really Matters」(1999年3月13日付全米ダンスチャート1位)、ユーリズミックス「17 Again」(1999年12月25日付全米ダンスチャート1位)、クリスティーナ・アギラレ「Beautiful」(2003年4月19日付全米ダンスチャート1位)、ブリトニー・スピアーズ&マドンナ「Me Against The Music」(2003年12月27日付全米ダンスチャート1位)をはじめ、ポップフィールドとオルタナティヴなアンダーグラウンド系のクラブサウンドを融合させた膨大なナンバーワンリミックスを手がける。ちなみにリミックスワークは故郷のウィーンで行っているとのこと。第42回(2000年開催)グラミー賞最優秀リミキサー賞受賞。


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