Gravity Blue fin

海へ

これまで、あなたに黙っていたこと、本当に申し訳なく思っています。
そして、この世を恨むほどの苦しい思いをしても、
今、こうしてこの手紙を読んでくれていることに、心から感謝をしています。
　
一刻も早く、あなたに伝えねばならないことが、もう一つだけあるので、
この手紙を空君に託しました。

それはまさに、あなたと空君のこと。
あなたと空君の間には、血の繋がりはないということです。

彼にも、たった今、話しをしたところです。

空君は、生まれて間もない頃に、一通の手紙と共に牧師さんに預けられました。
そして、そのことを知った私の弟、つまりあなたの本当の父親が、
自分の子供として育てさせてほしいと牧師さんにお願いをしたのです。

空君に、このことを話すのはとても辛いことでした。
しかし、今は、この現実が、二人にとってどれほどの救いをもたらしてくれるものだろうと、
あなたの父親として、例えようのない感覚でいます。
きっと、今、あなたの横にいる彼の表情は、濃密な短時間でこの現実を受け入れ、
そしてそれを一足飛びに乗り越えたような柔和なものなのではないかと、
勝手な想像をしています。

あなたたちには、何にも怯える必要のない明日が待っています。
目に見えるものは、これまで通りの世界です。
手に触れるものも、これまで通りの世界です。

どうか、これからも幸せな道を歩んでいってください。
私も、お母さんも、泉も、皆、あなたの幸せを願っています。

そして、あなたの家族は、いつでもここにいます。

いつまでも愛しています。

父より