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by hamarie_february

LULUCF活動って(追記あり)

2009-02-14 01:37:37 | 学問・社会

先週の土曜日(2月7日)に、久しぶりに「IPCC報告書を根掘り葉掘り読む会」に参加してきました。ただしメンバーによる発表ではなく、専門家によるレクチャー。森林の二酸化炭素吸収量はどのように算出されているのかをレクチャーしていただきました。

 

内容としては、

京都議定書3条3および4の下でのLULUCF活動の補足情報に関する報告書(PDFファイル)

この62ページほどもある報告書をざっくりとご紹介いただきました。

以下は、その後の自主学習を含めたまとめ。

 

京都議定書3条4に規定される活動とは、人為的吸収源活動。正しくは、「吸収源による吸収量の変化に関連する追加的人為活動」と言います。頭文字をとってLULUCF活動。具体的には、「土地利用、土地利用変化および林業」のことです。

 

これがどのように大事で、かつ注目されているのかというと...。

温室効果ガスインベントリの項目で、他の各分野(エネルギー、工業プロセス、溶剤およびその他製品の使用、農業、廃棄物)は、温室効果ガスをなるべく排出しないように「削減努力」をするわけですが、このLULUCF分野のみが「吸収努力」ができるところだからです。

さらに言えば、京都議定書で日本は、温室効果ガスを1990年比で6%削減することを約束していますが、その6割以上にあたる1300万炭素トンは、森林の二酸化炭素吸収により達成する計画となっているからです。

 

IPCC第四次評価報告書によると、地球の炭素バランス(2000~2005年の推定値)は、排出が年間72億炭素トン、うち海洋が22億炭素トンを吸収し、陸域生態系が26億炭素トン吸収の17億炭素トン排出で、プラスマイナスで9億炭素トンの吸収です(残りの41億炭素トンが年々大気に溜まっています)。

つまり吸収源としては海洋のほうが多いのですが、「人為的吸収活動」となると、海は難しい、というか無理ですよね。

そんなわけでLULUCF活動は、日本は、森林経営(Forest Management=FM)と植生回復(Revegetation=RV)を選択しているそうですが(IPCCが作成したグッドプラクティスガイダンスのなかから各国ごとに選ぶことができる)、その選択の理由は、日本国土は狭くて、すでに国土の70%が森林なので、新規植林・再植林をする面積はない。すでにある森林をマネジメントするFM率アップで頑張ろうってことみたいです。

ふむ。たしかに日本は狭いからね....

 

と、一瞬納得しそうなのですが。

本当にFM率を高めたら二酸化炭素の吸収量が高まるのかしら?...など、いつもの悪いクセで「そもそも的疑問」が噴出したレクチャーでございました(爆)

 

というのは、「森林を管理(間伐)すればCO2吸収量は増えるのです!」といった力強い説明がなかったからですが、何故だったのかな。どうも科学的な明言を避けているというより、「その辺は考えてないよ」風なカンジで...。まぁIPCCのグッドプラクティスガイダンスに則って選択されているのですから、そこにツッコミが入るとは思っていなかったのかも。

林野庁のこちらのQ&A(独)森林総合研究所のこの調査結果(PDFファイル)、あるいは森林林業学習館ように、きっちりきっぱり答えてくれれば良いじゃん..

そんな消化不良が残ったまま、一昨晩のNHKニュースを見ていましたら、政府がようやく「温室効果ガスの新たな削減目標」の検討に入ったと伝えておりました。検討されるのは、西暦2020年までの中期目標で、四つの選択肢(シナリオ?)が示されたそうです。

この中期目標、先進国で出してないのは日本とロシアだけになっているんですよね、たしか...

 

効果ガス 中期目標に四選択肢@NHKニュース

選択肢は、

▽今と同じ程度の削減努力を続けた場合、1990年より6%程度増加。

▽アメリカやEU・ヨーロッパ連合と同じ程度のコストをかけて取り組んだ場合、最大で2%程度の削減。

▽電気自動車など将来開発される省エネ製品を企業や家庭に最大限普及させた場合、4%程度の削減。

▽科学者で作る国連の専門機関・IPCCが温暖化の影響を一定の範囲に抑えるため先進各国に求めている水準を満たす場合25%の削減

 

う~ん。この4案の作られ方ってどうでしょうか。かなり結論ありきなカンジ。現実的な案として2%か4%だねって落ち着くのがミエミエです。こんなこと決めるのに、有識者がわざわざ集まっての会議が必要でしょうか。無駄な会議はおやめください。

しかし、何故2%や4%なんでしょう。そうじゃなかったら、その次は25%の削減だ、なんて無理すぎますでしょ?(6%増加はありえないし)。

それに、2008年~2012年の第一約束期間で、基準年(1990年)よりも6%削減しなくちゃなりませんけど、これを踏まえて、さらに2%か4%ってことでしょうか?

排出などでギリギリの努力をしている一般市民は、こうなりゃLULUCF活動で吸収努力に精を出したいと思うんですけど、街の緑化活動とかは含まれないんですよね、これ。

地主で山林を持っているのでもない限り、一般市民としてやれることって、まぁたぶん無いんですよね。

削減目標(-6%)を達成できなかったら@森林林業学習館

ふ~む。達成できなかったらタイヘンなので、財政面での森林吸収源対策の推進が必要!だそうで。つまり必要なのは補助金なんでしょうな。

なんだかなぁ。

【追記】「街の緑化活動が含まれない」というのは微妙に違うかもしれません。つまり、LULUCF活動として、森林経営とともに選択された植生回復というのは都市圏の緑化事業に関わる話だし。まぁでも、デベロッパー的ネタですね。「活動」ではない。一般市民としてはどうも手が届かないカンジは否めません。

都市緑化分野における地球温暖化対策について@国土交通省(PDFファイル)

 


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